tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

雇用削減・教育訓練費削減の恐ろしさ

2013年04月25日 11時11分15秒 | 経済
雇用削減・教育訓練費削減の恐ろしさ
 かつて「5Sの起源」で書かせて頂きましたが、日本では「整理・整頓」「清掃・清潔」などは、家庭で母親が、そして小学校低学年で先生がしっかり躾けました。
 このしきたりが、世界が驚く日本人の整然とした行動の原点だったのでしょう。

 戦後、家庭や学校での躾教育の手抜きが言われ、その分企業での導入教育に手がかかると言われた時期がありました。今考えればその頃は未だ良かったのです。
 そして「失われた10年」に至り、企業は雇用削減に腐心、訓練不十分の非正規雇用の増加、正社員の教育訓練費も大幅削減、そして日本社会の劣化現象 となりました。
 
 新聞の三面記事にいつも見られる「犯人は無職・住所不定・・・・」、企業の現場で言われる「現場力の低下」、「職場のメンタル・ヘルス問題の増加」などなど。すべて自国民(日本人労働力)の活用、投資に手を抜いた結果です。

 放射能汚染水の水漏れやトンネル作業現場での手抜き点検などが象徴的に示す作業現場の現場力の弱体化、教育訓練不足、日本社会は長いデフレがもたらした人間の技能・技術の劣化、そして心・精神の劣化、ひいては社会そのものの劣化に対し、早期に、より真剣な対応を迫られているのではないでしょうか。
 私がまだ若かった頃、同じ研修に参加した電力会社の社員が「うちなんか研修ばかりで、研修の合間に仕事をやってるようなもんです」と言っていたのを思い出します

 もちろん大多数の日本人は今でもきちんとしています。しかし、「2・8の法則」(注)と言われるように、手や気を抜けば、予想外に事故や事件は多発します。

 日本社会の健全化のためにも、円高を見越して海外移転を進めてきた企業は、円高が止まれば、改めて国内回帰の可能性を考えてほしいと思います。
 勿論、必須条件として、まず政府・日銀は、マネー資本主義横行の中で、今後は、何としてでも過度な円高を起こさないことに全力を尽くさなければなりません。
 そして企業は、国内の人的資源の最大限の活用を考えるべきです。

 本来、日本の労働力の質、労使関係の安定性は世界に冠たるものです。多くの欧米諸国が経常赤字やインフレをコントロールできないのは、基本的にこの問題です。
 アジア諸国にしても、今は低賃金でも、生産性向上を越えて年々賃金水準は上がり、さらに賃金の安い国に工場移転といった動きは常態になりつつあります。

 本来、日本企業の安住の地は、先ず日本でなければなりません。青い鳥は足元にいるのです。
 与えられた過度の円高を安易に容認し、結果的に自国のコスト水準の決定を他国(国際投機資本)に任せ、コスト高を理由に日本国内の人的資源の活用を怠った「失われた20年」という苦い経験を、日本政府も日銀も、そして多くの日本企業も、今回の円安実現を機に十分反省し、今後の日本経済の再生、発展に生かすべきでしょう。
  
   (注)「2・8の法則」:2割の人が、8割の事故を起こすなど