tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

<月曜随想>「市場原理」と「バネ」はよく似ている(続)

2024年06月10日 15時37分11秒 | 経済

先週の月曜日にバネには「弾性の限界」があって、バネの伸縮力が正常に保たれる範囲で伸び縮みしているうちは伸ばしても復元するのですが、限界以上の力が掛ってしまうと構成する元素の相互関係が歪んでしまうのでしょうか元に戻らなくなってしまします。

竹ひごや板バネの場合でも曲がってしまったり、極端な力が掛れば折れてしまいます。ここまでが限度、「破断界」などという言葉もありますが、大変危険なことです。

戦争などはあらゆるものが破断界を越えて社会が崩壊してしまうのですが、平時でも、経済に外部から異常な力が加わると、経済システムが巧く機能しなくなってしまう事があるわけで、日本も最近そんな経験をしたように思います。

それはリーマンショックです。ご記憶の様にプラザ合意で円レートは240円から120円の円高になりました。これで日本経済は折れてしまうかと思われましたが、バブル崩壊という困難も乗り越えて、2000年前後には、日本経済は復元に向かっています。

徹底したコストダウンをやり2002年からは「好況感なき上昇」という時期に入り日本経済というばねの強さを見せています。

しかし、ようやく新規学卒市場が「売手市場」に転換した2007の直後3008年にりーマンショックが起き、アメリカのゼロ金利政策で、円レートは80円~75円にまで円高になりました。

これは日本経済の「弾性の限界」を超えたのでしょう。経済を支える企業活動が復元の意欲を失ったようでした。当時、このままでは日本経済は潰れるという意見さえ出ました。

幸いにして2013・14年の黒田日銀の、アメリカに倣ったゼロ金利、異次元金融緩和政策で円レートは120円に戻り(伸びてしまったバネを新しいバネに取り換えた)、回復の緒に就きました。

但し、バネなら新品に変えれば伸びる前と同じですが、人間の場合はトラウマがあって(賃金を上げると危険というトラウマ)今年になって漸く少し直ってきたようです。

もう一つ、最近の例で、正確に重量を図れるバネ秤を持っていながら、それを正確に使わないという政策の例です。

消費者物価統計というのは大変重要な統計です。今、日銀も消費者物価の行方は最重要な指標として見守っています。この統計を政府は小さな親切心からでしょうか、正確に読み取ろうとせず、載せるものを手加減したりして、正確な読み取りをせず、その方が皆さんのためだといっているような気がっしています。

消費者物価は経済の体温のようなもので熱が出ると安静にした方がいいといわれます。欧米では今消費者物価が上がって、経済が過熱気味だから熱を冷ますために金利を引き上げて抑制型の経済政策を取っています。

幸い日本は、労使関係が欧米より慎重ですから、同じ条件でもあまり消費者物価は上がりません。欧米8~10%、日本3~4%ですから大分違いますが、政府はなるべくこの数字を低くしたようです。

低くするために、関係の企業に補助金を出してその分値段を安くさせるのです。

バネ秤の皿の下にそっと指を挟んで針の動きを止めるようなものです。本当の数値を見せないという操作が、電気・ガス料金、ガソリンの価格などで見られる政策です。

安ければ気兼ねなく使いますが、日本経済としては高いから節約しましょうというサインとして物価が上がるというのが市場原理ですから、今のエネルギー政策などは市場原理を阻害するような政策で、自由主義経済の本来の在り方に反するもので、正確に動くはずのバネ(価格機構)には申し訳ない政策で市場原理に盾突いているという事ではないでしょうか。


政治資金規正法騒動のお蔭で解った事

2024年06月08日 18時24分56秒 | 政治

政治資金規正法騒動の中で、最初からおかしいなと違和感を持っていたのは、この騒動の中で言われていた「政治にはカネがかかる」という言葉でした。

しかし自民党、公明党、それに日本維新の会の諸先生方がみんな賛成して改正法が衆院をすんなり通過し、言葉にうるさいマスコミでも「政治にはカネがかかる」という言葉に疑問を呈したのを見なかったものですから、この違和感は、私の認識や理解が間違っているのかとも思ったりしていました。

改正法成立で賛成と反対がはっきりしましたから、この際、やっぱり確かめておこうと思って、ウィキペディアを引いてみました。

ウィキペディアは役に立つのでよく使います。使うだけでは申し訳ないので、自動引き落としで少額ながら募金にも協力しています。

ウィキペディアで「政治とは」と引きますと、

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政治(せいじ)とは、国家の意思決定機関である主権をもとに、共同体の領土資源を管理し、それに属する構成員間あるいは他共同体との利害を調整して社会全体を統合する行為、もしくは作用全般を指す言葉である[1]

広辞苑では「人間集団における秩序の形成と解体をめぐって、人が他者に対して、また他者と共に行う営み。権力政策・支配・自治にかかわる現象。」とする[2]

大辞泉では「1. 主権者が、領土人民を治めること。2. ある社会の対立や利害を調整して社会全体を統合するとともに、社会の意思決定を行い、これを実現する作用。」とした[3]

古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、政治を研究する政治学を《善い社会》の実現を試みるためのマスターサイエンスであると位置づけた。

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と出て来ます。

民主主義社会では、これは、立法、司法、行政という活動をすべて含むと考えるべきでしょうか。

これはたしかにカネがかかることです。勿論それは国民も理解しています。ですから国民はきちんと税金や社会保険料を払っているのです。国民負担率は国によりますが、日本では50%弱で、昔から「五公五民」などと言われていたようです。

ところが、今、政治資金規正法騒動の中で意識されている政治資金というのは、税金以外のものです。そして、何に使うかは出来るだけ解らなくしておかねばならないというのがその性格です。

「然し隠すより現れる」で、多分、殆ど選挙資金でしょうと言われています。

少し長くなりますが、ここで社会における重要な類似の活動の例を挙げてみましょう。

医療というのは国や社会ではなくて人間の体の働きを整える仕事です。ですから勿論医療にはカネが掛ります。「医療・介護にカネが掛る」と言えば、個人的にも、国家財政でもみんな納得します。

然し医療従事者の仕事は誰でも出来るものではありません。努力して資格を取らなければなりません。

医療に金がかかると言えば理解されても、医療従事者になるのにカネが掛るといったら「カネでなったら患者がたまらん。ちゃんと勉強してなってくれ」と言われるでしょう。

政治家も同じではないでしょうか。それなのに、「政治にカネがかかる」という言い方で、そのための法律まで整備して、カネをかけて政治家を作る事を正当化しようとする政治家のグループがあり、その3大グループが今回明らかになったという事なのではないでしょうか。

いま日本は、経済を含め30年来のかなり重症の病気です。それを治す医者(政治家)にはカネでなく「志や勉強」を大事にする人になってもらいたいと思います。


続いてほしい平均消費性向の上昇

2024年06月07日 13時54分20秒 | 経済

賃上げが30年ぶりの大幅になったとマスコミが書いた今春闘の中で、年度が替わり大企業中心に4月から新賃金になった年度初めの月、2024年4月の家計調査の「家計収支編」が今朝発表になりました。

ネットでは2人以上世帯の消費支出が前年4月比で実質0.5%増という見出しが多いようですが、今年に入って1~3月は前年同月で、実質-6.3%、-0.5%、-1.2%と物価上昇もあってマイナス続きでしたから、やっと少し様子が変わるかなという所です。傾向的には昨年3月から続いた物価高で落ち込んだ実質消費支出のマイナスが、今年1月の大幅低下の後、少し回復気味になり、4月から水面上に顔を出したといった感じです。

春闘の結果についても、最近は中小の賃上げは難しいという見方もあり先行きが心配されていますが、いずれにしても消費不況は、物価を下げ消費を増やさないと解決しないのですから、賃上げと物価安定と同時に平均消費性向の向上が必要です。

という事で2人以上勤労者世帯について見ますと、勤労者所帯の実質実収入は昨年12月を底に対前年同月比マイナスながら回復基調で、まだ水面下ですが、水面(0%)に近づきつつあるようです。

但し、勤労者世帯の収入の内訳を見ますと、実質実収入はマイナス0.6%(名目は2.3%増)で、世帯主収入はマイナス0.3%で16カ月連続、増えているのは配偶者収入で実質6.0%の対前年増(3か月連続増)で家計を助けているようです。

その結果かどうかは解りませんが、下の図のように4月の平均消費性向は前年同月の73.9%から76.2%に2.3ポイントの上昇です。

      平均消費性向の推移(%、総務省「家計調査」)

これは吉報で、図のように このところ3か月続いての対前年同月上昇ですから、家計の空気が少し変わって来ているのかなという感じもします。

これが傾向的なものか一時的な現象かはまだ読み切れませんが、傾向的なものとなるのには、中小の賃上げや物価の沈静傾向の継続が必要でしょう。

電力・ガス料金のための補助金の打ち切りなど、問題はいろいろありますが、ヨーロッパの金利低下といった動きも報道されています。

アメリカFRB、そして日銀の動きはまだ解りませんが、そうした動きがプラスとですかマイナスと出るかも含めて、為替レートが動けばその影響も出るでしょう。

そうした外的要因とは別に、日本の家計が、今後も貯蓄志向を維持するのか、それとも、貯蓄志向だけでは楽しくないという意識の変化も生まれるのか、長かった日本経済低迷の時代からの脱出がどんな形で実現されていくのか(いかないのか)もう少し見ていていきたいと思っています。


マイナカード利用の遅れは政府の問題

2024年06月06日 22時03分49秒 | 政治

マイナカードについては何回か書いていますが、政府が急いでいる割に、現場は進んでいないようです。

確かに政府の督励でカードリーダーは小さなクリニックでも処方箋薬局でも確り置いてあるようになりました。

私もこの所かかりつけのクリニックと眼科に行っていますが、かかりつけのクリニックは割合早く設置しましたし、来院者があまり多くないので、設置してすぐ「これを使ってみましょう」といってOKを取り使っています。顔認証の方にしましたが、性能はスマホよりいいような感じです。

眼科の方は、設置はだいぶ遅くなりましたが、ここはお客が多く受け付けは忙しく立ち働いているので、マイナカードと保険証を出して「どちらにしましょうか」と聞きまりたら保険証の方がいいという事でずっとそうしています。

15分から30分ぐらい待ちますが、次から次と客が入って来て受け付けは大変です。行くたびに見ていますが、今迄マイナカードを使った人を見たことがありません。

事務的にどう違うのか、私には解りませんが、保険証の方が処理しやすいのではないかといった感じがしています。

先日頼まれて、難病の医療費控除の申請に、代理人として行ってきました。

持っていくものを確り揃えないと、取りに帰るのは大変ですので、代理人の私の分も確り揃えて行こうと事前に市役所の担当部所に電話して揃えました。

その時に、私の本人証明はマイナカードでよいのですかと聞いて、健康保険証も入っていますといいましたら、健康保険証も持ってきてくださいとのことでした。

窓口は大変親切で、持っていった書類を順次取り出して正確に記入されているかを手早く調べ、私のマイナンバーが記入してなかったので、ここに記入してくださいと升目を指摘してくれて、そこに記入するとすぐにそれを実際のマイナカードと照合して手早く処理してくれました。

手続きの中で、本人と代理人のマイナカードと健康保証をちょっと貸してくださいと言われ2人分のカード4枚を揃えてお渡ししますと、コピーしてきますという事でA4の用紙に4枚を綺麗にコピーしてコピーして、ハイ有難う御座いましたと返してくれえました。

手際が良いなと感心してみていましたが、その4枚のコピーを見た時、ふと、マイナカードを読み取って、健康保険証も入っていればコピーする必要はないのではないかな思ってしまいました。

難病の医療費控除の手続きの具体的な中身や手順は解りませんが、コピーを取ったという事は読み取り装置にはかけていないのではないかと思われます。

窓口に読み取り装置はありませんでしたから、勿論顔認証は出来ません。マイナカードと保険証のコピーの役割はどういうことになるのかなと思いながらも、そんなことをお聞きして、忙しいお仕事の邪魔をしてはいけないと帰ってきました。

このブログでは、行政のデジタル化を進めるのであれば、中央から地方まで行政そのものをデジタル化する事が先ず必要なことではないかと指摘して来ました。

それには巨大なクラウドシステムが必要でしょう。行政機構のどこで入力しても、読み取っても、必要な範囲には総て情報が瞬時に登録されなければ、デジタル化の本来の意味は無いのではないでしょか。

今デジタル庁が考えているデジタル化とは一体何なのか、協力しなければと思いながら、何か徒労に終わっているような虚しさを感じるところです。


GDP成長目標「1%以上」とはなんと情けない!

2024年06月05日 14時00分22秒 | 経済

昨日、岸田内閣の新「6か年骨太の方針」の骨格が決まったという報道を受けて、「骨太の方針」の中での「物価と賃金の関係」につて、「物価上昇を上回る賃金上昇」とありますが、春闘でそれをやると大変なことになるかもしれませんよ、と書きました。

そして最後に、「骨太の計画には」実質経済成長の目標も、勿論掲げられるのでしょうが、(中略)成長見通しが崩れれば、総てはその分配ですから総崩れでしょうと、書きました。

ところで、政府が成長目標を立てるとすれば参考になるのは、内閣府の「財政収支試算」あたりで、これでは名目3%、実質2%の成長でないと財政収支は健全にならないとしていたようですから、これから日本経済は発展するという岸田トーンからすれば多分実質2%以上、頑張って3%ぐらいの数字が出て来るのかと思っていました。ところがその後の報道では「実質1%以上」という事になるようです。

『え! たったの1%』とびっくりでしたが「以上」が付いていました。おそらく、2%はとても自信がないけれど「以上」とついているからいいだろうという事でしょうか。

外国に行って「日本に投資を」「岸田に投資を」と呼びかけている人にしては余りに小心すぎるというか、やる気がないというか、これでは日本は救われないと感じた次第です。

というのも「デフレ脱出」とか、「需給ギャップがマイナス」などと言われ、現状の不況感から抜け出したいと願っているのが現在の国民感情でしょう。

という事で、現状の日本経済の実質成長率を見れば、一昨年度1.5%、昨年度1.6%。今年度1.3%というのが、1月発表の「政府経済見通し」の数字です。

今朝の報道では実質賃金の対前年マイナスが25カ月に伸びた様ですが、極端な円高にならない限り経済情勢はいくらか良くなることを多くの人は期待していると思います。

そういう中で、今後6年にわたって、実質経済成長率が1%を越えればいいという「骨太(骨細ですね)の方針」では、国民は落胆でしょう。

今日も、日本人は、日本経済の挽回を目指して、真面目に一生けん目に働いています。こんな勤勉な国民は、世界でもまれだと私は思っています。

いずれ選挙があると思いますが、その時は実質経済成長率2%以上と自信を持って言い切る政党、人に日本のリーダーをお願いしたいですね。


「物価上昇を上回る賃上げ」と言いますが

2024年06月04日 14時01分47秒 | 経済

昨日から今日のニュースでは、国民にとって大変なことが目白押しですが、大変な事でも、それらがあまり沢山ありますと、どれが本当に重要なのか解らなくなって、総理や担当大臣の言う事も、一つ一つの言葉の重要性があまり感じられなくなって、何気ないニュースの様に受け取ってしまいそうになります。

そんな中の一つに「物価上昇を上回る賃上げ」というのがあってちょっと気になってしまいました。

大きなニュースとしては、政治改革規制法改正法案が、今日採決という事でしたが維新から政策活動費に抜け道があるという意見が出て採決しなくなったことがありました。

岸田さんが、今国会で解散数選挙はまずいという事で解散は無いのだそうだというのも、では、いつになったら自民党にとって良い時期になるというのか大変な問題です。

また、岸田さんが2025-30年度の6年の「骨太の方針案」について基本方針を示したというニュースもあり、その中にはプライマリーバランスの2025年度の達成が掲げられていて、これも大変なニュースです。

またこの6か年計画では「物価上昇を上回る賃金上昇」の定着への具体的の支援策が柱ともありました。

みんな大変なことですが、私の関心の強い労働経済の分野の、賃金と物価の関係という事なのでこの問題が気になったわけです。

関係する財務省や総務省の発言を見ますと、輸入物価上昇や賃上げ分の価格転嫁を進めるなどのことが言われていますが、それによって中小下請け企業の賃金支払い能力を増やし、構造的な賃上げの上昇に繋げるといったことも出ていましたが、これはまず物価上昇につながるもので、それを上回る賃金はどうするのでしょう。

もともと政府には賃上げの機能は無いので「支援策」という事になっているのでしょうが、一体何をやろうというのか、思い出すのは安倍さんの「官製春闘」ですが、これは効果はありませんでした。

今は円安で、輸入物価が上がるとしても、いずれアメリカの利下げて円高の方に振れれば、状況は逆になる可能性が大きいでしょう。その時は輸出産業の円安差益は消えて、差損の世界になります。円高不況の可能性もあります。

確かに持続的賃上げは大事ですが、それが持続的な実質賃金の上昇という事を意味するとすれば、それを支えるのは実質経済成長しかありません。

物価上昇以上の賃上げ実現のために、物価上昇分を持続的に賃金上昇につなげるという労使協定や法律などを作った国もありましたが、それはインフレの激化をもたらすばかりで結局は失敗というのが結果でした。

実質賃金の上昇というのはあくまでも、その国の実質経済成長の結果として可能になるので、実質経済成長の促進という形で作り出す以外にはないのです。

「骨太の計画には」実質経済成長の目標も、勿論掲げられるのでしょうが、今の毎年の「政府経済見通し」のように、来年度の分さえも定かでないような状態では、6年先迄などとても信頼できないという事になりそうです。

成長見通しが崩れれば、総てはその分配ですから総崩れでしょう。これまでの実績が国民の判断材料ですから、選挙を何時にしても、どんな政策を出しても、問題は政府への信頼感次第という事でしょう。

今の状態では、何を掲げてくれても、本気できけないのが国民の多くではないでしょうか。


<月曜随想>「市場原理」と「バネ」はよく似ている

2024年06月03日 16時44分40秒 | 経済

今日は月曜日です。もう大分以前からですが、日曜日はブログを書かないように決めてみました。

世の中のせいだと言っては世の中に申し訳ありませんが、どうしても現状批判的な発言が多くなってしまって、書いていてもあまり気分の良い物ではありません。

このブログを始めたきっかけは、我々はみんな付加価値を創ってその付加価値を使う事で生きているのですが、付加価値という概念があまり一般的でないので、付加価値をより多くの人に理解してもらいたいという事からでした。

ですから最初は付加価値その物の解説などからでしたが、日常の具体的な問題と関連付けた方が解り易いと考えて、政治・経済・経営などの時事問題と関連させる、どうしても批判が多くなってしまうので、土曜日は時事問題は離れたいと考えたり、時には月曜は「随想」でもいいかなどと思ったのが上の表題です。

もともと自由経済というのはマンデビルの「蜂の寓話」やアダム・スミスの「国富論」などからはじまって、こうすれば人間はもっと豊かに暮らせるという方法論です。

国富論の「富」は「付加価値」です。そして豊かになるためには「みんなが元気に活発に活動すればいい」とか「みんなが利益を求めていろいろ考えて働けばいい」という事になりアダム・スミスは、そこに「神の見えざる手」が働いてくれると説明したのでしょう。

この「神の見えざる手」というのが今の言葉でいえば「市場原理」でその基楚概念が「価格機構(price mechanism)」という事になるのでしょう。

シュンペータはそれに、安くてより良い物を生み出すのは「イノベーション」で、それによって経済が発展すると付け加えてくれています。

いわばこれで基本的な道具立ては揃ったので、自由経済はその後どんどん発展し、世界は豊かになりました。

しかしこの所、何か不具合があって、経済発展が巧くいかないことが多くなったようです。これを、「市場原理が間違っている」と考えるか「市場原理が巧く働かない様になっている」と考えるかですが、様々な経験を通してみて、多分正しいのは後者、市場原理はいいのだが、それが上手く働かないようする条件がいろいろあるようだ、と考えるのが妥当のように思われます。

そこで考えついたのが「市場原理とバネ」は良く似ているという事です。

バネにもいろいろありますが、バネ秤に使われるバネなどは長年使ってもいつも正確に重さを教えしてくれます。しかしバネには「弾性の限界」があって、限界以上の力が加わると壊れていまって役に立たなくなります。

市場原理も同じです。市場原理のメカニズムは価格機構ですから、需要が増えれば価格が上がり、その結果、生産・供給が増えて格が下がる、需要が減れば価格は下がるが、その結果需要が増えて価格は上がる、つまり価格は需給バランスで決まるので結局市場・マーケットで決まり、そこで物価も安定するというものです。

バネ秤は「この範囲でお使いください」という事になっていて、その範囲しか目盛がありありませんし、車の場合は何トン車とか定員何人とか決まっていますから、通常、バネの「弾性の限界」を超えるような事はありません。

経済の場合は「独占禁止法」などがその役をするのですが、経済の弾力性は機械の様に単純には決められません。

という事で経済の場合は市場原理の使える範囲や使い方を誤る可能性が多いようで、その誤りが経済発展を阻害する事が多くなると考えられます。

そのあたりの問題、つまり経済が上手く動かなくなる原因をまたの機会に取り上げてみたいと思っています。


電気・ガス政府補助金終了、その功罪

2024年06月01日 16時28分36秒 | 経済

昨年2月の消費者物価は1月の104.7から104.0に下がりました。総務省によれば、その内の0.4%ほどの下げが電力会社、ガス会社への補助金による料金の引き下げによるという事だそうです。

この5月その補助金は半額になり、6月からは無くなるとのことです。当然電気料金ガス料金はその分高くなるでしょう。補助金を止める理由は、LNGの価格が上昇以前の価格に戻ったからとのことです。ただし、価格の下がらない原油の元売り業界へのガソリン価格抑制については補助金を続けるようで、政策が分かれています。

確かに輸入価格が上がった時、製品価格が上がらない様にという配慮で政府が関連業界に補助金を出して国民の負担を軽くするというのは、国民に寄り添う親切な政策という評価になるでしょう。

という事で、今回は、資源などの国際価格が上がった場合、補助金を出して消費者物価がなるべく上がらない様にするのが親切か、そんな親切はしない方がいいのかという問題を考えてみます。

資源という意味で日本を見れば、最大の資源は人的資源つまり人間でしょう。勤勉でよく働く、エネルギーレベルも高い。これは世界に誇ってもいいでしょう。しかし天然資源では保有するのは石灰石ぐらいです。

天然資源は長期的には殆ど値上がりです。石油もガスも、非鉄金属、レアメタルなど。それに農畜産物も上がります。日本は食料自給率も40%程度です。そして、こうした輸入原材料は長期的に見れば皆値上がりです。

これは世界経済が発展し需要が増えるからですから避けられません。それに如何にして対抗するかですが、上がった分は日本のGDPから払うしかありません。政府の補助金も国家予算からですから元はGDPです。足りなければ国債発行で、将来の国民負担です。

そこで大事になるのが技術開発です。ガソリンが高くなればハイブリッド車、ネオジムが高くなれば10分の1のネオジムで同じ磁力を生み出す技術です。

技術革新は人的資源の活用の成果ですから、輸入原材料が値上がりしてもコスト=人件費はそれほど上がりません。

ではどうすれば技術革新が進むのでしょうか。これは専門教育研究とか開発技術装置の進歩といった専門領域の問題ですが、経済学的にはどうなのでしょうか。

経済学では、「市場原理(価格機構)」があります、これはアダム・スミスの言った「神の見えざる手」なのです。

原理は単純で、「高いものは売れない」という事です。ガソリンが高くなると、ガソリンを食わない車に買い替えます。アメリカでは燃費の良い日本車が売れました。最近は省エネも含め最もコスパのいいのはハイブリッド車だとHB車が人気のようです。

アメリカでは原油価格が上がるとガソリンの価格もどんどん上るようです。ハイブリッド車の人気が高まればガソリンの需要が減り、ガソリンの値上がりにもブレーキがかかります。市場原理(価格機構)はこうして技術開発を進めます。ネオジム磁石のコスト削減・高性能化も市場原理の産物です。

ところで、政府のガソリン補助金の延長はどうでしょうか。ガソリンが高いから補助金を出して安くしますといわれて、単純に喜ぶか、「小さな親切・大きな迷惑」と考えるか。さて・・・。