鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

カツオドリ(その1) <em>Sula leucogaster</em> 1

2012-01-03 18:37:11 | 海鳥写真・ペリカン目
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All Photos by Chishima,J.
(以下すべて カツオドリ・オス成鳥 2011年7月7日 東京都小笠原村)


 北の海鳥というイメージはあまりないかもしれない。実際、繁殖地は太平洋、インド洋、大西洋の亜熱帯、熱帯海域であり、日本では南西諸島や小笠原諸島、九州南部の離島等で繁殖し、周辺海域で観察される。ただし、多くの海鳥と同様、時に長距離を移動する個体もいるようで、道東からは1980年6月根室市春国岱、2002年8月根室市ユルリ島、2006年7月厚岸町大黒島と少なくとも3例の記録があり、1997年7月には歯舞・色丹諸島の南東沖でもロシアの漁業監督官によって観察されている。記録はいずれも6~8月であり、本州東岸沖を北上する魚群やそれに付き従うオオミズナギドリ等の鳥山と一緒に漂行して来るのかもしれない。
 写真の鳥は、目から嘴基部にかけての裸出部が水色のオス成鳥である。

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 ユルリ島と大黒島の記録は、海鳥コロニーへの飛来である。ユルリ島ではオオセグロカモメやウミウ、エトピリカ等が繁殖する陸繋島の上空を、それらの鳥に混じって10分ほど飛翔した後島の沿岸沿いに飛び、その後沖合に飛去した。迷彩ポンチョを着てコロニーの近くで調査をしていた私は、大慌てで他のメンバーに飛来を無線で伝えたが、興奮していてよく聞き取れなかったらしい。ある人はあまりの興奮ぶりにキャンプサイトが火事にでもなったかと勘違いしたほど。ユルリ島では2006年にアカアシカツオドリの若鳥も記録されている。
 体型、体色とも独特で、遠距離や光線条件が良くないとオオミズナギドリと似て見えることもあるが、見紛う鳥は同属の近縁種以外では少ない。本来の分布域以外で目撃した際に識別の障害となるのは、むしろ「こんな場所に、こんな鳥がいる筈はない」という先入観であろう。


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 水中突入後に顔を震わせて水気を払っている。カツオドリ類は、トビウオ等を追って海中への突入採餌を頻繁に行なう。翼はミズナギドリ類等と同じく尖翼長腕型であるが、カツオドリ類では特に腕部が長く、次列風切は26枚に達する。尾羽は割に長く、楔状を呈する。


(2012年1月3日   千嶋 淳)


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