tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「人本主義経営」のほうが健全なのでは

2024年06月18日 16時43分14秒 | 経済

このブログでは経済活動の主人公は人間で、人間が資本を使って付加価値を作るのが経済活動だと言ってきています。

人間がいなければ経済もないわけです。人間がもっといい暮らしをしようと考えていろいろと活動するのが経済活動です。

経済活動をしている中で、資本という概念も 生れて来たのです。資本は、昔は自然環境だけだったのでしょう。土地がなければ作物は育ちませんから、最も基本的な資本は土地でしょう。水がなければいけませんということで川のあるところが良いわけで、さらに日の当たるところが作物はよく育つので日照時間の長い所がいいといったことだったのでしょう。そういうところに人は住みついています。

貨幣経済になると、そうした自然資本もすべて金額に換算され、地価などの形で決まってきます。そして資本の概念はどんどん進んで、お金そのものを持っていれば、良い資本が手に入るので、お金は現物資本に代わって、資本といえばお金という事になったのでしょう。

ということでお金さえあればですからお金が大事となり、だんだん人間がお金に振り回されるようになりました。

こういうプロセスの中で資本主義という言葉も生まれてきたのですから、人間にとって資本が大事だからという意味だった資本主義が、何か経済の中心は人間でなくて資本だという具合に認識され、資本主義の主人公であった人間が見えなくなってきているように思われます。

「人本主義」という言葉を作ったのは、日本経済が順調だったころ、一橋大学教授(現名誉教授)だった伊丹敬之氏で、日本ではもともと企業活動で最も大事と考えられていたのは人間なのだから「人本主義」が正しいと指摘したわけです。

その伊丹さんが、最近『漂流する日本企業』という本を書かれ、日本経済が再生するには、人本主義に立ち帰るべきではないかと言っておられます。

論点の中では、付加価値分配の中で資本への分配が急増しているのは問題だとし、さらには将来に向けての投資が少なくなっている、最も大事なのは人間に対する投資と指摘し、かつて日本的経営が成功を収めた時期の経営を本格的に続けている企業として「キーエンス」の例を取り上げています。

経済活動の本来にかえれば、経済は人間社会を豊かにする活動で 、資本はその手段として必要なものという位置づけでしょう。

金そのものは紙であったり通帳の印字であったり、デジタルに記録された数字であったりで、生産に役立つ物江はありません。その数字をいくら増やしてみても生産は増えません。

そうした数字をいくら増やしてみても社会は豊かにはにりません。それが現物の資本、資本財となり、現物の設備投資になって、それを使う人間の頭脳の中の知識、経験、理論によって実体化されて、人間が実際に生産活動を行って初めて社会は豊かになるのです。

それを経験、知識、知恵を使って動かすのはすべて人間です。すべては人間が「あるじ」であっての資本主義、本当は人本主義なのでしょう。

それにたいして、資本の概念が主人公のように思われた時、単なる記号である数字数字が資本の名のもとに華やかな世界を作るマネー資本主義が盛んになったとき、社会は本来位の意味で豊かになることを休止するということになるのでしょう。