YS Journal アメリカからの雑感

政治、経済、手当たり次第、そしてゴルフ

米国債の格下げ問題

2011-08-07 21:08:33 | アメリカ経済
Standard & Poor's が先週金曜日、米国債を格下げしたが、影響はほとんど無いと思われる。

私も MBA で米国債がリスクフリーであると習った口であるが、この世の中にリスクフリーがあるわけが無い。まあ、人間の想像力が及ぶ範囲で、限りなくリスクフリーに近いという事であろう。

思い出して欲しい。2008年に世界経済がぶっ飛んだ原因は、S&P を含む格付け会社が、トリプル A をサブプライムローンに与えていたのが原因でもあるのだ。格付け会社が言う事を鵜呑みに信じろという方が無理がある。

どのような意図があるのかは不明だが、S&P の格下げは単なる政治的なコメントに過ぎないと思われる。(深読みはどのようにでも出来るので、インチキな諸説にご注意)

アメリカの財政、議会のドタバタは周知の事実であるので、大きな影響は無いであろう。

もし、今回の S&P 単独での格下げが英断だとしても、結論が出るのは、5年も10年も先であろう。掛ける事が出来るのなら、米国債がトリプル A を取り戻す方に掛ける。

Borders 清算へ

2011-07-21 04:01:22 | アメリカ経済
今年2月に Chapter 11 (倒産)となり、再建を目指していたアメリカ最大の書店チャーンの Borders だが、スポンサーが見つからず、清算される事になりそうだ。

40年前に、ミシガン大学のあるアナーバーでの創業、初めて行った時に店の開放感に驚いた事、それなりに利用していたという馴染みもあり、本好き、そして本屋好きの自分としては、非常に残念である。

でも、考えてみるに、こんな私でも、最近 Kindle(キンドル)を購入しているし、本、CD、DVD などは、全て Amazon で買っている。自分の購入行動からも、本屋ビジネスが成り立たないという疑問が常にあったので、やっぱりという感じはある。(そう言えば、最近あまり本を読んでないなー)

なぜなら、Amazon の方が安いのだ。その上、Amazon のクレジットカードを所有しており、ポイントを金額換算すると更に3%安く計算となる。$25 以上購入すると時間が掛かるとはいえ(クリスマスシーズンは2週間、普通は1週間程度)送料も無料になるので、わざわざ本屋で買う気にはならない。

アメリカでは既に、独立系の所謂普通の本屋は殆ど無くなっており、Barnes & Noble が、辛うじて生き残っているくらいである。Nook という独自の e-reader デバイスもあり、店舗を電子書籍の導入場所、又、近所の集会所的に使うビジネスモデルでやっている。(本より、間借りで入っているスターバックスの方が売れているのではないかと思えるときもある。テーブルを囲んで、おばちゃんたちがカードゲームをしているのを見た時はさすがにのけ反った)勿論、ネット販売もしている。

既に2月に200店舗を閉鎖しているのだが、残りの399店舗も全て閉鎖になる。現在の経済状況であり、大型店舗ということもあり、大家(不動産投資会社)も次のテナントを見つけるのに苦労するだろうという記事もあった。

娘たちの担任の先生方に、学年の終わりに、少額ではあるが、Borders のギフトカードをお礼として渡していたのだが(買っているものがあった!)、来年からは、Barnes & Noble にするか。でも、近くにお店が無いので、双方とも不便になりそう。Amazon のギフトカードとかという結末になりそうだ。

アメリカの景気、オバマ落選までは回復の見込み無し

2011-07-04 09:14:50 | アメリカ経済
アメリカ経済の行方については、財政面や金融面からいろいろな分析がされているが、力強い回復をしないのは、民主党支配だった議会とオバマ政権がもたらした不透明さが、原因だと思う。

2012年に、共和党大統領が当選し、共和党が下院を支配したまま、最低でも上院で過半数を獲得するまで、企業も個人も積極的な投資、消費は行われないと思われる。現在の民主党は、極端に左寄りのリベラル、プログレッシブに乗っ取られており、共和党の穏健派が、一昔前の民主党主流という感じである。

オバマ政権は、GM、クライスラーの倒産への介入やボーイングの新工場建設等で、労働組合を必要以上に守って来ている。石油や石炭の採掘に関しても、許可発行を恣意的に引き伸ばしたりしており、その上、ObamaCare、金融改革法で、企業のコストを上昇させる法案を成立させている。

記者会見などでも、オバマ大統領は、企業は利益を生むための組織という認識が無く、政府の言う通り雇用をし、給与、福利厚生を提供する組織と思っているようである。反ビジネス的であり、やっぱり社会主義者に間違いないであろう。

最低でも、後一年半は、アメリカの景気が上向く事は無いと思われる。オバマが間違って再選でもしたら、アメリカは基本的に終わりだと思う。


6月据えに QEII が終了した。90年代の日本に似て来たとか言われるが、一番の違いは、アメリカはデフレの心配が全くない事であろう。日本はデフレで不景気になった(長引いた)という流れで語られる事が多いと思うのだが、逆なような気がする。景気が悪くなった所に、過剰供給力による価格の過当競争、日本製のコスト高で輸入品の増加で(国際的な物価水準へ近づいた)、デフレが進行したのだ。

アメリカは、基本的にコストプラスの考え方が強い上に、既に国内で競争力の無い物は輸入品に切り替わっていたので、デフレの危険性は最初からなかったと考えられる。もたもたする景気回復を心配して、今年末とか、再び失業率が10%になったらとか、QEIII の実施の話が出ているが、ナンセンスであろう。

財政再建の目処がつけば、やたらに FRB が金融面で頑張る必要も無くのではないかと思う。バーナンキ議長でさえ、なぜアメリカの景気が回復しないのか理解出来ない、と発言したりしているが、企業や個人が、政治的な不確実性を嫌っているからだ。(そんな事、言えないのは間違いないが)

いくら金利が安くても、企業は手持ち資金が豊富な上に、積極的な投資(特にアメリカ国内)をする気は起こらず、個人も住宅や車の購入を控えるのは当然の事である。

アメリカ景気の復活は、アメリカの社会主義者たちが徹底的に駆除されるのを待つしかなさそうである。

羊頭狗肉

2011-05-18 05:29:23 | アメリカ経済
オバマが、2009年の景気刺激策の一環でオバマがブチ上げたアメリカ高速鉄道網構想も、結局は Amtrak のインフラ改善に予算の一部が使われるだけで、頓挫しそうである。

高速鉄道としては、辛うじて、カリフォルニア州、サンフランシスコとロスの間の一部で建設が始まる様だが、果たしてどうなる事やら。$300M(約240億円)の壮大な無駄遣いの様な気がする。(カリフォルニア高速鉄道庁のサイトはこちら)残りは、ボストンーニューヨークーワシントン DC、デトロイトーシカゴーセントルイス等の在来線を将来の高速化に備えて整備する事に使われる。在来線の整備は、一応将来を睨んでとお題目がついているが、基本的には、Amtrak への呈の良い補助金である。

2009年の景気刺激策で$8B(約6400億円)の予算が成立しており、今回は、$2B(約1600億円)が使われる。景気刺激策については、成立から2年以上も経っている効果が怪しい上に、折からの財政状態が厳しいので、消化していない予算については、共和党は凍結する事を提案したりしている。

人口密度が低く、移動距離が長いアメリカは、基本的に旅客鉄道との相性は悪い。個人が車に乗らないので環境に良いとかの訳の分からない理由も挙ったりしているが、一応景気刺激策の一環であるので雇用の促進とか、元々本末転倒気味の政策であった。どう考えても、敷設後の採算も怪しいので、フロリダ州は予算の受け取りを拒否している。



WSJ の地味な記事 "U.S. Parcels Out $2 Billion for Rail"

オオカミ少年

2011-05-06 12:46:24 | アメリカ経済
ガソリン価格が、ガロン当り $4 を超えたらアメリカの経済の雲行きは怪しいと言っていたのだが、今日ミシガンでのガソリンの値段は $4.159。全国平均も $4 を超えるのは間違いなさそうである。(最新では、辛うじて $3.98)

一方で、先月のガソリン消費が大きく落ち込んでいる。また、石油精製量を増やそうとする動きもあるし、ここに来て原油価格が久しぶりに $100 を割り込む場面があったりして、今回一連の天井は近そうだ。

ガソリン価格が $4 レベルなのが最大の原因とも思えないのだが、アメリカ経済にいろんな危険信号が点滅している。

まず、コモディティーの動きが荒っぽくなってきた。今週は、銀相場が1日で、7.6%下げたり、金も$1500を超えてからは、やや迷走状態になってきた。ドルの価値は低くなる一方である。QEII の効果がオーバーシュートして景気を下支えするというより、あちこちで沸々している局地的バブルを産み出した挙げ句、崩壊しそうな状況になってきた。

QEII が6月に終了する事、雇用数字も予想外に悪い事で、景気後退予想が一気に膨らんできている感じである。(因果関係は、どっちとも言えない)

足元を見てみると、インフレが止まらない。私の業界でも、2008年のリーマンショック前の最後の数ヶ月より大幅で息の長い原材料の値上げが進行している。あの時の様な一気に崩壊する感じは無いのだが、いろんな所で供給不足(要因はリーマンショックで余剰供給力をあちこちでスクラップしている)となっており、一方で賃金の改善は、高い失業率でままならない状況がある。単なる不況ではなく、スタフグレーションになる可能性が高い。

自分がオオカミ少年である事を祈るのみである。

東日本大震災の私的経済的影響からの愚考 (追記あり)

2011-04-27 05:26:49 | アメリカ経済
東日本大震災というより、津波(もしくは大津波)の文字を入れたほうがイメージ的にはぴったりくる。

直接的に被害には一番縁が無いアメリカに住んでいるが、自動車産業の末端にもヒタヒタと影響が出てきている。

先週、トヨタの生産見通しの発表があったが、アメリカの日系 OEM の生産予定を見ていると、最低でも6月末(独立記念日のシャットダウン)までは、ざっくり半分である。7月以降に増産で遅れを取り返すという噂もあるが、今年一杯は正常に戻らないと思っていた方が良さそうだ。

私の取引先でも、イースター(復活祭)週で、金曜日が祝日( Good Friday ) の先週、一週間シャットダウンをしたり、シフトを減らした上に金曜日は休業の上にしたりして、生産減の調整を行っている。実際にオーダーキャンセルの連絡を受けると滅入るものだ。

自分が担当している売上を考えても、アメリカの日系自動車生産数が、四半期(4、5、6月)だけ半分と考えてもマイナスー12.5%とになる。

経済的影響について、例えば日銀の白川総裁は先週「今年上期はマイナス成長が見込まれる」との見解を示しているが、個人的なアメリカでのマイナス成長(不思議な表現だが)を元に日本経済を大胆に予測すると、自動車業界全体で GDP への貢献が10%であると考えて(昔何かで読んだが、精査はしてない)、単純に影響はー6.25%。あくまでも楽観的に考えてでこの数字であるから、暗い話はしたくないという気持ちは理解出来るが、「今年上期はマイナス成長が見込まれる」などと、お気楽なことを言っている場合ではないのは無いか?

復旧、復興の特需である程度穴埋めされたり、インフレが起これば名目 GDP は少しお化粧されたりするが、電力不足の件もあり、既に分かっている自動車業界の減算だけでも、これだけのマイナス要因があるので悲観的になってしまう。

リーマンショックで財務的に痛めつけられているであろう自動車部品業界、特に2次、3次下請けで、乗り越えられないところが出てくるのではないかと心配をしている。世界的な原材料の高騰も衰えておらず、踏んだり蹴ったりな状態であろう。

アメリカ経済も、ガソリン価格高騰で雲行きが怪しい。ガロン当たり $4 を超えると心理的なインパクトもあるのではないかと、以前に心配したが、先週の全国平均は、$3.84。ニューヨークなどの大都会では既に、$5 を超えている。急激な不況突入以外にガソリン価格が下がる要因がない。

ガソリン価格だけでなく、食料品等のインフレへの実感もある。不況、本格的なインフレ、どちらにいくにしても、あまり良いことは、悲しいかな想像出来ない。

追記(5-5-10):上で、桁を間違えている事を発見。「自動車業界全体で GDP への貢献が10%」なので、全体への影響は、-0.625%。とすると、日銀の言っている事は正しい。但し、イメージとして、-6.25%の方が当たっている様な気がしながら書いたので、小学生以下の様な間違いを犯したのだと思う。(アイデアので突っ走ると碌な事が起こらない事を、改めて実感)

2月 アメリカ自動車販売台数

2011-03-04 08:16:20 | アメリカ経済


An annualized sales pace of 13.4 million in February という表現にいつまでたっても慣れないのだが、2月の販売台数が、993,937 であった。2011 年が、11,590,274 (11.59 million) であった事を考えれると順調に回復してきている。メーカーだと、GM が前年同月比で 46.4% 増と元気である。(全体としては 27.3% 増)日本メーカーでは、トヨタが 41.8% と静かに復活しつつある。(Detroit Free Press 3-1-11 article "February sales surge by 27%")

添付したグラフを見ると2009 年の夏の "Cash for Clunkers" (ポンコツ下取り政府補助金)による需要の先食いを半年ほどで解消して、2010 からは派手さはないものの地道に回復してきているのがよく分かる。

が、右のガソリン価格のグラフを見ると喜んでばかりもいられない。自動者業界やアナリスト達は、ガソリンが $4/gallon にならない限り回復基調は衰えないがコンセンサスらしいのだが、本当だろうか? 実感からすると$4/gallon 以下でも怪しくなりそうな気配がある。中東情勢が不透明な状態が続いており、原油が $100 を超えてきている。何かあればあっという間に $4/gallon 超えそうである。

2008 年のガソリン高騰の時は、ブッシュ政権の対応が悪いと批判が多く、ブッシュやチェイニーの陰謀説まであったが、同じ人からオバマ政権を批判する声が上がらない。

何をやっても馬鹿丸出しのブッシュであるが、石油価格高騰の陰謀については、非常に緻密で、未だに尻尾を捕まえるどころか影さえも見えてこないのだが、オバマ政権のやった事は、白日の下に晒されている。

一番、わかりやすいのは、"No crisis should go to waste" の火事場泥棒精神で、メキシコ湾 BP 原油流失事故を有効に活用し、深海油田採掘のモラトリアムと採掘許可の発行を意図的に遅らせている事だ。(発行許可発行遅延は、事故前から)

深海油田採掘のモラトリアムは昨年10月に解除されたが、The Bureau of Ocean Energy Management による意図的な深海油田採掘許可の処理遅延は続いており、石油会社が提訴していた。裁判所は、先月、30日以内の処理を命ずる判決をしている。オバマ政権は、海底採掘以外にも、アラスカや内陸での石油採掘に厳しい政策を行っている。

エネルギー自給率、景気回復、雇用、その上、外交や国防も、石油を抜きには考えられないのがアメリカである。オバマ政権は、その辺を深く考えず、やりたい放題挙げ句、アメリカ市民の暮らしを不必要に不安定にしている。まあ、本質的に自分の首もしまっているのも気付かずに、全てを矮小した対立した政局のせいにして、乗り切る気でいる様だ。オバマ政権は、事態の深刻さと比例(反比例?)する様に、お目出度くなってきている。

石油の需要と供給は基本的に安定しているので、本来は緩やかな変化をするべきものであるのだが、最大の産地が中東という地政的な要因で、大きく動く。アメリカとしては、常に安定的な供給を考えているという政策が、事前にパニックの芽を摘んだり、抑制する効果があると思われる。オバマ政権のやっている事は、まるっきり逆である。

トーラスを満タンにすると $50 で足りないと嘆いていたら、フルサイズのピックアップトラック所有している知人に、俺は $100 を超えると自慢されてしまった。

フロリダ州知事、高速鉄道の建設拒否

2011-02-18 06:26:16 | アメリカ経済
JR東海を筆頭とする日本企業体は、本心でアメリカの高速鉄道建設に期待していのたであろうか?(ヨーロッパ等の競合相手も、どのくらい真剣かも知りたいものだ)(フロリダ州の高速鉄道計画中止 新幹線輸出に打撃の記事

鉄道ド素人の私でも、いくら連邦政府の補助金(2009年の景気刺激策)がついていても、昨年からの政治状況と採算を考えれば、アメリカで高速鉄道が建設される可能性は、非常に低い事は分かっていた。(以前のエントリー

フロリダの場合、事業費は33億ドル(約2700億円)。うち連邦政府から約20億ドル(約1600億円)の補助金が出る予定であったらしいが、年間の運用費だけで300億ドル(約250億円)も掛かるし、採算の見通しが立たなかったようだ。連邦政府からの補助金も条件付きで、建設、運営の中止をした場合、返還義務が発生する事も見逃せない。フロリダ州知事としては、いくら連邦政府から補助金を貰っても、採算見通しは暗いし、州の負担分でもっと有効な事が出来るとの判断のようだ。

日本的に考えて、連邦政府から補助金が出ることが決定しているので、建設されることについては全く疑っていなかったとも可能性が高い。前原外相も売り込みに行っているらしいので、大きな期待をしていたのだろうが、明らかにマーケティングのミスであろう。

これって、外務省の恥と言う事にはならないのであろうか?外務大臣による営業をトップセールスと言えるか微妙だが、一般企業だったら今頃トップを担ぎ出した営業は冷や飯を食う羽目になっているだろう。

元外交官が怪しい外交の専門家として活躍する日本であるが、現役も怪しいもんだ。前原外相だって、もっと他にやる事もあるだろうに。(これより大事な事は、アメリカの誰ともどことも話さえ出来ない可能性もあるが、それはそれで、もっと問題である)

AOL, the Huffington Post を $315 Million (約260億円)で買収

2011-02-14 05:22:54 | アメリカ経済
この買収って、AOL がよっぽどバカか、the Huffington Post の共同創始者である Arianna Huffington が暫定21世紀 Number 1 セールスパーソンか、のどちらかであろう。

AOL は、コンピューター通信の草分けで、最盛期には約3000万人以上のの契約者がいたが、現在は、500万人程度に落ち込んでいる。しかし、2009年で $3.257 billion (約2,700億円)の売上があり、3分の一以上が広告からの売上である。AOL は、アメリカでは通信事業を行っておらず、伝統的に、ユーザーが AOL のサーバーにアクセスすることにたいして料金をとる、課金ビジネスでもある。

ブロードバンドの普及、インターネットの発展、特に Yahoo と Google の出現で、AOL の存在感は急速になくなっている。10年前に Time-Warner と合併した時などは、マルチメディアの最強となるのではないかという予想もあった。(現在は、解消している)

一方、the Huffington Post の方は売上が、$50 Million。(買収金額は、実に売上の6.3倍)トラフィックは、2500万人(25 million unique monthly visitors)との事。アナウンス記事に、"The new group will have a combined base of 117 million unique visitors a month in the United States" とあるので、AOL としては、トラフィックが単純に約3割増える事になる。 AOL は、the Huffington Post の集客力(?)を狙って大金を叩いたのである。(今年だけで $30 Million の売上げ増を目算しているらしい)

多分、相乗効果でのトラフィック増加予想も買収金額に入っているのだろうが、unique monthly visitor 一人当たり $12.6 (約1,050円)は、高すぎるのではないだろうか?(この業界を知らないので、根拠は全くないが)

AOL は、メンバーにフィーを払わす課金モデルから、アクセスする人には無料でサービスを提供するフリービジネスモデルへの転換に苦労しており、一気に挽回しようと考えているのであろう。(フリービジネスモデルについては、書評でも取り上げた "Free" が詳しい)又、何らか新しい形での、ニュース記事の課金モデルを考えている可能性も高い。

と、ここまでは単純に企業買収の話なのだが、くせ者なのは、the Huffington Post が非常にリベラルに偏ったニュース機関と考えられている事であろう。(アクセスする層も若くので、AOL としてはそこも魅力だったのだろうが)

ブリービジネスモデルとして、広告主の立場から考えて、従来の the Huffington Post であれば、聴衆の幅が狭いので、非常に効率の良い宣伝が出来たのではないかと思われる。果たして AOL と混ぜこぜになって、数が増えただけの聴衆に同じ様なプレミアム(?)を払う事をするのであろうか?

ニュースサービスの課金モデルでは、今後、リベラルの Arianna Huffington が編集長を務めるニュース編集が一般受けするのかという疑問がある。(彼女、昔、共和党の議員と結婚してたりして、内面は複雑なのかもしれない。もしくは、本来、政治的には関心が無く、ただの凄腕ビジネスウーマンで、商売的に、今リベラルをやっているのかもしれない。どっちにしても余り信用出来そうにない)

分析はいろいろ出来るが、直感的にこの買収を聞いた時、が浮かんだ。

しかし、元 メンバーとしては、AOL が既に過去のものだと思っていただけに、今でも $3.257 billion (約2,700億円)の売上があり、しぶとく生き残っている事に敬意を示し、成り行きを見守って行きたいと思う次第だ。

Meredith Whitney

2011-01-28 04:36:14 | アメリカ経済
ペンシルベニア州の州都 Harrisburg の財政危機については、昨年、9月9日9月15日に続けてエントリーし、その後も地方自治体の財政危機のシンボルとして、注目している。

昨年11月には、将来の破産申請に備えての準備を,pro bono (無報酬での活動)でやると申し出てたニューヨークの有名な法律事務所 ( Cravath, Swaine & Moore LLP )に任す事を決定した事などを、つらつらと追っかけている。

市、郡、州、地方自治体だけでなく学校区や特定のプロジェクトまで、地方自治債は、$2.9 trillion (約240兆円)の発行残高がある。

連邦レベルでも、$14 .1 trillion (約1,150兆円)の残高があり、財政再建が大きな課題になっているのだが、地方レベルでも税収の減少で、急速に危なくなってきているところがある。

昨年の中間選挙における民主党の大敗北は、連邦、地方レベルで財源の裏づけもないまま歳出だけを拡大させた事も大きな要因である。(共和党も歳出拡大では同罪であるが、現在は歳出削減の公約を強く押し出している)

昨年一年で、地方自治体の債券は $8.2 billion (約6,700億円)の不履行がある。さて、今後、不履行が増えていくかどうかが、大きな焦点になっている。

そこで登場するのが、2007年に CitiCorp が配当を減らすと言うレポートを出し、結果的に2008年のリーマンショックを当てた感じになっている「悲観論の女王(?)」Meredith Whitney である。(彼女の会社のホームページはこちら)彼女は、多ければ100の地方自治債がディフォルトし、その金額は $100 billion (約8.2兆円)を超えるとしている。

一方で、地方自治体は、歳入をコントロール、つまり税金を上げることが出来るので、歳出削減と併せて、そこまでディフォルトすることはないであろうと言うのが、大勢の意見である。良い例(住んでいる人は御愁傷だが)が、州の中でも財政が一番厳しいイリノイ州は、歳入拡大のために州所得税の66%アップ(!)を決めたばかりである。(歳出削減はどうなっているのだろう)

懸念を示しながらも、投資対象として面白いと考えている人たちもいる。代表的になのは、絶妙のリスク管理でリーマンショックを軽微の損害で終わらした JPMorgan Chase CEO Jamie Dimon、世界最大のミューチュアルファンド "Total Return" (社債等が中心のポートフォリオ)を管理する PIMCO Bill Gross であろう。

2008年以降、発行自治体により金利(債券の価格)に違いが出てきたりしており、マーケット本来の機能が効いてきている。(逆を言えば、苦しいところはより苦しくなるのだが)今後は、安易な発行が難しくて、自然と財政規律が出来るようになりそうだ。

州債については、金利収入に対して収税の控除があったりして、国債より金利が高い上に、住んでいる州の財政が健全であれば、(税率にもよるが)30年物だと8%を越えるリターンが期待できる。チャンスと見ている人も多いようだ。

さて、Meredith Whitney だが、地道にアナリストとしてやってきたのであるが、CitiCorp の的中で有名になり、それなりにお綺麗なので、テレビのコメンテーターとして引っ張りだこである。本人もやや舞い上がったのか、独立したりしている。基本的に株専門のアナリストであり、債券は素人というのが業界の共通認識のようで、地方自治債の予想については、業界ではあまり相手にされてない。

地方自治体の財政危機は引き続き注目なのだが、彼女の予想が当たるかどうかも、注目しない訳にいかないだろう。

債券の素人ということでの批判は理解出来のだが、有名税なのであろう、旦那が元プロレスラーであると言う事で、不当な評価を、特に、女性からされている気がする。(男性も面白がって持ち上げているのかもしれない。私も同罪です)

メキシコ湾原油流出事故 その後

2010-10-05 07:41:10 | アメリカ経済
先月、流出を続けていた油井が完全に塞がれた事で、アメリカの報道でも、すっかり忘れられてきており、原油が流れ着いた海岸や湿原地帯の回復がどうなっているか、最近お目にかからないのでさっぱり分からない。

海中の原油については、流出推定量に比べて圧倒的に少ないという調査結果が出ている。要因としては、原油を食べてしまう細菌が大活躍した事が伝えられている。昔からメキシコ湾は海底油田から原油が少しづつ漏れていたので、これらの細菌が多く存在し、海水温も高いので、今回大量流出した原油に対抗する様に、大量繁殖したと考えられている。但し、海水表面に浮かんでこなかった原油が本当に分解されたのか、これらの細菌が食べ切れない原油成分があり、それらが海底に沈殿して、貝や魚の生態系にどのような影響を及ぼすのかは、まだハッキリしていない。(以前から、メキシコ湾沿岸には、ターボールと呼ばれる、原油の残りカス(細菌が食べた後の残留物と考えられている)が流れ着いていたらしい)

オバマ政権は、裁判所の度重なる判決にもかかわらず、相変わらず、深海油田の採掘の一時停止をしたままである。早くても11月末までは、再開出来なくなっている。このモラトリアムによる直接ダメージである石油採掘関係者の雇用ロスだけで2万4千人、約$2B(約1700億円)の損失となっている。雇用ロスは一時的と考えられていたが、様相は悪化しそうだ。流出事故前は、メキシコ湾に深海油田採掘の海上石油掘削基地は、25あったのだが、既に5つがメキシコ湾を離れている。(これらの基地は、一度固定されると5-10年は動かさないものらしい)

深海油田だけでなく、メキシコ湾の浅い所の石油採掘についても、採掘許可の発行を The Bureau of Ocean Energy Management が、従来の30%のペースでしか行っていない。(日本の裁量行政のやり方と全く同じ)

オバマ大統領を筆頭として、この政権は、石油が大嫌いのようだ。まだ原油がドンドン流出して、緊急対策が必要な時にもクリーンエネルギーの開発を訴えていたし、深海油田採掘のモラトリアムなどでメキシコ湾岸沿いの雇用ロスには何の考慮もしないくせに、オバマは、グリーンエネルギーの開発は雇用促進になると、大統領候補の時から全く変わらない空虚な演説をこの期に及んでも続けている。

事故の対応で、危機能力の欠如を露呈したオバマ政権であるが、政治的ダメージは思ったほど無かった事を幸いに、この危機を利用して、相変わらず、石油産業をいじめのやりたい放題であった。

これまでの、関連エントリー

海上石油掘削基地、メキシコ湾からエジプトへ(7月14日)
メキシコ湾原油流出事故、こぼれ話(6月23日)
想定内だったオバマ大統領のテレビ演説(6月17日)
オバマ、メキシコ湾原油流出事故 ダメージコントロール(6月15日)
海上石油掘削基地の爆発事故(4月29日)

アメリカ高速旅客鉄道網、夢のまた夢

2010-09-23 12:24:32 | アメリカ経済
昨年の景気刺激策の一環で、既に$8B(約6千500億円)の予算か付いている高速旅客鉄道網構想が、既に暗礁に乗り上げている。

景気刺激策は、過去数十年に民主党議員が提案しながら、結局予算が付かなかったペットプロジェクトが山の様に入っていると言われていたが、どうやら高速旅客鉄道網もその一つのようだ。リーマンショック後のドサクサで、碌な審議もせず民主党が強引に可決しオバマ大統領が速攻で署名したのであるが、即効性のある景気刺激策と大宣伝したの割には、未だに5分の1しか消化していない。

失業保険給付延長の審議で、使われてない予算を割り当てるアイデアが共和党から出ていたりするのだが、民主党は既に成立している打ち出の小槌のような予算から一銭(一セントと言うべきか?)たりとも出す気は無い。

アメリカでの高速旅客鉄道網で一番の問題となるのは、現在、主に貨物用になっている低速の鉄道網を活用して、高速列車を走らそうとしている事である。

旅客列車は基本的に、この鉄道網を利用して運用されている。(Amtrack)旅客列車の最高速度は時速79マイル(145キロ)で、より遅い貨物列車と上手く共存出来ている。もし、ここに高速旅客列車を走らすと、遅い貨物列車は度々通過を待つ事になり、効率が極端に落ちる。

高速旅客鉄道網が計画されている路線を所有している鉄道会社(基本的に貨物)が、既存の路線を利用する事も、又、新たな路線を敷設する事にも反対している。(鉄道会社が所有する土地が必要な場合、売却を拒否する表明している)

アメリカの場合、全体として人口密度が低い上に、自動車と高速道路の普及及び旅客機の発展で、旅客鉄道が必要なくなっている。よって、今更、新たな路線を敷設しても絶対に採算の合わない事は火を見るよりも明らかである。既存の路線は貨物を運ぶ事に集中する事で、効率化が進んでいる。

既存の路線で高速旅客鉄道網が整備されれば環境に良いとか、ヨーロッパや日本の新幹線への憧れとか、全くの思いつきで出てきたアイデアに違いない。

鉄道会社もしたたかで、予算の一部を使って調査を行っているし、今後線路の改修などにもこの予算が使われる可能性もあるが、高速旅客列車に既存の線路を開放する事は絶対に無いだろう。

つい先日もカリフォルニア州知事シュワルッツネッガー(今年で任期も終わり)が日本で新幹線の視察を行ったようだが、このような事情でアメリカでは商売にならないので、JRは変な期待をアメリカのしない方が得策だろう。

Harrisburg 債務支払い不履行:続報

2010-09-15 07:47:36 | アメリカ経済
Harrisburg の債務不履行の続報。

先月末の支払いについては保険でカバーされたらしいのだが、また9が15日に$3.29M(約3億円)の支払いが迫っている。

結局、ペンシルベニア州政府が$4.4M(約3億6千万)の繋ぎ資金を貸し付ける事で、不履行は回避される見通しになっている。州知事は、あくまでも貸し付けでベイルアウト(救済)では無いとしているが、肝心の財政再建案がまとまっていないので、今後どうなる事やら。(市長も州知事も民主党、参考までに)

市はようやく人員整理や強制無給休暇等を始めるらしいが(市営の駐車場の値上げも)、今年の赤字だけで$4.3M(約4億円)もあるので、厳しい状況が続きそうだ。ニュース等をチェックしても今後の見通しについては誰も何も言っていないので、不気味である。アメリカの地方自治体の債券市場は、$2.8T(約240兆円)あり、歯切れの悪い新聞記事を読む度に、関係者が息をのんで行方を凝視している雰囲気が、全く無関係の私にも感じられる。

市を州がという事になると、州を連邦政府がという悪循環も考えられるので、この辺で、ダメな自治体は一度ご破算にした方が解決が早い様と思う。応急措置での対応は、問題を大きくするだけだ。

Harrisburg 債務支払い不履行

2010-09-09 11:12:22 | アメリカ経済
ペンシルベニア州の州都である Harrisburg が、先月末の地方債の支払い$3.29M(約3億円)を不履行し、破産の危機に瀕している。

人口4万7千の28%が貧困レベル基準以下で、数年前に建設したゴミ再生処理場の財政的な失敗等、やや特殊な事情があるのだが、公務員の削減やその他の公的サービスを削減することをせずに、あっさりと不履行を選択している。

保険が掛けてあり、債権者は支払いを受けることが出来る様だが、今後の起債は難しくなると予想されている。

地方債については、これからどんどん不履行が増えると言う意見(代表的なのは、ウォーレン・バフェット)もあり、地方債の市場は戦々恐々のようだ。

アメリカ8月失業率 9.6%

2010-09-04 16:29:43 | アメリカ経済
昨日発表された8月の失業率は先月から0.1%増えて、9.6%。

オバマ大統領が、現在の雇用状況についてスピーチをしている。(Obama Economic Outlook

アメリカの雇用情勢について全く同じ内容を、アメリカ合衆国大統領ではなく、エコノミストがクライアントの前とか、私が友人の前でしたら、絶対に信用無くすだろうなー。(前半部分だけも聞いてみて下さい。喋っている本人も、無理矢理ポジティブに持って行こうとしているのだが、表情は暗いまま。)