tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本の伝統文化を政治に生かす・続

2024年05月22日 14時05分22秒 | 文化社会

前回は政治が国を経営する事であるあらば、日本的経営の優れた点を政治にも生かせるはずだという事で「人間中心」と「長期的視点」の経営という点を挙げてみました。

職務中心という欧米の経営でも人間の大切さは、エルトン・メーヨーのホーソン実験以来の「行動科学」の発展の中で理解されているところですが、経営の原点が「利益」ですから、人間の重要性は「利益」実現のための手段としての重要さにとどまっています。

余計な事を付け加えれば、政府の「働き方改革」は、欧米流の経営を土壌の違う日本に移植しようとするもので、上手く育たなくて当然なのです。

ところで今回は、比較的意識の揃っている人間集団である企業と、それよりずっと大きくてメンバーの意識、思想、理念がずっと多様な人々を包括する「国」の経営について企業との違う部分を考えてみます。

国の場合は政党が分かれているように、国の経営の進め方について多様な考え方の集合体です。それを無理に1つに纏めようというのが独裁制で、その失敗を避けるために生まれたのが民主主義でしょう。

民主主義は「より多くのメンバーの支持する考え方で行きましょう」という事で、考え方の違う人も、一旦多数決で決まったら、当面それに従いましょう。という多様性の平和的共存を前提にしています。

ただし経営を担当する期限を決めて、別の考え方の人がより多くなったら、その考え方にしましょうという柔軟で、異なった意見の平和共存を可能にするように工夫された制度です。制度的には、定期的な選挙・投票、多数決というのが具体的な方法です。

株式会社でも従業員という集団においては必ずしも多数決での決定ではありませんが、株主という集団では多数決・民主主義が原則です。

ところで、平和共存を可能にする民主主義については日本の伝統文化はどんな位置にあるのでしょうか。

多くの研究によれば、日本の伝統文化の源流を形作った縄文時代1万何千年、日本列島では戦争がなく、奴隷制度もなかったとのことです。しかも日本人は世界でも有数の多様なDNAを含むのです。日本人はユーラシア大陸各地や太平洋の島嶼から移住した多様なDNAの人々が各地で集落を作り交流混血しつつ平和共存し、広汎な交流、交易が行われていたとされています。(糸魚川からの翡翠の道、長野からの黒曜石の道など)

良質な産物の地域を独占しようと戦をするのではなく、交易によって共益を大事にするといった文化が育っていたようです。

人間集団、組織の運営については、考古学的なものではなく、後世に残された記録や、日本各地に残る風習などによることになるのでしょうが、注目すべきは聖徳太子の17条憲法の第17条「夫れ事は独りにて断ずべからず。必ず衆とともに論ずべし」ではないでしょうか。

これは権力者の意思決定ついての最も大事な点をズバリ指摘しています。

山本七平氏が日本の人間集団の意思決定について指適されているのは「一揆(当該人間集団の意)に諮り・・・」といった言葉です。物事を決める時の用語でしょう。

勿論、民主主義などという言葉のなかった時代の話ですから、こうした表現になるのでしょう。しかし、その意図は明らかです。独断専行、独裁制は決して良い方法ではないことを明確に言い表していると思います。

今の自民党の国会議員の諸氏に、確りそうした物を見てほしいと思うところですが、見てもらっても、「その通りで、みんなに相談したら、政倫審の求めには応じないというので、私も・・・」なんてことになりそうな気がします。


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