YS Journal アメリカからの雑感

政治、経済、手当たり次第、そしてゴルフ

最低賃金上昇が雇用を妨げる

2010-07-25 11:00:17 | アメリカ経済
アメリカの連邦政府の規定する最低賃金は、一年前に大幅(41%)に上がって、現在時給$7.25だ。

最低賃金を上げることは、一般的に低収入層を助けると考えられるが、雇用を減らす効果の方が大きく、実は弊害がある事が研究で明らかになっている。最低賃金で働く人のうち、これを主収入とする人は6人に1人であり、大多数は、副収入であったりアルバイトであったりする。一番影響が大きいのは、16-19歳の若者である。この時給アップでこれらの若者の失業率が2.5%上昇したと推定されており、人数にして約11万人が仕事にあぶれた事になる。現在、この年齢層の失業率は25.7%である。

アメリカに暮らしていると、高校生がグロセリーなどで働いているのを目にする事が多い。ショッピングカートの整理や、レジ手伝いなど単純な労働なので最低賃金であろう事は容易に想像出来る。稼いだ分が全部自分の手取りになるので、それでも高校生にしてみれば貴重な収入であろう。

アメリカの高校生は日本に比べると結構堅実で、これらの収入は遊ぶためと言うより、大学資金に充てたりしているそうだ。大学も働きながら、そして足りない分は学生ローンで補うのである。

今回の大不況は、彼らの親から資産(家の価値が下落)を奪い、最低賃金を上げると言う誤った政策で働く機会が減り、大学で学ぶ事を難しいものにしている。その上、景気刺激策等で負債激増で将来の負担増大も招いている。

その上、オバマ政権が学生ローンを実質国営化し、卒業後政府で働けば返済義務が軽減されると言う特典があるので、ローンを利用して大学に進んだ場合、政府機関で働くにインセンティブがあり、政府が自己増殖するシステムが出来上がりつつある。

時代の巡り合わせと言う事があるが、今のアメリカの高校生は不運である。

最低賃金の引き上げと言う、直感的に、そして政府が良かれと思ってやる事でも、思い掛けない影響を引き起こす。経済活動に政府が介入するのは間違っている例の一つであろう。