tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

金融、財政大盤振舞いでも「インフレにならない」のか?-2

2020年05月31日 20時59分44秒 | 経済
金融、財政大盤振舞いでも「インフレにならない」のか?-2
 前回は、アベノミクス以来の金融緩和、赤字財政政策が、インフレに繋がらないどころか、政府の目指す2%インフレにもいかない平均すれば1%未満ほどの低い消費者物価上昇率で終わっていることについて「お金をばら撒いても物価が上がらない」という現実を招いているのだろうと考えてみました。

 結論は、いくらお金をばら撒いても、家計がお金を使わなければ物価は上がらないという事らしいとなりました。

 確かに一般的には物価は上がらない、消費者物価上昇率は低いのですが、消費者がぜひ欲しいと思うものは価格が上昇しています。端的に言えば、先ごろまでのマスクです。
 安倍さんはそれを見て、マスクを配れば感謝されるだろうと思ったようですが、お役所仕事ですねえ。国民に届いたころはもうマスク不足は解消していました。

 余計なことを書きましたが、物価は供給量と需要量で決まるのが現実です。
 全く違う分野ですが、今、注目される事がもう一つ起きています。それは株式市場です。

 日銀が上場会社全体の筆頭株主になったという事ですが、株やETFを株式市場から膨大な量の株で買い、国債も大量に買って市中にカネをジャブジャブに出しています。
 その種類のカネは、肉や魚や野菜を買いに行くのではありません。

 大方、株を買いに行くのでしょう。そういえば、昨年から景気が下向きの所にコロナショックが来ても、どういうわけか日経平均は連騰の様相です。
 大手企業も軒並み減益で、人や物の国際移動も困難、この不況は長くなりそうといった見方が多い中で、アメリカも日本の株高です。

 理由は、売りより買いが多いという事でしょう。日銀は昨年末で、538兆円の証券(株式や投信、国債など)を持っていますが、日銀が市場から1兆円の株を買えば、1兆円が株式市場に支払われるわけですから、そのカネでまた株が買えるわけです。

 株式市場で、株を売買する人は「このくらい儲けたからもういいや」といた限度はなく、恐らく、保有する時価総額が数字として増えることが目的でしょうから、先行き上がると思えばいくらでも買うわけで、金融緩和の効果は、物価の上昇ではなく、株価の上昇というインフレを起こし、「カネでカネを増やす世界」で循環しているのでしょう。
 この世界は、近年世界的に急成長して、金融緩和で増加したカネ(マネー)を貪欲に吸収しているようです。

 似たことは、かつてもありました。 土地バブルです、金融緩和で増えたおカネは土地神話に支えられた土地投資に向かい、地価は暴騰しましたが、消費者物価は当時にしては極めて安定でした。

 逆に、 第一次石油危機の時は毎日使うトイレットペーパーや洗剤が無くなったら大変だとパニックになり、消費者はなくなりそうなものを買い増そうとし、消費者物価は1年で22%の暴騰、一方株価は暴落という事もありました。

 つまり、物価は需要と供給で決まるという「ごく当たり前」のことが起きているわけです。

 ところで、財政や金融を緩めておカネをジャブジャブにすれば物価が上がるという考え方は、「人はおカネが手元にあれば何か買うだろう」という考え方で、そこには2つ問題があるようです。

 1つは、借金できても、給料が上がっても、カネを使わないという事もありうる。
 もう1つは、カネでカネを稼ぐというマネーゲームの世界だけでカネが回っている。

こう考えてくると、金融、財政でいくらお金を出しても、今の社会情勢の中ではインフレにはならないと判断しても必ずしも間違いではないという事になるのでしょう。
 では、これからはいつもそうなのでしょうか。(以下次回)