tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

消費者物価指数は内外要因逆転

2024年06月22日 15時30分24秒 | 経済

昨日、総務省統計局から2024年5月度の消費者物価指数が発表になりました。

マスコミの見出しは「消費者物価指数上昇5月は2.5%」といったものでしたが。これは「生鮮食品を除く総合」の数字で、消費者物価指数全体を示す「総合」の上昇は2.8%、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」の上昇は2.1%です。

ご承知のように、「生鮮食品」は天候による出来不出来などで価格が変動しますし、「エネルギー」は、石油やLNGなどですから海外価格次第という事です。

「総合」はこうしたものをすべて含みますが、干ばつで野菜の価格が上がっても一時的ですし、OPECのせいで原油価格が上がっても、そのうち下がるかもしれないという特定の変動要因を除いて、日本経済自体の状態で動く部分を見ておこうというのが「生鮮食品とエネルギーを除く総合」、いわゆるコアコアです。

ところで、このところ25か月連続で消費者物価指数上昇率が賃金上昇率を上回り、実質賃金が前年より下がるという事態が続いていますが、その主要な原因はこの「生鮮とエネを除く総合」の異常な上昇が続いていたからでした。

今、日銀が、消費者物価指数上昇が2%程度になったら金融政策の正常化を進めるといっているのは、天候や海外価格の影響を除く日本経済自体のインフレを見ていると思われます。

という事で、この消費者物価指数の主要3指数の動きを見てみましょう。

     消費者物価指数主要3指数の動き(総務省統計局)

上の図は指数そのものの動きを見たものです。昨年10月から今年2月ごろまでほぼ横ばいで消費者物価指数は落ち着いてきたと見られましたが、その後上昇基調です。日銀の狙う2%上昇迄落ち着くかは微妙です。

という事で、これを対前年同月の上昇率で見てみますと、下の図です。

         消費者物価指数3指数対前年変化率(%、資料:上と同じ)

 

ご覧いただきますように、「総合」(青)と「生鮮を除く総合」(赤)2月に上がり、3,4月は下がりましたが5月また上がっています。

一方、「生鮮とエネを除く総合」(緑)は、昨秋以来一貫して下がっています。ご覧いただきますように、この緑の線は昨年には、青・赤に比べて上にずれています。それまでは低かったのですが昨年高くなったのはエネルギー料金には政府補助があったのですが、食料品・特に加工食品、調味料、飲料、日用雑貨などは一斉値上げがあって消費者物価指数を押し上げた結果です。

そして今、そうした値上げが一巡し、国内経済要因による消費者物価の上昇が沈静化の時期に来ているようです。

代わって円安の進行による石油関連や穀物など輸入資源の円建ての価格の上昇が消費者物価指数を押し上げる動きが指摘されています。 

マスコミは5月の消費者物価指数の上昇は2.5%といっていますが、多分、日銀の注目は緑の線の2.1%ではないかと思います。

前回も述べましたように、円安による物価上昇を止めるには「政策金利の引き上げ」が最も効果的なのです。

ならば、日銀が金融正常化に一歩を踏み出す時期がいよいよ迫ってきたという事ではないでしょうか。

政府は、またエネルギー関係の補助金延長をなどと選挙目当てのバラマキを言っていますが、日銀とよく相談して「金利引き上げ」という「一石」で、「円安是正」「消費者物価の安定」「金融正常化の一歩」という「三鳥」を狙ったらどうでしょうか。(PCが変わってグラフ一部不鮮明で済みません)