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ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります


監督 リチャード・ロンクレイン
出演 モーガン・フリーマン、ダイアン・キートン、シンシア・ニクソン

 カメラをローアングルで構えて撮って、モーガン・フリーマンを笠智衆にダイアン・キートンを東山千栄子に替えたら、そのまま小津安二郎映画になるんではないか。そんな映画であった。エンタメ目いっぱい派手な映像せかせかとしたストーリーといった「ハリウッド」映画ではない「アメリカ」映画を鑑賞する喜びを味わわせてくれた。そんな映画であった。
 場所はニューヨーク。登場人物は二人と1匹。画家のアレックスが犬のドロシーと散歩から帰ってくる。アレックスが妻のルースと二人と1匹で住む部屋は5階。このアパートにはエレベーターがない。年老いたアレックスはしんどそうに階段を上がる。老犬のドロシーもしんどそう。
 アレックスたち夫婦は40年この部屋で暮らしている。眺めもいいし大変気に入っている。しかし、老人のアレックスにとって、5階までの上り下りはさすがにきつい。いやがるアレックスを説得してルースは引っ越しを決断。さいわい姪のリリーはやり手の不動産屋。かくして二人は新居探し。それと並行して自宅を売る算段を始める。そうこうしてるうちに橋の上でタンクローリーが立ち往生、自爆テロかとニューヨーク中大騒ぎ大渋滞。愛犬ドロシーが病気入院手術とあいなった。
 と、まあこんな話だが、なんといってもモーガン・フリーマンとダイアン・キートンの二人がうまい。部屋を売ることをめぐって口ケンカはするが、長年連れ添った夫婦でなければ醸し出せない「空気」が二人に間に漂う。これは、もう、フリーマン+キートンの円熟の演技のなせるワザとしかいいようがない。別になんということもないお話ではあるが、非常に良い後味の映画であった。ドロシーも歩けるようになったし。え、二人は引っ越したかって。そんなことはいえない。どうぞ映画を観てほしい。
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