会計スキル・USCPA

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自殺大国日本2

2008-12-07 11:45:05 | マクロ経済
日本の自殺率が先進国では異様に高くて、それがH10年から急増している点について。鹿児島銀のネットIRをながめていてちょっと気になったので、もう少し調べました。

H9年なり10年、橋本政権の時代に何があったか、ということなんですな。

元日銀の鈴木さんによると、

金融危機を招いたのは、橋本政権の失政だ (『エコノミスト』原稿1998年3月3日号)

『日本の危機は、「政策不況」。あるいはそういう政策の失敗をした総理が作った「橋竜不況」です。「政策不況」といったときに意味が2つあって、1つは9兆円の国民負担増加と3兆円の公共投資カット、全体で12兆円の超デフレ予算を97年度に組んだ。そのことによる不況という意味。日本経済は、95年度2.8%成長、96年度3.2%成長ということでようやく設備投資も上向いて回復しかかっていたのに、この12兆円の超デフレ予算で政策的に景気を叩きつぶして97年度はゼロ成長ということになってしまった』

これですね。事後の処理もまずく、日本が不況に陥った、また、不況→円安がアジア経済に波及し国際的な通貨危機まで招いてしまった、とか。

ちかんで逮捕された(濡れ衣かどうか知りませんが)植草さんは、13兆円のデフレ策とおっしゃってますな。

『私は麻生氏も出席した研究会で、「97年度に橋本政権が9兆円の国民負担増加策と4兆円の公共事業削減を実施し、13兆円のデフレ策を実行した」と説明した』

確かにあの頃から世の中変わってしまった、と言えるかも知れませんね。自民党をぶっ壊す、といったのは小泉さんですが、その前に、日本はぶっ壊れていて、小泉さんは生き残りの掃討、殲滅をやってしまった、って感じですか。あるいは、小泉政権的には橋本失政の後処理(不況で拡大した不良債権処理など)をやっただけだ、ということかも知れませんが。

こうしてみると、歴史に特筆されるは小泉政権ではなく、橋本政権じゃないですかね。まあ、クルーグマンがわざわざ例に引いてくれているくらいですからなあ。

このブログは結構良い感じでして、問題意識ドンピシャですな。

『私もそうだったが、しばしば「小泉政権以降の」政策路線が「貧困と格差」を拡大したと言ってしまいがちだが、そうなると当然次のような問題が生じる。「小泉以降」ということは、「小泉以前」は良かったのか?と。同時代人のリアルタイムの感覚からすると、小泉政権時代に雇用待遇差別や社会保障の脆弱さが顕在化したのは確かだが、今日冷静に振り返るならば、企業のリストラによる雇用待遇全般の低下や非正規雇用の拡大はすでに1990年代に出そろっていたし、「就職氷河期」のピークだった1990年代末はまだ小泉政権ではなかった。』

『小泉純一郎個人のエキセントリックなパフォーマンスに惑わされて、あたかも小泉政権が「突然変異」だったように錯覚しがちだが、実は「構造改革」というのは、少なくとも1980年代半ばからの長期的な政策潮流の帰結であったことを再認識しなければならない。』

フムフム。そして、その次。ここまで書いてもらうと、ちょっとしびれる感じです。

『忘れてはならないのは1980年代から1990年代にかけて、コミュニズム系ではないリベラル系の左翼はむしろ行政不信を前提として規制緩和や行政の縮小を支持したことで、「小さな政府」論は古典的なレッセ=フェールへの回帰という点で本質的に保守的であったにもかかわらず、大衆には「革新」として受け取られたという点である。そして現在も「税金の無駄遣いを減らして」という言説への支持を通して、「小さな政府」は延命を続けている。』

これですな。さっき引用した鈴木さんも基本的に『小さな政府を目指す』とおっしゃっています。財政支出の急激な削減が今日の国民的な困難を招いたという事実があるにもかかわらず、その不満が財政支出削減支持に向かうというヘンな流れになっているわけですね。無駄を減らすことや官僚の専横をとめること、と全体の財政支出規模をどうするかという点が区別されていないからですね。

もともと、日本の政府支出のGDP比はそんなに高くないというハナシがある一方で、

地方の雇用を、公共事業と年金などの社会保障給付が支えてきていて、年々、その依存度が高まっていたということはあるんですね。ちょっと読みずらいですが、最初の要約と最後の結論だけでも読んでみていただくと良いと思います。

つまり、緊縮財政というのは、地方の雇用減少に直結する仕組みになっているわけですな。ぎりぎり、かつかつで地方では生活できない。工場ができたと思ったら非正規ですぐにクビになる。都市に出るしかないが、この不況では・・・。

不況下に財政をどうするかということ、つまり緊縮財政なり財政出動が、日本では単にマクロ的な経済成長問題ではないという現実があるってことですね。

だから、鹿児島銀行の取り組みが光ります。財政支出の縮小はちょっと置いとけというのが多分正論で、使い道をきちんとするために知恵を絞るべきですな。

さっきのレポートでは、公共事業による地方の生産性向上効果が落ちていることを指摘していますし、

不況対策でドーロ予算を取ったって人件費なり雇用に回る比率はかなり小さくなるわけで、

緊急対応としてはちょっと違うやろ、って感じです。まあ、一兆円とか2兆円とかいう議論の規模もどうですかね。トヨタの利益の減額が一兆円という時代に、政府が一兆円ですかね。

もっと希望の持てる議論をしてもらいたいですな。