写経の思い出その2です。
ちょっと恥ずかしいですが、中身は乏しいわたしのお財布を、お見せします。 お金がなくても、必ずいつも真ん中に入っているもの。
取り出してみると、こんなものです。 もうボロボロになりかけています。でも、これは外側だけ。
さらに中身を取り出し、広げると、ほら!
これは、平成12年11月4日に、 トヨコさんという82歳のおばあさんが書かれたものです。
トヨコさんは、一人で暮らしていました。 そして、珍しい切手や外国のお金などを子どもたちに見せてあげてくださいといって、たくさん寄付してくださいました。 そのお礼におうちへ伺ったとき、いただいたのがこの般若心経です。
トヨコさんは、 小学3年生までしか学校に行っていません。 トヨコさんは学校が好きでとても行きたかったのですが、遅くに生まれた妹の世話をしなければならなかったからです。 さらに、小学校を卒業すると、大阪へ働きに出ました。そこでご主人と出会い、結婚しました。 やさしいご主人に漢字などを教えてもらったそうです。 そのご主人に先立たれ、子どもさんも独立して一人暮らしをするようになりました。でも、だんだん年を取り、自分がいつ死んでもよいように身辺整理をはじめたのだそうです。 自分は勉強したくてもできなかったけれど、今の子どもたちにはがんばって勉強して欲しい、だから、勉強に役立ちそうな物を学校に寄付したい、そう言われました。
トヨコさんの家の中はさっぱりと片付いて、庭も草一本もなく、きれいな花が咲いていました。
そんなトヨコさんの日課は、1日10枚の写経なのだそうです。 そして、「般若心経は、身につけていたらきっとあなたを守ってくれるから。」と言って1枚を下さったのです。勉強したくともできなかったトヨコさんが大人になって書けるようになった般若心経ー。わたしはありがたくちょうだいしました。 わたしは無信心者で、あまり神や仏にお願いはしないほうなのですが、人の真心は信じます。
以来、わたしは5,6年生の書写の時間には必ずこの写経を見せ、トヨコさんの話をすることにしました。勉強したくてもできなかった人がいること、そしていつまでも向上心をもって学び続けていること、意欲と努力があればこんなにすばらしい字が書けるようになること、1枚の般若心経には、たくさん伝えることがありました。
トヨコさん、お元気でおられるのかなあ。お会いしなくなって7年がたちます。
数年前まで年賀状来てたけど、数年前からは、こちらは出してるのに、返事がこんかい。ついに死んだんやろか??
でも、今でも海外旅行のときは必ず持って行っとるよ。
じーちゃんの強い念が守ってくれてる気がする。
あたこも同じようなもの持ってたとは驚きやわ!!
昔は満足に教育を受けられなかった方が多かったのですね。
境遇のせいにせず勉強を続けて、一本筋の通った生き方が立派だと思いました。
人の真心は信じます。
が、ばしっと決まりました。
暖かいお話で、安らかに眠れそうです。
では、おやすみなさい。