さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【DVD鑑賞録】ドニゼッティ/歌劇 《ロベルト・デヴリュー》

2018-12-25 23:52:02 | オペラ・バレエ鑑賞
アンナ・ボレーナを見た時もそう思ったが、ドニゼッティの作品は、さすがに王朝モノだと格調が高く、見ごたえがあるなぁ。

偉大なる英国女王エリザベス1世はここまで愚かな女性ではなかったと思うので、あくまでも作品として楽しむことにするが、歌手陣はスーツ姿で現代風の演出なのに、あまり違和感を感じないのは、やはり歌手陣の気高さや力量によるものであろう。



グルベローヴァの歌声は格調高く、どんなに現代風でも、どんなに愚かな女の役でも、れっきとした女王さまに見える。

そのグルベローヴァが・・ここまでやる?! と思ったのが最後の演出。自分がこのまま支配者でいたら臣下たちを破滅させてしまうと悟り、王権のしるしをスコットランド王ジャーコモ(ジェームズ)に譲るのだが、その際にかつらまで脱いでしまうのだ。

ふさふさした金髪のかつらを脱いだグルベローヴァの頭には、ところどころ地肌の見えるまばらな白髪しかないる。かったのだ。大ショックではあったが、堂々としているグルベローヴァを見ていると、逆にそれが年輪を重ねてきた自信にも見える。珠玉の声を持つ彼女には、もはや髪の毛なんて、どうでもいいんだね。

そして王権を受け取ったジャーコモの顔の卑屈なこと・・彼が歴史上、偉大な王にはなれなかったことは皆が知るとおりであるが、まさにそれを想起させるような下劣な笑顔で本オペラは幕を閉じるのだ。

・・・・・

さて、ロベルト・デヴリューって誰なのかというと、エリザベス1世の最後の寵臣である。史実では、1596年のカディス遠征で軍事的英雄となったが、宮廷内でロバート・セシルと対立。1599年にアイルランド反乱鎮圧に失敗したことで失脚。復権を期して1601年にセシル排除を狙ったクーデタを起こすも失敗し、大逆罪で有罪となり、処刑されている。

しかし本オペラでは政治的な要素はほとんど描かれず、処刑されることになっているロベルトが、女王の寵愛をもって許されるかどうか瀬戸際のタイミングで、ノッティンガム公爵夫人を密会していたことが決め手となって、裏切られた女王の怒りを買って処刑されたことになっている。当のロベルトは数々の浮気の結果、このオペラの女王と同名である現イギリス女王の遠い祖先とさえ言われる人物らしく、歴史の流れの皮肉というか、不可思議さというか、なんとも言えないロマンに突き動かされる気がする。

ロベルトといえば・・・そういえば昔、エリザベスという名の映画を見た。それは若い頃のエリザベスだったが、エリザベスが愛した寵臣がロバートという名前だったな・・・と思って、サイト検索で調べてみた。その寵臣はロバート・ダドリーという名だった。彼は内緒で結婚して子供までいた事がバレ、女王の怒りを買うのであった。映画では、さらにロバートは自分の意に反して陰謀に加担する結果となり、エリザベスはいましめのためにロバートを生かしておくことにするが、きっぱりと絶縁したのであった。その陰謀加担の話はサイト検索をしても見つけられず、史実なのかどうかわからない。

で、ロベルト・デヴリューっていう名を聞いた時、真っ先に思い出したのが、その映画「エリザベス」に出ていたロバートだったのだが、そっちはロバート・ダドリーだし、若い頃の寵臣だから別人だ。じゃぁ、全く縁がないのかというと、実はロベルト・デヴリュー(ロバート・デヴァルー)の本当の父親はロバート・ダドリーだという説があるのだという。なぜならロベルト・デヴリューの母は、ロバート・ダドリーと再婚しているし、ロベルト・デヴリューは継父ロバート・ダドリーに連れられて宮廷デビューし、女王に近づいている。しかもその風貌は若い頃のロバート・ダドリーに似ていたという・・・。実の親子ではないにしても近いねぇ・・・。

・・・ということで、オペラとは関係ないところでグダグダと書いたのだが、どうも歴史が背景になっているオペラを見ると、こういうところを調べずにはいられなくなって、オペラそのものにはなかなか集中できない私なのであった。

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