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Bad Blood

2018-08-13 05:35:06 | 書評
"Bad Blood" は、シリコンバレーのベンチャー企業 Theranos (セラノス)の盛衰を綴ったノンフィクションである。

Theranos (セラノス)は、指先から採取する少量の血液で200種類以上の検査が出来る画期的な機械を提供するという企業理念を唱え、創立者がスタンフォード中退の19歳のカリスマ性に富んだ美しい女性、Elizabeth Holes という事もあり、注目を浴びていた。

結局は、試作機さえもきちんと作動しないのに、開発中であることを言い訳にした企業機密のベールを覆って大手ドラッグチェーン等との契約を取り付け評判、市場価値を高めていたが、内部告発とウォールストリートジャーナルの暴露記事(この本の著者がレポーター)で化けの皮がはがれてしまった。

彼女のカリスマ性、家族の交友関係を通したベンチャーキャピタルへのアクセス、スタンフォード大学有名教授の推薦等々が Theranos (セラノス)にオーラを与え、信憑性と潤沢な資金を獲得する。しかし、肝心の機械の開発が追いつかないので、投資家、契約先、マスコミに misleading な情報を提供するようになる(嘘をつき始める)。段々と内部に軋みが生じ始め、歪んだ内部統制、高い離職率で、崩壊へと突き進んでいった。

エピソードの一つ一つが絡まり重なり合い、彼女のサイコパス的な言動と相まって、ぐんぐんと読ませる。

Theranos (セラノス)が怪しいという報道が始まったころに Elizabeth Holes のテレビインタビューを観たのだが、テレビを通してさえカリスマ性を感じられる程であった。しかし、読み進めながら彼女のカリスマ性に溢れる視覚的イメージは湧くのだが、生身の人間を感じられない奇妙な感覚が付きまとった。

ジェニファー・ローレンス主演で映画化が決定しているので、日本語訳も出版されるだろうが、是非、原本で。


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