成果主義と年功賃金 5 <職能資格給、仕事給(職務給)、成果給> 前回より
もちろん日本経済の成長という成果がなければ国民生活は良くならないでしょう。企業業績が上がらなければ賃金は上げられないでしょう。しかし、それをそのまま個人に適用するのは残念ながら誤りです。
政府は毎年予算案を作り、国会を通して執行します。目的は日本人全体に出来るだけ巧くGDPが均霑するようにということでしょう。稼いでいる所にはインセンティブがあり、しかし運悪く稼げなかったところにも、安定した生活が可能になるように、苦心惨憺するはずです。
企業も同じです、円安で輸出部門は大幅増益、輸入部門は儲からない、もし社員の賃金をそれに準じて払ったら、企業という人間集団は成り立たないでしょう。
国や企業は人間集団です。人間集団のトータルな稼ぎやロスを、人間集団として飲み込んで消化し、内部の配分を成員が納得するように分配する、これが組織の役目なのです。
多くの国は福祉国家を目指し、企業も従業員全体の安定した生活を可能にしようと頑張っているのです。これは個人別の成果主義とは違った行き方です。
個人レベルになると、人間の上げる成果には大きな差があります。
端的な例を生命保険会社の勧誘員などに見ることが出来ます。生活ギリギリの人から、世界の高額所得者クラブに入るような人までいるといった成果による格差が現実です。
聖徳太子の時代から「和を以って貴しと為す」としてきた日本では、2倍働いて賃金2割増し、3倍働いて3割増などといって、サラリーマンは笑って納得していたのです。
成果を上げた個人へのインセンティブは重要です。しかしその成果を組織全体で喜べることはもっと大切でしょう。
成果主義の問題点としては、
① 成果に繋がりそうな情報をシェアしなくなる。
② 共同体意識が薄れ、組織の人間関係が崩れる。
③ 成果の数値化、貢献者の特定と評価が困難。
④ 業績評価(考課)などの場合の適正度、正確度の客観性への疑問
などがよく挙げられます。
成果を顕彰するには、カネだけでなく種々の方法があります。賃金制度における成果主義を無理に推し進めることは、日本の組織風土に馴染まない所も多いようです。会社のトータルの成果を高めるためには、いかなる方法が望ましいか、企業の実情を踏まえて、広く論議することが大切なようです。