YS Journal アメリカからの雑感

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Obama, the comeback kid!?

2010-12-20 06:12:54 | アメリカ政治
ここに来て大忙しのアメリカ議会であるが、偏に与党であった民主党が審議義務放棄した一年の付けが回っているだけなのである。その上、中間選挙での敗北が確実となった夏頃からはこの傾向が一層強くなり、中間選挙までは民主党の更なる凋落を招く法案は審議せず、年末のドタバタ(ブッシュ減税の期限切れ、暫定予算案が決まらず政府のシャットダウン)を利用して、これらの法案に無関係な民主党のやりたい法案をくっつけて通そうという戦略に切り替わった。

この民主党の作戦は、暫定予算で見事に打ち破られたのであるが、サンクスギビングからの短期間で議会で審議された主な法案をみてみよう。

1)ブッシュ減税の2年延長:これは、失業保険の13ヶ月延長と抱き合わせで可決
2)暫定予算法案:現在の予算の2ヶ月延長のみで可決(その他2000ページに及ぶ全く関係無い分はカットされた)
3)軍の "Don't tell, don't ask" ポリシーの廃案を可決
4)大学教育、軍隊勤務を条件に不法移民の子供に永住権を与える法案(DREAM ACT)は否決
5)ロシアとの核兵器削減条約の批准については審議中

オバマにとって公約を守れたのは "Don't tell, don't ask" のみで、ブッシュ減税については大敗北、暫定予算に Obamacare の予算とかテロリストを収容しているキューバの収容所(ギズモ)からの容疑者の国内移送予算がつかなかった(収容所閉鎖の目処が立たず)ので敗北、DREAM ACT は包括的な移民改革法案の一部だけの話なので余り意味は持たず、といった所であろう。

一番注目されているのはブッシュ減税の延長で、未だに失業率10%という現在の経済状況で実質の大増税をする訳にはいかず、本当に不本意ながらという感じである。民主党からも批判の声は上がったが、結局は妥協案に賛成している。大統領選挙中から大反対していたブッシュ減税の延長を妥協案としてオバマ自らが打ち出した事で、オバマ大統領が中道路線に切り替わったという見方が、特にオバマを支援しているリベラルから多くなってきている。

ここに来てあれだけ強情であった民主党やリベラルグループが、急にオバマの中道路線への動きをなぜ支援するかを考える必要がある。民主党は、下院、上院、2009年からはホワイトハウスを牛耳った事で、リベラルな政策が受け入れられるという読みもあり、世論の反対があろうと関係なく好き勝手な事をしてきた。その結果として先の中間選挙での歴史的敗北があった。

中間選挙の結果について、こちらを参考にして頂ければありがたいのだが、下院は次の1期2年だけではなく何年も共和党の過半数が続く事が予想されるし、民主党が辛うじて過半数を確保(3分の1の部分的な改選)した上院でも絶対過半数がないため、基本的に議会の機能停止をさせないためにには共和党主導の法案を受け入れざるを得ない状況がある。

この2年のやり放題で成立した Obamacare を筆頭とした民主党主導の法案は今後、予算がつかず店晒しという見通しもある。廃案法案が可決された時の最後の砦がオバマ大統領の拒否権である。(議会が大統領の拒否権をひっくり返せるのは、上院、下院とも3分の2が必要)これで2012年にオバマ大統領が共和党の大統領候補に破れたら、これらの廃案法案が議会を通過すれば成立する事になり、民主党にとっては大打撃となる。(これって、こう書くだけでも民主党が変である証拠である。民主党は政府に大きな役割を持たせ、議員達がそれのブローカーをやる事で成り立っているという構図そのもの)

基本的に社会主義である民主党、リベラルは、革命などで一気に社会を変更しなくても少しづつ蝕んでいけば良いという考え方があるので、法律さえ残しておけば10年先にでも主導権を握った時に活用出来るのである。( Fabian Socialism(フェビアン社会主義) を読んでもらえば、その辺の戦略と目標が分かります)

来年から共和党に議会の主導権を握られるので、オバマ大統領にはこの後6年ホワイトハウスに居座ってもらい、拒否権を発動しまくってもらわなくてはならないのである。一方、共和党としては、下院での最初の法案が Obamacare の廃案法案という事で、何とか上院も通して、オバマ大統領に拒否権を発動してもらう作戦なのであろう。

オバマ大統領がブッシュ減税の延長で見せたようなフェイクの中道路線へのシフトではなく、本当の意味で妥協が出来るのであれば2期目の可能性も出てくると思う。オバマ、そして民主党も注意深く、実務的になってきた事を強調していくだろう。

でも、オバマは筋金入りの社会主義者である事がすこしづつ暴かれてきているので、もう誰も騙されないと思うのだが、やはり大統領であるし、彼自身も頭は良いのでいろんな手で、共和党そしてアメリカ市民を欺こうとするであろう。皆気をつけなければ。