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資本主義の終焉と歴史の危機:水野和夫

2014-08-30 22:06:56 | 書評
ゼロ金利についてはずっと考えている。

アメリカでは、連銀の量的緩和の手仕舞と利上げがずっと注目されている。一月程前、CNBC で50歳位のゲスト金融アナリストが、働き出してから金利が上昇した経験がないので、金利が上がる事が想像出来ないと自嘲気味なコメントが強く印象的に残った。彼のキャリアは。1981年以来下がり続けている期間にすっぽり嵌まっているのだ。

日本で本屋にふらっと立ち寄った時に手にしたのがこの本。

やや荒っぽいものの、金利の歴史的視点からの現状の把握、未来の予測は、刺激的である。

まず、金利は資本利潤率であると定義する。時々の覇権国家が成熟すると直接投資機会が減り資本利潤率(つまり金利)が下がる。代わりに金融サービスが発達し新興国への投資が増える。

よって、新興国は常に過剰設備状態になり、安い人件費と併せてデフレ圧力となる。

この循環は、多くの発展途上国が存在する限り続くが、筆者は、1994年に終わっていると考えている。アメリカのベトナム戦争敗戦と石油危機をその象徴として挙げている。(この辺が荒っぽい所)

石油危機が唐突に出てくるが、投資を受け入れた新興国が発展する為には安いエネルギーが必要であるが、石油危機以来その前提が崩れた言うのだ。

資本主義は搾取モデルではあったが、1974年までは搾取される新興国も国民全体の生活向上と先進国への変貌を遂げる事が出来たのだが、その後は国民全体への波及効果が無くなり、デフレ圧力が常に存在する事で、先進国の中産階級を破壊する様相を呈している。

俎上スパンが長いので、特に将来予想については何とも言えないが、中国やインドが日本の様に総中流になるとは想像出来ないし、アメリカ、日本での中産階級の衰退は現実であるので説得力はある。

よって、タイトルの通り、資本主義は終焉に向かっているので新しい社会制度が必要が結論である。直接は言ってないけど、社会主義、共産主義への移行を暗示する陳腐な最後となっている。

刺激的で示唆に富む良書であるが、私の金利ゼロへの直接的な回答はない。単純に、金利政策へ注目し過ぎて、歴史的な視点を受け入れられないだけなのだろうか?

長いスパンで考えるなら、量的緩和とゼロ金利を即刻廃止して、規律のある財政と一時的な縮小均衡を目指した方が、社会主義とかに移行するよりマシな気がする。

筆者も指摘するバブルと崩壊のサイクルが続く事には激しく同意する。その根源には、マネーサプライと金利を政治家がオモチャにしている事実を正しく理解する必要がある。

現代のゼロ金利が、歴史の必然なのか、政策失敗の帰結なのかを見極めていく必要がある。

是非、一読を。


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