さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【読書録】13歳からの地政学

2022-06-20 22:38:17 | 読書録

田中孝幸 / 東洋経済新報社

この本はとても素敵だ。想像していたより内容が濃い。大人向けの本って、多少論理の飛躍があったとしても読者が自らの経験や知識で自然に補っていく要素があると思うが、子供向けにはそうはいかない。子供にもわかるようにというのは、言葉が易しいだけではない。「こうだからこう」という論法を、隙間なく埋めていかなければ子供は納得しないだろうから、筆者はかえって大変なのではないかと思った。

「遠交近攻」・・昔の中国の言葉で、「遠くと交わって仲良くした上で近くを攻める、ひいては攻められないように準備する」という意味だが、今の日本を取り巻く環境は、その言い出しっぺの国に対してこれを意識しているわけだ。だが米国のような遠くの国と仲良くするのは良いとして、「一番大事なのは口も利きたくないほど嫌な敵を作らないことだ」という話・・人間関係に当てはめれば常識だと思ってしまうだろうが、今の日本で果たしてこれができているかは微妙なところだな。

核兵器は今や海中に隠すもの・・というのは目から鱗だ。だからこそ深くて安全な海を誰かさんが欲しがるのだ。海を平面的に捉えていた私にとっては盲点だったな。立体的に捉えれば、南シナ海は深さ的にちょうど良いのだそうな・・・。

その他、アフリカが貧しい理由(お金が欧米に大量に流れている、国民意識が希薄等)とか、多民族で小規模国家でもシンガポールのように同じ国民としての意識を高めていけば豊かになれる等・・・世界地理好きだったのに、そういう観点で学んでこなかったなと反省。

国民の英語力が高いのは圧倒的に小国が多い・・というランキングの中で、日本は78位だというには愕然とした。日本人は日本国内の商売だけでやってこれてしまったからという要素が強いようだ。大国ほど内向きになり、自分の国の理屈を他国に押し付けて失敗したり、いざというときの理にかなった良い判断ができなくなる(最悪戦争を起こしてしまったりする)傾向が出てくるという。日本は小国なのに半ば大国病に罹っているようなものなのだな。

等々・・大人向けの本には敢えて書かないようなことまで触れているところが素晴らしいなぁと思った。


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