鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

十勝平野・初秋の鳥たち~日々の野帳から~

2006-09-15 22:30:15 | 鳥・秋
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All photos by Chishima,J.
霧雨の牧草地で憩うヒシクイの群 2006年9月 北海道十勝川下流域)

9月2日
 快晴で陽射しは強いが、吹き抜ける風が心地よく、前週までの蒸し暑さはない。水辺で2羽のコガモを見る。繁殖や越夏している種をのぞけば、今期初のカモ類。
渡来直後のコガモ
2006年9月 北海道中川郡幕別町
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9月10日
 十勝川を遡ってきた霧が、所によっては霧雨となって地上を濡らしている。
 120羽ほどのコムクドリが住宅地の電線に止まっていた。この悪天候で足止めをくらっているのか。コムクドリは8月中にはほぼいなくなるものと思っていたが、そうでもないらしい。雄の姿も多いが、よく見ると綺麗な成鳥の雄は少なく、どこか薄汚れたような色のものが多い。第1回冬羽へ移行中の幼鳥である。
 海岸部では霧雨はさらにひどくなっていた。ミストシャワーの如く原野を煙らせているその景観の中、牧草地に60羽近いヒシクイを発見。カムチャツカからの長途で疲弊したのか、それとも天気が思わしくないためか、休息している個体が多い。春にはこれから始まる生命の躍動の季節を、秋には目前に差し迫った長い冬を、その渡来によっていち早く教えてくれるこの鳥は、十勝の鳥見人にとっては特別な存在だ。
 帰路、電線に鈴なりになった約500羽のムクドリに出会う。コムクドリほど遠方への渡りをしないせいか、10月頃まで残っている個体が多い。何かのはずみで一斉に飛び立つと、そこかしこに黒い雲塊が形成され、しばしの間喧騒に包まれる。


コムクドリ(オス・幼鳥)
2006年9月 北海道中川郡豊頃町
頬がうっすらと赤褐色を帯び、風切や雨覆は金属光沢のある黒色の羽に換羽中。
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ムクドリの大群
2006年9月 北海道中川郡幕別町
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9月11日
 市内の幅10メートルにも満たない小さな川でカワセミを見る。繁殖期が終わったためか、この時期各地の川や沼でカワセミを見る機会が増えるような気がする。


カワセミ(オス)
2006年9月 北海道帯広市
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9月13日
 収穫の秋を迎えた農耕地を脇に見ながら海岸を目指す。ある畑には一面にイヌタデの淡紅色が美しい。刈り取られた牧草地や畑に現れるタンチョウの数が、また一段と多くなった。


ピンク色の絨毯(イヌタデ
2006年9月 北海道十勝川下流域
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牧草地のタンチョウ
2006年9月 北海道十勝川下流域
刈り取った牧草を集めたロールとともに。
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 爽やかに晴れ渡った浜辺には、アキアジ(サケ)釣りの竿が乱立している。 それでも休日ほどの混雑はなく、所々に鳥の姿が散見される。


秋の浜辺
2006年9月 北海道十勝郡浦幌町
チュウシャクシギのシルエットの背後には、多数の釣竿と釣り人の車。
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 100羽以上のカモメ類の群に近付くと、「ウミネコとオオセグロカモメだろうな」という予想に反してウミネコとセグロカモメがメインだった。もうセグロカモメも来ていたか…。道内でも繁殖しているオオセグロカモメやウミネコとは対照的に、セグロカモメの繁殖地は遥かユーラシア大陸の最北部。日本の大部分の地域では冬鳥だが、十勝では9~10月頃に多数が通過して行く旅鳥である。9月前半の渡来は、極北の短い夏の裏返しだろうか。


セグロカモメウミネコ(右)(成鳥)
2006年9月 北海道十勝郡浦幌町
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 1羽のチュウシャクシギが、こちらへ歩いてきた。浜辺に腰を下ろして観察していると、よほど腹を空かせているのか、採餌に夢中のあまりどんどん距離を縮めてくる。嘴が短く、湾曲もより小さな幼鳥である。しばらくは私の眼前で砂中を嘴でまさぐっていたが、ふとした拍子に目が合うと、バツが悪そうに元来た方向へ足早に歩き去った。ちなみに、腰を下ろしてじっとしていると、意外なほど近くに寄ってくれることが多く、砂浜や湿地など車が入れない場所での観察・撮影には有効である。やはり、生身の人間が立ち上がったシルエットが、鳥にとっては一番恐ろしいのだろう。


チュウシャクシギ(幼鳥)
2006年9月 北海道十勝郡浦幌町
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キトンボ(オス)
2006年9月 北海道帯広市
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(2006年9月15日   千嶋 淳)


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