tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

統計不祥事の根底にあるもの

2019年01月30日 22時06分49秒 | 政治経済
統計不祥事の根底にあるもの
 国を運営する基本的なデータとなる統計で、統計の生命線である信頼性を揺るがすような問題が発生しています。
 日本の統計の信頼性や使いやすさは世界に冠たるものと思っていた私などには大きなショックです。

 統計の誤りは速く直さないと国政の根幹にさえ関わります。中には結果は正しいので大丈夫という説明のものもありますが、結果オーライではやはり今後が心配です。

 マスコミなども厚労省批判一色ですが(もちろん厚労省が悪くないとはいいませんが)、厚労省だけを責めてみても問題は解決しないでしょう。

 問題の根は大きく3つほどあるように感じています。
① 統計調査に回答する企業サイドの問題
② 統計調査を担当する官庁の現場の問題
③ 統計行政を元締めである総務省の問題
この3つが揃って初めて信頼できる統計の作成が可能になるのでしょう。

 第一の問題は、調査対象企業の問題です。督促しても回答してくれない企業が増える傾向にあるようです。基幹統計は回答しないと罰金が科されますが、回収に苦労していることは関係省庁の資料からもうかがえます(統計調査員に督促の権限を持たせよなど)。
 企業が手早く真面目に回答すれば、統計調査の生産性は大きく上がるでしょう。これは経団連をはじめとした経済団体などによる官庁統計には率先して積極回答すべしといった啓蒙活動も必要かもしれません。

 第二の問題は、統計調査員の専門誌を高めること。正確な統計が国の運営の基本であるという意識を徹底することでしょう。毎勤統計の今回の問題の核心は「サンンプル調査を全数調査として扱って(報告して)しまった」ことでしょう。
 統計についての確りした知識・意識があれば、それがどういうことか解るでしょうし、解っていれば、今回の様な事は起こりえないのではないでしょうか。

 第3の問題は、総理府の管轄と思いますが、デジタル時代の今も、紙と鉛筆、「実地他計」「実地自計」などという形がまかり通っている事のようです。
 オンライン利用による回収の効率化、回収率の向上などの論議はあっても遅々として進まないのは何故でしょうか。
 賃金構造基本統計調査でも、未だ「郵送が問題だ」になっている状態です。

 いちいち人間が行き来するのが最も手間もコストもかかるでしょう。抽出でも適切な結果が得られるのになぜ悉皆にこだわり続けるのか、やり易くしてもらえないのなら勝手に内々でやるか(試行の名目で)といったような、連携の不足による手抜きの誘発、それに統計の知識の不足が絡む、といった感じがどうしても拭えません。

 繰り返しますが、正確な統計は国家存立の基本です。政府も企業も、利用する方だけでなく、調査の段階に携わる方においても、この重要な「統計についての意識」をまず身に着けることが、統計に携わる基本ではないでしょうか。上記の三者の良好なコミュニケーションなくして、正確な統計は作成できないように思っています。