会計スキル・USCPA

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おむすび通貨は地方を救うか 地域通貨

2010-05-15 02:38:41 | 金融
地域通貨なんぞは、どっか、ひだり系の人達の夢想なんじゃないか、という感じがあって、かといって、なんか可能性があるはずだ、という微妙なところで、マイナーなテーマではあるんですが、ずっと関心があるんですね。

地域通貨とポジティブ経済

で、おもろい記事をみつけまして、
愛知県で新しい地域通貨を立ち上げたそうで、その名も『おむすび通貨』。

世界初!愛知県豊田市で誕生したコメ兌換通貨の凄味~「腐るおカネ化」で流通の加速を目指す

通貨単位は“むすび”といい、1むすびは無農薬・有機栽培・天日乾燥の玄米0.5合(おにぎり1個分)と交換できる。この通貨を幅広く流通させることで、荒廃した農山村の振興を図ろうというのが目的だ。さらに、コメとの交換以外でも、飲食店や雑貨屋など20店舗以上ある協力店舗で代金を支払う際にも利用できる。通常の通貨との交換レートが決まっていないため、販売者と消費者が商品やサービスの価値がいかほどなのか互いに決める形だ。

チョーマイナーなハナシではあるんですが、どこが面白いか。

1.玄米との交換が保証されている

もっと新米10キロとかの方が面白いとおもいますが、まあ、モノの価値としっかりリンクしているんですね。通貨の流通には『使いでがある』ってことが重要なんで。米ドルが基軸通貨として世界で認められているのも、使いでがあるからですな。石油や一次産品の取引に米ドルが使われる→米ドルは使える→ドルを価値の中心において他の通貨の価値もきめる→米ドルならどこでも受けてもらえる、というハナシで、米国はニクソンがドルと金との交換を停止した、その裏側で、石油取引にドルを使わせるよう、戦略的に動いていたのでした。金本位制から石油本位制にってわけで。


でも、玄米ってのはどうかな。もうちょっと、普通の主婦が毎日買うようなもの、白米とかの方が良かったと思いますがね。

モノとリンクしているのは、インフレヘッジにもなるんですな。まあ、今は関係ないか。

2.減価する価値

このアイディアは重要っぽいですな。

だが、それだけではない。じつはこのおむすび通貨、これまでの通貨の概念自体を覆すことにもチャレンジしている。それは通貨の“腐るおカネ化”だ。普通のおカネならば、時間が経てば金利分だけ価値が増えるところを、逆に減価させようというのだ。

 現在は作付けした年内の間にコメと交換しなければならないが、ゆくゆくは交換可能期間を延ばす予定だという。古米になれば価値が下がるので、それを価値の担保としているおむすび通貨も、自動的に減価するというわけだ。そうすることで、価値が下がる前に早く使いたくなり、流通速度が上がる。どこか一部の人に留まることなく、社会を循環していくと考えているのだ。


なるへそ。玄米の価値とともに通貨の価値も下がってゆく。生ものにリンクさせるとそういうメリットがあるんですな(保有してる人にはデメリットですが)。通貨の価値が時間ともに下がるんなら、持ってる人はできるだけ早く使おうとする→貨幣の流通速度が上がる→景気が拡大できる(かも)。

これ、地域的なデフレ対策のアイディアでもあるという見方もできて、池田先生によると(教祖様の方ではありません)、

勝間和代氏の落第答案 池田信夫blog PART2


基本的なことだが、マネーストック=マネタリーベース×貨幣乗数である。日銀の発行した通貨が民間で3回使われると、マネーストックはマネタリーベースの3倍になるわけだ。他方、資金需要がなくて民間で金が使われないと、マネタリーベースを増やしてもマネーストックは増えない。事実、前の記事でも紹介したように、日銀が激しく量的緩和(マネタリーベースの増加)を行なった2001~6年にも、マネーストック(図ではマネーサプライ)はほとんど増えなかった。

つまり日銀が金融政策で市場や銀行にお金を投入しても、民間がお金を使わないんで、単純な『金を刷れ』というデフレ対策の主張やら日銀悪玉論はアカンということで。

この通貨の価値が下がって流通速度を上げるというのは、民間にお金を使わせる=貨幣乗数を上げる→マネーストックを増やすということになるんじゃないかって思うんですな。

そこで思い出すのが、この本です。

まあ、内容は題名の通りで、関心のある人が読めば良いような感じで、前半はちょっとつらいんですが、最後の方になると俄然面白くなって来まして、

金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った (5次元文庫)
安部 芳裕
徳間書店


中身は、太っ腹、ネットで公開もされてて、

ここですな、

ヴェルグルの労働証明書

ゲゼルの自由貨幣理論を実践し、大成功をおさめたのが、オーストリア・チロル地方のヴェルグルです。

世界大恐慌の影響は、このヨーロッパの小さな田舎町にも波及していました。当時、人口わずか4300人のこの街には500人の失業者と1000人の失業予備軍がいました。通貨が貯め込まれ、循環が滞っていることが不景気の最大の問題だと考えた当時の町長、ミヒャエル・ウンターグッゲンベルガーは、自由貨幣の発行を実践してみることを決意し、1932年7月の町議会でスタンプ通貨の発行を決議しました。

ウンターグッゲンベルガー自身が地域の貯蓄銀行から32000オーストリア・シリングを借り入れ、それをそのまま預金として預け、それを担保として32000オーストリア・シリングに相当する「労働証明書」という地域通貨を発行しました。

この労働証明書は、1シリング、5シリング、10シリングの三種類からなり、裏面には「諸君、貯め込まれて循環しない貨幣は、世界を大きな危機、そして人類を貧困に陥れた。経済において恐ろしい世界の没落が始まっている。いまこそはっきりとした認識と敢然とした行動で経済機構の凋落を避けなければならない。そうすれば戦争や経済の荒廃を免れ、人類は救済されるだろう。人間は自分がつくりだした労働を交換することで生活している。緩慢にしか循環しないお金が、その労働の交換の大部分を妨げ、何万という労働しようとしている人々の経済生活の空間を失わせているのだ。労働の交換を高めて、そこから疎外された人々をもう一度呼び戻さなければならない。この目的のために、ヴェルグル町の『労働証明書』はつくられた。困窮を癒し、労働とパンを与えよ」と書いてありました。

そして、町が道路整備などの緊急失業者対策事業を起こし、失業者に職を与え、その労働の対価として「労働証明書」という紙幣を与えました。

労働証明書は、月初めにその額面の1%のスタンプ(印紙)を貼らないと使えない仕組みになっていました。つまり、言い換えれば月初めごとにその額面の価値の1%を失ってゆくのです。ですから手元にずっと持っていてもそれだけ損するため、誰もができるだけ早くこのお金を使おうとしました。この「老化するお金」が消費を促進することになり、経済を活性化させたのです。

当初発行した32000シリングに相当する「労働証明書」は、次第に必要以上に多いことがわかり、町に税金として戻ってきた時に、そのうちの3分の1だけが再発行されることになりました。「労働証明書」が流通していた13.5ヵ月の間に流通していた量は平均5490シリング相当に過ぎず、住民一人あたりでは、1.3シリング相当に過ぎません。しかしながら、この「労働証明書」は週平均8回も所有者を変えており、13.5ヵ月の間に平均464回循環し、254万7360シリングに相当する経済活動がおこなわれました。これは通常のオーストリア・シリングに比べて、およそ14倍の流通速度です。回転することで、お金は何倍もの経済効果を生み出すのです。

こうしてヴェルグルはオーストリア初の完全雇用を達成した町になりました。「労働証明書」は公務員の給与や銀行の支払いにも使われ、町中が整備され、上下水道も完備され、ほとんどの家が修繕され、町を取り巻く森も植樹され、税金もすみやかに支払われたのです。

ヴェルグルの成功を目の当たりにして多くの都市はこの制度を取り入れようとしました。1933年6月までに200以上の都市で導入が検討されたのです。しかし、オーストリアの中央銀行によって「国家の通貨システムを乱す」として禁止通達を出され、1933年11月に廃止に追い込まれました。


まあ、アタシは確認してませんが、本当のハナシなら面白い。
おむすびの皆さんも、これ読んでやってるんカナ。

おむすびのハナシに戻ると、


これは「普通のおカネは利息の支払いと金利の受け取りが起こり、貧しい人から富める人のところにおカネが流れて滞留し、富の偏在を招く」(吉田氏)ことに対する挑戦でもある。

こういうのは、がっかりしますな。
フツーの人はついていけない。
イロイロ突っ込むと怒られそうな感じもしてマイナス効果が大きい。

まあ、それでも流行ると面白いんですが、

おむすび通貨が資金決済法の適用にあたるかどうか検討している東海財務局は、コメを担保にした通貨というのも、腐るおカネというのも「今まで見たことがない」(担当者)と語る。

流行ったらつぶされそうですな。





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