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とつぜん上方落語 第4回 くっしゃみ講釈

 小生はNHKの大河ドラマはあまり観ない。でも、今年の「真田丸」はおもしろいから観ている。三谷幸喜の脚本がおもしろいのだろう。「真田丸」いちおう主人公は真田信繁だが、群像劇といっていい。三谷幸喜はこういう群像劇を創らせるとたいへんうまい。ただし「ギャラクシー街道」での大失敗で判ったのだがSFはまったくダメ。
 それはさておき、「真田丸」はオヤジ、おじさんがおもしろい。まず、なんといっても真田昌幸の草刈正雄。これまで真田昌幸といえば片岡千恵蔵、丹波哲郎といった重い人たちが演じるイメージがあるが、軽い草刈正雄が演じると、たいへんにキャラの立った真田昌幸となった。
 それから徳川家重臣の二人の本多がおもしろい。本多正信。近藤正臣が演じているのだが、家康の知恵袋で、酢でもコンニャクでもいかん老臣ぶりがおもしろい。もう一人の本多、本多忠勝。藤岡弘、がアツク演じている。本多平八郎忠勝。徳川家きっての猛将。57度の合戦にでながらかすり傷ひとつ負ったことがない。こんな猛将をアツイ藤岡が演じている。ぴったりの適役というほかない。
 この本多忠勝、拙作「キヨモリの鍵」にも出演してもらった。この作品の忠勝はトクガワ・ミナモト連合軍の機甲龍機兵オダイバ・ガンダムの操縦者だ。
 上方落語にも本多忠勝が出てくるのがある。「くっしゃみ講釈」である。界隈きっての小町娘、小間物屋のおもやんとの恋の語らいをじゃまされた主人公。邪魔した講釈師後藤一山に復讐を算段する。講釈場で胡椒の粉をくすべて、くっしゃみさせて講釈できんようにしてやろうという計画だ。胡椒の粉を買いに横町の八百屋へ行ってのぞきからくりの「八百屋お七」を「ホェ~イ小伝馬町より引き出され」と一段そっくり語って、胡椒の粉の代わりにとんがらしの粉を買ってくる。
 で、講釈場。このとき読み上げられたのは「難波戦記」大坂夏の陣(冬の陣やったかな)の講釈。
 大坂城中、御上段の間には内大臣秀頼公。おん左にはご母堂淀殿。軍師の真田左衛門尉幸村、四天王の面々には後藤又兵衛基次、長曽我部宮内少輔元親。木村長門守重成。このへんから、とんがらしの粉を火鉢の火でくすべだす。
 先手の大将、その日のいでたちいかにと見てやれば、黒皮おどしの大鎧、白檀磨きの篭手脛当て、鹿の角前立てうったる五枚シコロの兜をいただき、へー、へーくしょん。
 城中目がけて乗り込み来たりしが、天地も轟く大音声、は~くしょん。やあやあわれこそは、駿、遠、三の三カ国において、さる者ありと知られたる、へーくしょん、本多平八郎忠勝とはわれのことなり。はーはーはーくしょん。われと思わん者は、いざ尋常に勝負勝負。はーくしょんへーくしょん。
 と、ここに本多忠勝がでてくるわけ。この噺を聞くたびに思うのだが、このころヨーロッパでは胡椒はたいへんな貴重品。こっちで横町の八百屋で売ってて、講釈の邪魔すんのに使ってた。西洋と東洋の違いだな。 
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