tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

為替政策: 行き過ぎた自由の再考(2)

2011年09月05日 12時31分06秒 | 経済
為替政策: 行き過ぎた自由の再考(2)
 8月11日、スイスフランは、対ドル、対ユーロで4~5パーセント下げました。理由は、スイスの中央銀行の副総裁が、スイスフラン高を防止する政策としては為替介入だけではない、と発言したことだと報道されています。マスコミでは、ユーロペッグに言及したのではなく、「それを否定しなかった」いう形の報道でした。

 ご承知のように、スイスフランは、歴史的に見ても円と同じくらい高くなっていて、日本とは経済構造、国際的に置かれた条件が違うとはいえ、矢張りスイスフラン高はこたえるのでしょう。
 ご記憶の方もおありかと思いますが、ニクソンショック以前の固定相場時代、1スイスフランは83円でした。昨日は97円で、変動相場制になってからは、円とは追いつ追われつです。

 英ポンドが固定相場時代の1ポンド1008円、ドルが360円、だったことを思えば、かつての基軸通貨国は如何に自国通貨を安くして、国際競争を凌いで来たかが丸見えです。
 この世界の2つの強い通貨の国の1つ、スイス。 日本と違って、かつて「チューリッヒの小鬼たち」などといわれたように、世界の金融市場の中心でもあった国の中央銀行が、行きすぎたマネーマーケットの現状への拒否を示唆したということになります。

 基軸通貨の座からドルがずり落ちることを、何とかこらえようとするアメリカも、実は、実体経済から乖離したマネーマーケットの動きには困っている面も強いと思われます。ドルは高すぎても困る、しかし安すぎても困る。ドルの動きは天気予報よりも読みにくいでしょう。
 チューリッヒの子鬼ならぬ「マンハッタンの大鬼たち」の行動は、次第に制御不能になってきているようです。

 だからこそ、G20やIMF は、繰り返し金融市場の規制を議論し、アメリカも 金融規制法案を成立させているということでしょう。しかしすでに巨大なエスタブリッシュメントとなったマネー資本主義を規制することは容易ではありません。現にアメリカは、実体経済の衰弱の回復の時間稼ぎに、それに依存しようとする部分も持っているのです。

 しかしマネー資本主義は、決定的な弱みも持っています。
 その1つは、マネー資本主義のキャピタルゲイン極大原理は、実体経済の経済成長原理には、人間の基本的なあり方の面で、 絶対に敵わないことです
 もう1つは、行きすぎた自由という面で、規制には極めて弱いということです。現にスイス中銀の上記の、かなり曖昧な発言で、大きな影響を受けています。

「人間は実体経済で生きている」という現実を基盤にした規制には、実体経済の裏うちの無いマネービジネスは決定的に弱いのです。
 「ものづくり」で世界に貢献する日本の出番はここにあります。


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