トシの旅

小さな旅で学んだことや感じたことを、
まとめるつもりで綴っています。

やましろ狸が出迎える駅、JR阿波川口駅

2019年01月11日 | 日記

JR土讃線の阿波川口駅の駅舎です。阿波川口駅は、三好市山城町大川持にあります。駅舎の正面にいる大きな狸は「汽車狸(きしゃだぬき)」。土讃線を利用する乗客をいつも出迎えています。JR四国と連携し、地元の「やましろ狸な会」が、駅舎を巨大な狸に見立てて模様替えしたもので、平成29(2017)年11月にお披露目されました。この日は、この狸に会うために、阿波川口駅まで行ってきました。

JR阿波川口駅は、JR阿波池田駅から高知方面に向かって3つ目の駅でした。吉野川がつくった渓谷の大歩危・小歩危(おおぼけ・こぼけ)の手前にある駅です。阿波池田駅から高知行きの普通列車で出発しました。

2面2線のホームが見えます。阿波池田駅から15分ぐらいで、阿波川口駅に着きました。下車したのは、下校中の高校生の他には私を含めて2名。下車すると、列車はすぐに出発して行きました。この駅の1日平均の乗車人員は、平成26(2014)年には65名だったそうです。

阿波川口駅は三好市山城町大川持にあります。三好市は、平成18(2006)年に、かつての三好郡三野町、池田町、山城町、井川町、東祖谷村、西祖谷村の6町村が合併してできました。四国の市町村の中で、最も広い面積をもつ自治体といわれています。阿波川口駅は、祖谷口(いやぐち)駅から2.8km、次の小歩危駅まで4.7kmのところに設置されています。

到着した2番ホームの高知寄りから見た阿波池田駅方面です。左側にある駅舎へは、跨線橋を利用して移動することになります。写真の左側に見える白い建物は、山城町商工会の建物です。商工会の建物が設置されているように、金融機関の支店も置かれており、阿波川口駅は、三好市山城町の経済の中心地にある駅でした。

阿波川口駅の1番ホームと駅舎です。白い三角形の屋根が印象的な建物です。模様替えする以前は、駅舎の表側もこのようなつくりになっていました。

2番ホームから見た1番ホームの跨線橋付近にあった横断幕です。「やましろ 狸の里 あわかわぐち やましろ狸な会」と書かれています。「狸の会」ではなく「狸な会」のようです。「やましろ狸な会」は、山城町の妖怪たぬき伝説を活かして、地域の活性化に取り組む住民のグループです。
 
JR土讃線の起点、JR多度津駅に停車していたJR四国の観光列車「四国まんなか千年ものがたり」号です。「狸な会」は、阿波川口駅が、この観光列車の停車駅になったのをきっかけに、この地に残る「妖怪たぬきの里」を観光の目玉にすることをめざして、駅の模様替えのために活動してきました(徳島新聞の記事より)。

これも1番ホームに建っていた「日本一 阿波川口 たぬきの里」の幟です。

これは1番ホームの駐車場前にあった「ようこそ! 狸伝説の里 阿波川口駅へ」の横断幕です。

そして、一番ホームで乗客を迎える狸です。この狸は、伝説によれば、庶民の味方で知恵者の「青木藤太郎狸」と、美人で知られた「おそめ狸」で、花嫁衣装からもわかるように、二人の狸は結婚しているそうです。

跨線橋の上から見た、並行して走る国道32号(徳島北街道)と並行して流れる吉野川です。

跨線橋から見た阿波池田方面です。2面2線のホームの左側に側線が見えます。かつて、この地で伐採された木材の輸送のために使われた貨物側線ではないでしょうか。

青木藤太郎狸とおそめ狸の前を通り、「歓迎 ようこそ狸の里 阿波川口へ」の横断幕から駅舎に入ります。阿波川口駅は、昭和10(1935)年、土讃線の三縄(みなわ)駅・豊永駅間が開通し、起点の多度津駅から高知県の窪川駅までつながったときに開業しました。昭和58(1983)年に無人駅(簡易委託駅)になりました。かつて設置されていたはずの改札口は、撤去されていました。

右側に駅事務所がありました。職員はおられませんでしたが、事務所の中で「汽車狸」が勤務に就いていました。

待合スペースです。ベンチの上には座布団が敷き詰められています。駅前広場への出口の上には川柳の短冊が並んでいる、ゴミ一つない清潔な駅舎でした。

阿波川口駅の現在の駅舎は、開業時に建てられた駅舎を、昭和63(1988)年3月に建て替えたものだそうです。駅舎から外に出ます。

駅舎全体を「汽車狸」に見立てたことがよくわかります。出入口の両側は、「四国まんなか千年ものがたり」の色に合わせて、赤、緑、白、青の4色で塗装されています。上の狸は、顔(縦 2メートル、横 2メートル)の上に制帽を被っている「汽車狸」です。

こちらは、駅舎の大歩危側の壁面です。こちらも、観光列車の模様と同じものが描かれています。トイレは、駅舎内にはなく、隣接している商工会館の1階部分に設置されていました。

阿波川口駅の阿波池田側の風景です。広場に枕木が置かれています。かつては、貨物の積み降ろしのための倉庫等があったところと考えられます」。駅のある地域の「山城」の地名は、山を背にしている地勢から「山背(やましろ)」となり、後に「山城」となったという説が有力です。三好市山城町の西側は、愛媛県四国中央市。愛媛県と徳島県の県境にある町でした。

駅前の通りを、阿波池田駅方面に向かって歩きます。平坦地が少なく、濃霧や積雪もあり降水量も多いこの地域は、林業に適したところでした。総面積の8割以上は森林だったといわれ、製材業がさかんな地域でした

通りの左側の崖の上には、三好市立山城小学校と幼稚園がありました。小学校に向かう石段付近には、乾燥のため、たくさんの木材が並べてありました。

右側に製材工場がありました。かつては、多くの材木が、阿波川口駅から運び出されていたはずです。阿波川口駅前まで引き返して、今度は大歩危方面に向かって歩きます。

かつての街道筋の雰囲気が残る通りを歩いていきます。左側に、登録有形文化財である「旧川口郵便局局舎と和風の主屋」がありました。「説明板」もつくられていました。白く見える建物が洋館の局舎です。「明治38(1905)年に建設され、下見板張り、ペンキ塗り、屋根や窓、軒回りに意匠を凝らした」洋館と、それと一体になった「出格子が構えられ落ち着きがある」和風の建物でした。当時は郵便業務とともに電話交換業務も行っていたそうで、この郵便局は「四国最大の特定郵便局」だったといわれています。昭和54(1979)年に局舎が移転され、その後は、写真スタジオになったそうです。

国道32号は現在は土讃線と吉野川の間を走っていますが、駅から続くこの通りは、かつての国道32号です。江戸時代の前期には土佐藩の参勤交代の道としても使われていました。今も、商店が並んでいます。

その先で、赤い塗装の川口橋を渡ります。下を流れる銅山川(伊予川)は、その名の通り、別子銅山のある別子山を源流としています。この左側で吉野川に合流します。

川口橋から見た吉野川方面です。土讃線の「伊予川橋梁」が見えます。その向こうに吉野川が流れています。地図では銅山川と書かれていますが、伊予国から流れてくるから「伊予川」とも呼ばれていたようです。JR四国は、「伊予川橋梁」と伊予川の方を使っています。

これは、以前、土讃線の列車から撮った伊予川橋梁です。橋梁の先は、山城谷トンネルを抜けるルートになっています。土讃線の阿波池田駅から土佐山田駅の間は、豪雨など自然災害によって大きな被害を受けて来たところでした。自然災害を克服するため、トンネルを掘削してルートを変更することが、たびたび行われてきました。

ここもその一つで、昭和25(1950)年11月1日に山城谷トンネルが開通する以前は、吉野川に沿って次の小歩危駅へ向かうルートでした。山城谷トンネルは全長2,179メートル。阿波池田駅から土佐山田駅間のルート変更の先駆けになったトンネルでした。これは、カメラを少し引いて撮影した写真ですが、それ以前の土讃線は、伊予川橋梁の左側のお宅の方に向かって進んでいたといわれています。

川口橋から見た銅山川です。左(右岸)側には四国中央市伊予三島に向かう国道319号が走っています。右の白い建物は、三好市山城支所です。この地に、前身の山城谷村役場が移ってきたのは、太平洋戦争中の昭和19(1944)年のことでした。その後、昭和31(1956)年山城谷村が三名村と合併したとき、「山城町役場」と改称されました。そして、平成の大合併により、現在の三好市山城支所になりました。

これは、「説明板」によれば、防空壕の跡だそうです。鉄道と国道の鉄橋が並んでいるこの地は、米軍の空襲を受ける可能性がありました。そのため、避難用の防空壕を掘り始めたのですが、岩盤が固いため掘り進むことができず、書類の保存用の防空壕になったといわれています。

現在は、この穴に世界の平和と地域の安全を守るため、土讃線開通80周年を記念して、「狸伝説の里、山城町」のシンボルとして「狸大明神」をお祀りしているそうです。

駅前広場に戻ってきました。駅舎には、地元の人らしい職員の方が勤務されていました。阿波川口駅は、現在では、切符の販売だけを委託されている簡易委託駅になっていました。駅舎内で勤務されていた職員の方が、「駅のスタンプ押しましょうか」と声を掛けてくださいました。

これがそのスタンプです。この駅のスタンプには「やましろ狸が出迎える駅 阿波川口駅」と書かれています。この日は、この汽車狸に会えた、楽しい一日になりました。

JR土讃線の阿波川口駅は、JR四国の「四国まんなか千年ものがたり」の停車駅になったことで、大きく変わり、全国に知られる「やましろ狸が出迎える駅」になりました。地元の人々のご尽力で、ホームや駅舎の各所にある幟と横断幕、愛嬌のある狸が見える楽しい駅になっていました。



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