風に吹かれすぎて

今日はどんな風が吹いているのでしょうか

雪の夜

2009年02月08日 | 
嫌いなものから逃げたら、嫌いなものから追いかけられる。
好きなものを追いかけたら、好きなものは逃げる。
追いかけもせず、逃げもせず、人は陽だまりの下で微笑んでいればいい。

冬には雪が舞い、春には桜が舞い、夏にはタンポポの綿毛が舞い、秋には枯葉が舞う。
じっと坐っていればこそ、世界は舞い続けるのだから。

雨の日は雨だれの音を聴き、嵐の日には風のうなり声を聴けばいい。
炊き立てのご飯をほおばり、味噌汁の匂いを吸い込めばいい。
天気が上機嫌なら畑を耕し、種を植え、実った野菜を取り込めばいい。
時には街に出て、道行く人と挨拶を交わせばいい。
味噌や醤油をくれる人がいればありがたく頂いて、たっぷり仕込んである漬物をお礼に差し上げればいい。
米を買うために、週に三日は道路工事に出ればいい。
あれやこれやら嫌味を言われても、笑って聞き流せばいい。

朝は早く起きて、目くるめく天空の色彩の移り変わりを眺めるといい。
寝る前に外に出て、星星のささやきに耳を傾けるのもいい。
寒い夜には焚き火を焚いてみるのもいい。
炎は思いのほかに雄弁だ。

雪が降り積もる日は大切な日だ。
降り積もった雪の上に大の字に寝転んで、空を見上げてみよう。
白い空間から、際限もなくひらひらと舞い落ちる雪。
水の精が思いのたけを尽くして舞い踊る日だ。
その優雅さを、その謙虚さを、その清冽さを、その軽さを全身で受けてみよう。

そして、ひとしきり雪を楽しんだら、家の中に入ってうんと薪を燃やしてみる。
それに昆布を敷いた鍋をかけ、酒と醤油を入れて、大きめにぶつ切りにした大根を炊く。
煮える間、少し贅沢してお酒を3杯ほど飲む。
生きているということがそのまま至福であることをしみじみと味わう。
熱々の大根ができたら、遠慮なくふーふーいいながら頬張る。
外では音もなく雪が降りしきり、時折屋根からどさりと雪が落ちる。
大根を食べ終えたら、残った汁のなかに冷や飯とみじん切りにした大根の葉を放り込む。
雑炊をすすって、至福の宴は終了だ。

冷え切った布団にもぐりこむのも、火照った身体には心地よい。
ここには好き嫌いがない。
祝福があるだけだ。

時折、パチパチとはぜる焚き火の音を聴きながら、音のない雪の夜に紛れ込んでいく。

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