YS Journal アメリカからの雑感

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オバマの最大の罪

2010-07-23 04:49:53 | アメリカ政治
オバマの最大の罪は、様々なアングルで不必要な階級闘争と対立を作り出している事であろう。分かり易い敵を設定して攻撃するという、市民活動家の常套戦略であるが、大統領として自分の政策を正当化する為に、自分に反対する個人や団体を攻撃する事は、品が無いばかりか、全くもって反アメリカ的である。

それよりも質が悪いのは、特定の業界を槍玉に挙げて悪者にすることであろう。既に、製薬会社、健康保険会社、金融機関、石油産業、ファーストフード業界、自分に反対する団体を必ず攻撃を行う事である。景気が良くならない要因の1つに、オバマ政権が進める政策がビジネス環境に及ぼす影響が見通せず、積極的な活動が出来ない環境になっている事も見逃せない。

その中でも、もっとも重い罪は史上初の黒人大統領であるにも拘らず、心の奥底に人種差別を抱え込んでいる事であろう。黒人対白人の問題が起きた時に、白人が悪いという条件反射的な対応を必ずするのである。

昨年、マサチューセッツ州でオバマの友人であるハーバードの黒人教授が本人の自宅で白人の警官に逮捕されるという事件があったが、オバマは、事実関係を知らないと前置きしながら、白人警官の逮捕がバカげていると発言をしている。

今週は、農務省の黒人女性のネット上に流れた意図的に編集された白人に対する差別発言に、ホワイトハウスが過剰反応を起こし、権限も無いのに辞職を強制するお粗末な事件があった。逆差別に対して過剰反応する事自体が、人種差別にを内在している証しに他ならない。

オバマ本人は、黒人である事を最大に利用して、オバマ大統領の政策に反対する勢力が人種差別であると訳の分からないシールドを意識的に利用している。オバマを支持する人も同様な弁護をする事が見受けられる。

アメリカの人種問題(特に、黒人)は、非常に厄介である。教育や収入など社会的なレベルがある一定の線を越えると、人種差別は、本当に存在していない感じになる。但し,このレベル以下では、圧倒的に黒人の割合が多くなる。荒廃する都市での犯罪、麻薬の問題とも重なり、社会的なお荷物的な視点から差別が行われているのである。

アメリカは、60年代の公民権活動を通じて人種差別を克服したかに見えたが、肝心の黒人の多数が新しい環境に対応出来ず、結局罪滅ぼし的な福祉政策の施しを受ける事となり、悪循環から抜け出せない現在の状況がある。黒人の大部分は必然的に福祉政策に熱心な民主党を支持しており、民主党も固い支持層なのでより支援する奇妙な持ちつ持たれるの関係が続いている。

オバマは全然エリートなので出身は違うのだが、活動家としてのシカゴでスタートし、そこを地盤として政治家ななったので、その辺の事をよく分かっていると思う。イリノイの州の上院議員となったのは、まさにこの黒人層を上手く取り込んだ結果であった。

黒人でイスラム教の父親、白人の母親を持っている複雑性の故に、色々な垣根を溶解してくれると言う幻想を集めて大統領になったのであるが、オバマ自身はずっとエリートでありながら、差別されているという意識を持ち続けていたのではないかと思う。頭が良いだけに変な事を言う訳ではないが、時々思わぬ所でその辺の意識が飛び出しているのだと思う。

その上で、市民活動家的な戦略が骨の髄までしみ込んでいる為、自分の思う様に持っていこうとする時には慣れた手法、つまり思わず敵を作って攻撃するという構図を使ってしまうようだ。

都度都度に自分勝手な対立構図を作り続けたので、オバマ自身の立ち位置が不明になり、どこに所属しない孤独な存在になりつつある。そんな中で、黒人対白人の構図をオバマが持ち出さないのは、自らの差別体質を曝け出す事の危険性を充分に認識しているからである。

人種の壁を乗り越えて黒人初の大統領になったオバマが、歪んだ人種差別の感情を心の奥にもっている事で、人種問題の現状が後退している不幸がある。そして、その事に皆が気づいているが、黒人大統領に対してその事を批判する事がタブーになっている歪曲された不満が溜まってきている。

反オバマ活動は、余りに酷い政策への純粋な反対運動であるが、黒人であると言う立場を利用して大統領にまでなったオバマが、実は人種差別主義者であると言う奇怪な現実に、特に白人層は怒りを募らせているのだ。


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2 コメント

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たまたま見たニュースです (ドイツ特派員)
2010-07-25 12:35:56
ysjournalさん、

今日入ってきた冷泉彰彦氏のレポートで、農水省官僚の解雇に絡んで、まさにこの点を説明していました(彼自身は「親オバマ」なので、ysjournalさんとは結論は違うと思いますが)。何でも事実関係を確認せずに解雇したようですが、やはり軽率の謗りは免れないでしょう。このエントリーに関連して言えば、寧ろ支持が得られていない白人層におもねく形で悪しきバランスを考えてしまったという事かも知れません。
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冷泉彰彦 (ysjournal)
2010-07-25 15:45:41
ドイツ特派員さん
JMMのレポート、私も読みました。彼は、リベラルに偏り過ぎているアメリカのメインのマスコミに毒されていると思います。アメリカ在住も長く、アメリカ通という事になっていますが、怪しい論評が結構あります。

「親オバマ」を公言して、論評を行うのは、正直なのか、卑怯なのか、判断に苦しむ所です。私のブログでも、彼の事は2回取り上げておりますが、彼の分析が間違っている批判です。(アフガンの件では、JMMにメールした私の意見を掲載している)

今回の人種問題の件でも、彼は「黒人大統領」オバマの存在自体が波風を立てていると分析しているが、私は、エントリーでも示した様に、オバマ(もっと一般化するとリベラル)が内在している人種差別意識が問題を引き起こしていると考えております。
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