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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
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カラス・アッソルータ

2009年05月03日 22時33分16秒 | MOVIE
 BSで録りためてあったマリア・カラスの生涯をドキュメントした90分の番組(フランス製)。マリア・カラスといえば、以前にもナットキングコールのところにも書いたけれど子供の頃、兄が聴いていたビートルズのLP盤の袋にカタログみたい印刷してあったジャケットだ。確か片面はたいていクラシックで、そこには常連の如くマリア・カラスの横顔が鎮座していた(アップした写真)。なのでマリア・カラスといえば、超然として、なにやら思索的な雰囲気を漂わせたこの顔のイメージなのである。もっとも、私は元々オペラが苦手だったし、私がクラシックに入れ込んでいた80年代といえば、マリア・カラスはスキャンダルの末に、かつての栄光を取り戻させないまま没落していった人みたいな、どちらかといえばネガティブなイメージもあったから、マリア・カラスといってもほとんど聴いたこともないままなのである。

 さて、プログラムの中身だが、イタリアを制覇しつつ、巨匠とともに世界を制覇するサクセス・ストーリー前半にちりばめられた、例えば若い頃のカラスは体重が100Kgオーバーで、40kgもダイエットしてあの容姿になったとか、母親と金をしつこく無心されて絶縁したとか、いかにも波瀾万丈な人生だったことがよく伝わってくるが、やはり見所は後半、豪勢なオナシスとクルージングに始まる恋愛あたりから、まるで奈落の底に落ちるように全てを失ってしまう後半部分だろうと思う。カラスの晩年はしばらく前に読んだ「巨匠たちのラストコンサート」(中川右介著)でも述べられていたが、ジタバタともがきつつも、結局は「人も音楽も全てを失ってしまう」この人の晩年は絵に描いたように悲惨で、この番組ではそのあたりを割と容赦なくドキュメントしている。なんというか観ていて、「あぁ、いかにも大昔の芸人らしい生き様だよな」と思わせた。
 それにしても、このドキュメントの随所から聴こえてくるカラスの声のなんと美しいことか。彼女が歌ったオペラはイタリア物ばかりなのだが、「ノルマ」とか聴いてみたくたった。最近やけにお洒落なジャケに彩られ、いかにも一過性な雰囲気を漂わせた、ベスト・アルバムの類にはどうでもいいが(笑)、なにかのオペラのワンセットくらい購入してみようか。

 ちなみに、私にはよく分からないが、おそらく非常に珍しい映像が沢山使われていたのだろうと思う。ヴィスコンティがカラスの提灯持ちをしているインタビューとか、オードリー・ヘップバーンと同じフレームにおさまったパーティーの風景だとか、音だけだが「ノルマ」の音源を時代別につないでみせるところ、ジュリアード音楽院で生徒の前で実際に歌ってみせる授業のところなども、なかなかおもしろかった。もうすこし歌っている姿が観れたらもっと良かったが、なにしろ50年代に全盛期を迎えた人だけに、そうそう映像もないのだろうな。
コメント
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