あの日から5年。仙台、鹿島、特別な一戦
両チームとも、特別な思いを持ってこの一戦に臨むだろう。2011年3月11日に東日本大震災が発生。あの日から5年がたつが、ホームの仙台もアウェイの鹿島も、その年月にかかわらず、それぞれのホームタウンや、同じく自然災害が起きた全国の被災地のためにさまざまな形での支援活動をしてきた。そして、「われわれが試合で躍動する姿を見せることで、今も苦しい思いをしている方々の心を動かせるようになりたい」と仙台の渡邉 晋監督が話すように、選手たちはサッカーという競技を通じて、少しずつ復興の歩みを進めようとしている被災地の方々を支えることを、今節のユアテックスタジアム仙台でも誓ってくれるだろう。
試合そのものについていえば、今季ホームゲーム初勝利を目指す仙台と、開幕3連勝を狙う鹿島が、激突する一戦となる。特に中盤でのせめぎ合いの中で、両チームのボランチを中心としたゲームコントロールが大きな見どころになるだろう。両チームとも、チーム内でのポジション争いが激しく、そしてそれを勝ち抜いた選手たちが、相手との戦いの中で、大きな役割を果たすからだ。
鹿島は、今季から背番号10を付けるMF柴崎 岳と、MF小笠原 満男が中盤の底でゲームをコントロールする。激しいプレッシャーを掛けられても簡単にボールを取られることはなく、相手に詰められる前にスペースにパスをさばいたり、一度下がった位置から攻撃を組み立ててまた押し返したりと、柔軟な戦況判断をして相手を突き崩す。もちろん、相手ゴール近くまで自ら飛び出して決定機に絡むこともある。
彼ら2人の存在感は抜群だが、今季はMF永木 亮太やMF三竿 健斗といった積極的にボールに食らい付くボランチが新たに鹿島の一員となっており、激しいポジション争いの中でチームの幹が太くなっている。この試合でも中盤の安定感に注目したい。
対する仙台は、この2試合でボランチのポジションに変化があった。開幕戦ではキャプテンのMF富田 晋伍とMF三田 啓貴がコンビを組み、三田が契約の関係上出られなかった前節のFC東京戦は、富田とMF藤村 慶太が先発した。ボール奪取能力に優れる富田は、左利きでパスとドリブルのセンスに優れる三田や、中、長距離のパスを得意とする藤村といった攻撃面が持ち味の選手と組むことが多いが、「互いにバランスを見ながら前に出ていく」(富田)と攻守の役割は状況により変わる。前節は富田が守備を見る、藤村が思い切って前に出る、という形を基本としていたが、場合によって富田が相手ゴール前まで飛び出していた。「あそこで決められるようにならなければ」と富田は反省していたが、攻守ともに相手にとって読みにくい存在となるために、どの組み合わせでも連係を洗練させようとしている。
彼ら3人だけではない。豊富な運動量を攻守に生かすMFキム ミンテや、視野が広く正確なパスを出すMF差波 優人といった若手も、3月7日の練習試合などでアピールし、先発の座を目指す。この競争を経てピッチに立つ選手たちが、鹿島相手にどのように持ち味を発揮するかが楽しみだ。
こうして試合の見どころを考えられることも、今なお復興の途上にある人々の希望になりうるサッカークラブが在るからこそ。今までも、これからも。私たちも、そのありがたさをあらためて感じながら、スタジアムに向かいたい。
[ 文:板垣 晴朗 ]
チンチロリン
「両チームとも、特別な思いを持ってこの一戦に臨むだろう」と綴るJリーグ公式のプレビューである。
被災地である両チームが震災日前後に対戦するカードを組み、記憶から消させぬようにすることは悪いことではない。
とはいえ、被災した当事者の気持ちは良いものではなかろう。
鹿島というクラブは、被災により大打撃に陥り、カルロンはフィットせぬままにクラブを去り、フェリペ・ガブリエルも前年の調子を戻すことはなかった。
チームの中心選手であった野沢が神戸に移籍した理由の一つにも数えられよう。
長らくリーグ優勝から遠ざかっているのも、被災の爪痕と考える日もある。
それを払拭するためにも、この試合勝利で飾る必要がある。
強い気持ちで挑み、開幕三連勝を成し遂げようではないか。
チンチロリン
両チームとも、特別な思いを持ってこの一戦に臨むだろう。2011年3月11日に東日本大震災が発生。あの日から5年がたつが、ホームの仙台もアウェイの鹿島も、その年月にかかわらず、それぞれのホームタウンや、同じく自然災害が起きた全国の被災地のためにさまざまな形での支援活動をしてきた。そして、「われわれが試合で躍動する姿を見せることで、今も苦しい思いをしている方々の心を動かせるようになりたい」と仙台の渡邉 晋監督が話すように、選手たちはサッカーという競技を通じて、少しずつ復興の歩みを進めようとしている被災地の方々を支えることを、今節のユアテックスタジアム仙台でも誓ってくれるだろう。
試合そのものについていえば、今季ホームゲーム初勝利を目指す仙台と、開幕3連勝を狙う鹿島が、激突する一戦となる。特に中盤でのせめぎ合いの中で、両チームのボランチを中心としたゲームコントロールが大きな見どころになるだろう。両チームとも、チーム内でのポジション争いが激しく、そしてそれを勝ち抜いた選手たちが、相手との戦いの中で、大きな役割を果たすからだ。
鹿島は、今季から背番号10を付けるMF柴崎 岳と、MF小笠原 満男が中盤の底でゲームをコントロールする。激しいプレッシャーを掛けられても簡単にボールを取られることはなく、相手に詰められる前にスペースにパスをさばいたり、一度下がった位置から攻撃を組み立ててまた押し返したりと、柔軟な戦況判断をして相手を突き崩す。もちろん、相手ゴール近くまで自ら飛び出して決定機に絡むこともある。
彼ら2人の存在感は抜群だが、今季はMF永木 亮太やMF三竿 健斗といった積極的にボールに食らい付くボランチが新たに鹿島の一員となっており、激しいポジション争いの中でチームの幹が太くなっている。この試合でも中盤の安定感に注目したい。
対する仙台は、この2試合でボランチのポジションに変化があった。開幕戦ではキャプテンのMF富田 晋伍とMF三田 啓貴がコンビを組み、三田が契約の関係上出られなかった前節のFC東京戦は、富田とMF藤村 慶太が先発した。ボール奪取能力に優れる富田は、左利きでパスとドリブルのセンスに優れる三田や、中、長距離のパスを得意とする藤村といった攻撃面が持ち味の選手と組むことが多いが、「互いにバランスを見ながら前に出ていく」(富田)と攻守の役割は状況により変わる。前節は富田が守備を見る、藤村が思い切って前に出る、という形を基本としていたが、場合によって富田が相手ゴール前まで飛び出していた。「あそこで決められるようにならなければ」と富田は反省していたが、攻守ともに相手にとって読みにくい存在となるために、どの組み合わせでも連係を洗練させようとしている。
彼ら3人だけではない。豊富な運動量を攻守に生かすMFキム ミンテや、視野が広く正確なパスを出すMF差波 優人といった若手も、3月7日の練習試合などでアピールし、先発の座を目指す。この競争を経てピッチに立つ選手たちが、鹿島相手にどのように持ち味を発揮するかが楽しみだ。
こうして試合の見どころを考えられることも、今なお復興の途上にある人々の希望になりうるサッカークラブが在るからこそ。今までも、これからも。私たちも、そのありがたさをあらためて感じながら、スタジアムに向かいたい。
[ 文:板垣 晴朗 ]
チンチロリン
「両チームとも、特別な思いを持ってこの一戦に臨むだろう」と綴るJリーグ公式のプレビューである。
被災地である両チームが震災日前後に対戦するカードを組み、記憶から消させぬようにすることは悪いことではない。
とはいえ、被災した当事者の気持ちは良いものではなかろう。
鹿島というクラブは、被災により大打撃に陥り、カルロンはフィットせぬままにクラブを去り、フェリペ・ガブリエルも前年の調子を戻すことはなかった。
チームの中心選手であった野沢が神戸に移籍した理由の一つにも数えられよう。
長らくリーグ優勝から遠ざかっているのも、被災の爪痕と考える日もある。
それを払拭するためにも、この試合勝利で飾る必要がある。
強い気持ちで挑み、開幕三連勝を成し遂げようではないか。
チンチロリン