tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

マクロの労働分配率と経常黒字

2016年01月12日 11時13分24秒 | 経済
マクロの労働分配率と経常黒字
 付加価値と付加価値分析について書いてきましたが、今回はその応用、あるいは補論のようなものです。

 今朝のTVニュースで、昨年11月の経常収支の黒字が1兆1000億円余で17か月連続だったといっていました。年間、あるいは年度間では15兆円ぐらいになりそうです。

 ところで、前回までのところで、付加価値の定義や計算は国民経済計算(マクロ)で最も正しく表示され、企業レベルでは統計の定義がそれぞれに違うので、どうしても曖昧さが残ると書いてきました。
 
 確かに企業レベルでは付加価値の定義上は曖昧さが残りますが、企業として、時系列に比較分析をしたり、同業他社との比較をしていく場合は、数字の取り方が一貫していれば(その定義に従った解釈をする限り)分析は可能ということができましょう。

 例えば、財務省の「法人企業統計」に従って付加価値分析をすれば、企業としての分析は十分に可能です。
 それは、企業として、その分析の結果を踏まえて、将来の経営計画の中で、投資計画と整合する利益計画、従業員満足と整合する総額人件費計画、その両方が、計画付加価値と整合するかを判断して経営計画を立てれば、十分な合理性を持つからです。

 一方、国民経済の場合はどうでしょうか。GDPを600兆円にするという計画を立て、そのための望ましい教育研究機関への技術開発投資、国としての生産設備投資計画、賃上げを奨励し、最低賃金引き上げ政策で雇用者報酬の増加計画を策定しても、今日の日本では別次元の問題が発生しています。
 
 それは、賃金(雇用者報酬)の中で貯蓄が増え、消費が増えないという問題です。数字で言えば、 平均消費性向の低下問題です。

 企業レベルでは「物言う株主」が、利益が出ているのに内部留保ばかりで投資をしないのは怪しからん、もっと成長のための投資をしろ、と言ったりします。
 マクロレベルでは、賃上げしても貯蓄に回ってしまって、「労働分配率の割に消費が増えない」、それでは消費が伸びず経済成長しない、という問題が発生し、政府はもっと賃上げをしろと言います。

 企業や家計がこうした行動をとるのは、ともに将来不安の故でしょう。無理な投資して失敗したら元も子もない、とか、貯蓄を減らして消費したら、国は老後の面倒を見てくれるのか、といったところでしょう。

 現状の国際情勢、安倍政権の憲法改正で何を目指すかの疑問、格差社会化で貧困層の拡大、新年からの株式市場の動きなどを見ていれば、誰しも不安感を強めるのではないでしょうか。
 その結果が、GDP(正確には国民所得)の使い残し、つまり経常収支の黒字の連続ということでしょう。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。