tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

金融、財政大盤振舞いでも「インフレにならない」のか?-4

2020年06月03日 21時27分38秒 | 経済
借金を返そうと思えば、増税かインフレ
 安倍政権の中でも麻生財務相は、財政健全化が必要といった考えを時々披露しますが、現実は借金財政、国債残高累増が進んで(GDPの約2倍)きていました。
 そこにコロナ問題が起き、2次にわたる補正予算で2020年度の新規国債発行額は90兆円だそうで、予算総額の国債依存度は56%と半分以上が借金です。

 誰がそんなに金を貸してくれるのかと思いますが、銀行などの金融機関が国債を買ってくれるのでしょう。銀行に金があるのは今まで今まで持っていた国債を日銀が買ってくれるからで、回り回って結局日銀が政府に金を貸していることになるわけです。

 日銀は通貨の発行権を持っていますから、いくらでも政府に金を貸すことが出来ます。もちろん日銀が直接国債を引き受けることが出来ないことになっていますが、結果的にはそれと同じことになっているのです(国債残高の約半分は日銀保有)。

 なぜ、日銀が直接国債を引き受けてはいけないかの理由は、そんなことをすると、政府は使いたいだけカネを使うことが出来、結局はインフレになって経済が破綻するからという事です。

 コロナ禍で縮小する日本経済を救うために、政府は90兆円の支出を増やします。使い道は予算案に書いてありますように、国民や企業へのバラマキが主ですから、これは国民や企業の購買力の増加になり、収入の減った国民(個人や企業)も、そのおかげで生活や企業経営を維持できることになります。

 現状では、この購買力の増加分が、家計や企業を支え、モノやサービスの消費、生産を促し、経済の急落を防ぐわけです。
ただ、新しい生活様式で、あまり使い道がないので、物価が上がるほどの需要増にはならず(マスク不足も解消)、かなりの部分は貯蓄(借金返済を含む)されて、実体経済ではなくマネー経済(例えば株式市場)などに資金流入となりそうです。

 政府支出は、マクロでいえば、経済の落ち込み(GDPの縮小)の回避、国民生活の安定維持のために大事ですから、致し方ない、やらざるを得ない、やるべきだといった意見が大方でしょう。

 そこで問題はそんなに政府が借金したら、返せなくなるだろう、利息を払うのも大変だろう、仕方がないから増税して借金返済をということになれば、孫・子の代には税金が増えて、大変になる。子孫に借金を残すのは良くない、という事になりそうです。

 またもし、政府が借金(国債)を返せなく(償還不能に)なると「デフォルト」で、国家財政の破綻、円の価値は急落、日本経済はハイパーインフレになり、国債は紙屑になって、国債を持っている国民は大損害を蒙るかもしれないというわけです。

 こうした問題指摘は、年々ひどくなる赤字財政への批判です。
安倍政権は財政再建をやるやると言いながら、結局、赤字財政をひどくするばかりで、コロナ禍でそれに拍車がかかったし、結局、将来は国民は増税で苦労するか、インフレで苦しむか、どちらかに追い込まれるのだろう、一体政府はどうしてくれるつもりなんだ、今が良ければいいという訳ではない、将来をどうするかを考えないで政策を打つなどは、政権担当者としては失格だ、という事になるのでしょう。

国民がそう考えるのも当然でしょう。
ところが、そんなことはないですよ。今までも政府は借金を増やしながら、やってきて、インフレにもならないし、何かあれば円高で、大幅円安など起きそうにない、国債は期限が来れば償還されている。
政府が借金しても、現実は何も心配になっていない、これでもいいんじゃないの。何か不都合がありますか? というのがMMT(新時代の貨幣理論)なのです。

次回、その考え方を見てみましょう。

金融、財政大盤振舞いでも「インフレにならない」のか?-3

2020年06月01日 15時48分52秒 | 経済
当面インフレにはなりそうにない

 前2回の検討で見れば、当面は、インフレになりそうな気配はないようです。

 インフレというのは消費者物価や、GDPデフレータ(国内のすべての生産物・サービスの平均値上がり率)が上昇することですから、家計(消費者)が自由に動けず売れるのは食品の出前やテイクアウトぐらい、旅行やイベントは中止がほとんどで、消費不振から経済成長がマイナスになるのが心配という状態の中では、消費者物価は上がりそうにありません。

 一人10万円で、一息つける人もおられるでしょうが、物価が上がるような購買力にはならないでしょうし、10万円は貯金に回す家計も多い事でしょう。

 企業物価も世界中不況で原油をはじめ原料価格も低迷ですから当面上昇の気配はないでしょう。 これではインフレにはなりません。

 一方、日銀が国債やETFを市中からの買い上げることで供給される巨大な流動性・ジャブジャブのお金は、多分証券市場の方だけで回転しているのでしょう。お陰で日経平均は連騰状態ですが、これは物価上昇とは言わず「バブル」というのでしょう。

 アメリカもまさに同じような状態で、日本もアメリカに準じて動く、追随するというのが今の世界経済の中で起きている現象でしょう。

 コロナ禍で世界中で経済が停滞する中で、なんとか基本的な経済活動だけでも維持しようというのですから、ある程度の金融・財政政策の行き過ぎは、ある意味では必要不可欠という意味もありますから、その意味では、コロナ禍の拡大を避けつつ社会経済活動の回復を徐々にでも前進させようという点では、現状の日本は(検査体制の遅れは些かひどいですが)まあ及第点でしょう。

 余談になりますが、いま世界中で関心の的になっているのは、日本という国は、新型コロナへの政策対応は何か曖昧模糊ですが、結果は極めて良好なものになっている。その理由は一体何なのだ、という事のようです。
 この答えが、何時、どう出るかは(誰がどう出すか)注目すべきでしょう。

 ところで問題は、今回の2次にわたる補正予算で、財政のタガは完全に外れました。政権にとっては「コロナのせいで仕方ない」という言訳が出来たのかもしれませんが、いずれ、「この状態にどう始末をつけていくのか」を考えなくてはならない時が来るでしょう。

 此処でのテーマも、本当は、野放図になってしまった財政・金融を、「無策」のままでいたらどうなるのか、よく言われるように、「インフレで日本経済は破たん」「国債は紙屑」「恐ろしいスタグフレーションが来る」などという危険性はないのか、という問題なのです。

 「金融も財政も節度を守らなければ日本経済の将来はない」という意見はあくまで主流です。
それに対して、MMT(Modern Monetary Theory:新時代の貨幣理論)は、マネーを上手く使えばそれでいいんだよ、と言っているようです。

次回は、当面の問題から、こうした将来の問題に進んでみたいと思います。