All Photos by Chishima,J.
(以下1点(比較画像のチシマウガラス)除きすべて ヒメウ成鳥夏羽 2011年4月18日 北海道十勝郡浦幌町)
北海道では留鳥とされるが、道東では夏期に見られる大部分は褐色みを帯びた若鳥の越夏個体である。道東太平洋側での確実な繁殖記録は、おそらく数例しかないだろう。多くが冬鳥として10月以降に渡来するものと思われる。その季節性同様、意外と知られていないが成鳥夏羽の羽衣。多くの図鑑にあるよりも顔の赤い裸出部ははるかに広く、腰の脇の白斑も大きく目立つ。また、嘴も淡色に見える個体もいることから、チシマウガラスと誤認する可能性がある。そうした羽衣は2月下旬頃より見られ、4~5月には普通であるが、5月下旬以降は成鳥を見る機会が激減するため、いつまでそうなのかは不明。ただ、腰の白斑に関しては、11月くらいでも顕著な個体がいる。一連の写真は同日の同海域での撮影であるが、一部を除き別個体。
冒頭写真と同一個体。上面の色は構造色で、光線によって金属光沢を帯びた紫や緑に変化し、実は美しい鳥であることがわかる。嘴は、個体によってはこのように白っぽく、また厚みもあるように見え、冬羽や若鳥の黒くて細い嘴を見慣れていると、違和感を覚えるかもしれない。
別個体。顔の赤色は顕著だが、頸部の白い羽毛や腰の脇の白斑はまだ出ていない。
上の個体の顔のアップ。顔の赤い裸出部は広く、嘴が太く淡色に見えることから、チシマウガラスと誤認されやすいタイプ。
別の個体。頸の白い羽毛と腰の脇の白斑がきわめて顕著な個体。首から顔、嘴にかけて先細りになってゆくプロポーションは、本種に典型的なもの。
また別の個体。腰の白斑は大きいが、頸部の白い羽毛は疎ら。淡色の嘴と顔の赤い裸出部が目立って見え、チシマウガラスと誤認されやすい。
ヒメウとチシマウガラスの、夏羽での顔の比較。ヒメウは冒頭写真と同一個体。チシマウガラスの撮影データは画像を参照。2種とも顔の裸出部の赤が目立つが、その形状は異なる。チシマウガラスでは、裸出部は目の上からそのままの高さで前方に向かい額に達するが、ヒメウでは目の前方で下方へ向かい、額にかけての上嘴基部は黒っぽい羽毛で覆われる。また、チシマウガラスでは裸出部のうち下嘴基部付近に水色部分があるが、ヒメウではすべて赤色である。裸出部の色もチシマウガラスでは朱色に近い赤なのに対して、ヒメウでは紅色に近い。画像では確認できないが、チシマウガラスの翼上面はより褐色みが強く、ヒメウほど構造色による光沢は出ない。
(2011年12月22日 千嶋 淳)
*一連の写真は、日本財団の助成による十勝沖海鳥調査での撮影。
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