tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

支払能力シリーズ7: 適正労働分配率:貢献度対応か将来志向か

2016年12月05日 12時43分49秒 | 経営
支払能力シリーズ7: 適正労働分配率:貢献度対応か将来志向か
 前回労使が協力して生み出した付加価値を労使で分けるとき考え方の基準として、「貢献度」と「将来志向」を挙げました。
 貢献度による分配は「過去基準」です。将来志向による分配は「未来基準」でしょう。

 現実の分配論争は、歴史的に見ても、大体この2つのどちらを強調するかで論争になっているというのが経験的にも見て取れると思います。
 ところで、純粋に理論的に言いますと、こうなるのでしょう。

 貢献度対応は、過去の実績基準ですから、今年生み出した付加価値の労働への配分はそれへの労働の貢献実績を基準に行われるべきという事になり、結果的に、将来は過去の延長線上で推移するという事が前提になっているという事になります。
 将来計画は、今年生み出した付加価値を、将来の必要によって労使に配分しようとするものですから、将来は過去と違ったものを目指すことが出来るということになります。

 さて、どちらが合理的かという事になりますと。単純にどちらが正しいというのではなく、配分に関わる労使が、どちらの視点を重視するかで合理性も、納得性も、その中身が変わって来る様に思います。
 従業員サイド(労働組合)は通常、こんなに一生懸命働いたのだからもっと貢献度を評価すべしといった論陣を張るでしょう。
 経営側は、企業の将来の安定と発展を考えれば、資本蓄積も重要といった主張をするでしょう。

 ただ、こうした論争の中で、具体的に数字を出して、貢献度や将来計画の論拠を示すはあまりないようで、そのために客観性よりも力関係や交渉力が重視されるといったのが現実の労使の論争でしょう。

 ある意味ではこれは当然で、従業員の貢献度を数字で把握するといったことは容易ではありません。生産関数にしても、従業員の数を基準にするのが通常で、「従業員の質やヤル気」を数値化することは至難でしょう。

 他方、将来志向による分配の説明としてよく使われるのは「家庭」の例です。
 通常、家庭における経済的貢献度は父親が絶大です。貢献度対応にしますと、父親に殆ど配分しなければならないことになりそうですが、実際には主婦が財布のひもを握り(日本特有のようですが)分配先は子供の育成・教育が最優先、というのが実情のようです。
 これこそ将来志向の典型でしょう。

 「 米百俵」などという教訓もあり、将来のための支出(投資)の大切さはよく言われますが、現実は将来志向だけで生きていけるものでもないでしょう、失敗の可能性もありますから、実績としての貢献度と将来志向との適切なブレンドが大事ではないでしょうか。

 この辺りが、労使交渉、春闘の最も重要な部分で、力関係でない合理性を求めての話し合いができるかどうかで良い結果になるかどうかは決まるようです。

 2017春闘向けての連合の ベア2%基準という要求についても、こうした基準で考えれば、連合が労働の貢献度と日本経済の将来との両方をにらみながら、合理的な要求基準を模索していることが分かると思います。

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