tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

早めですが、2013年「春闘総括」

2013年04月18日 10時27分05秒 | 労働
早めですが、2013年「春闘総括」
 昨年12月、労使の春闘方針がまとまった頃は、日本経済がデフレから脱出するなどといった気配は全くなかったように思います。
 ところが年末ぎりぎりに至って、日本経済の雰囲気は変わり始めました。安倍政権の発言で円高が反転し、円安株高の兆候が出てきました。
 この現象は、黒田日銀総裁の誕生で加速され、今に至っています。

 今年の春闘は、この急速に変化する日本経済の為替環境が背景でした。株高に気を良くした総理、副総理が「賃上げをしませんか」などと春闘に嘴を入れるような状況すらありました。まさに異常な状態です。

 しかし、浮かれる政府に対して、労使は冷静でした。
 円安が一過性に終わらないかと危惧する経営者サイドが慎重なのは、ある意味では当然かもしれませんが、マスコミや「識者」の眼からは、少しでも余計賃上げを取りたいと思っているはずの労働組合(連合)が、極めて冷静に、日本経済の状態を賢察していたのは驚嘆に値します。

 表面上は「賃金決定は労使のお任せください」ということで応えていましたが、本心はまさに「余計なお世話」「素人は黙っていてほしい」と言いう気持ではなかったのでしょうか。
 冷静に考えれば、まさにその通り、政府もそれ以上のことは言いませんでしたから、事の本質は理解したのだろうと思います。

 結果的に賃上げが昨年を何円上回ったといった論評は、6月ごろに集計結果が発表され、労使や評論家筋から出るでしょうが、それは別として、大きく見れば、今年の労使の対応は、定昇の完全実施、ベアはあくまで慎重に、ボーナスは出来るだけ労働側の要求に応えようというものでした。

 円安が進行、日経平均が高値を更新し、為替差益の拡大予想が進む中で、労働側は、信じられないほど冷静だったと思います。

 思い出すのは、1950年春闘です。第一次オイルショックによる前年の33パーセントの大幅賃上げを受けて20パーセントを超えるインフレが進行する中で、経営側は、インフレが日本経済を破綻させるのを避けようと「50年の賃上げは15パーセント以下、翌年以降は一桁」というガイドポストを提示しました。

 それに対して、労働側はまさに賢明に応え、賃上げは50年13パーセント台51年は8パーセント台で決着し、日本経済は健全さを取り戻し、世界中から「日本の奇跡 」と驚嘆され、結果的に、スタグフレーションに呻吟し続ける欧米主要国をしり目に、ジャパンアズナンバーワンの基礎を築いたという経験です。

 今年の春闘で、日本の労働組合は、円安による日本経済の余裕は、人材育成、雇用改善を含む日本経済の立て直しのための前向きの投資に使うべきで、その結果日本経済が成長を取り戻したとき、本当の春闘が始まるという「労使関係と一国経済の本質」を、確りと理解していたように思われます。

 日本の経営者も政府も、優れた労働組合を持ったことに感謝すべきでしょう。