tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

成果主義と年功賃金 3 <年功賃金の長所と欠点>

2014年12月28日 22時12分43秒 | 労働
成果主義と年功賃金 3 <年功賃金の長所と欠点>
 習熟曲線については、皆様ご存じと思います。キャリア研修などで使われる右肩上がり、しかし上に凸で、段々平らに近づいて行く曲線です。

 企業で働く方々は、多分新入社員のころの経験をご記憶でしょう。新入社員研修を経て、職場に配属、初めは何も解らずに先輩から教わった通り一生懸命。学校で習ったことは余り役に立ちません。早く仕事を覚えようと頑張った日々だったと思います。

 やっと仕事に慣れ、仕事の意味が解るようになるのに2年ぐらい掛ったのでしょうか。3年ぐらいがマンネリ化か、さらに仕事を深め能力を伸ばすかの別れ目だったりします。
 そして多くの企業では、この辺りで異動があって、他の部署に配属になり、新しい習熟曲線の始まりになります。

 こうして2~3年おきにいろいろな部所を経験し、より広い知識と能力を持った社員、多能社員になっていくわけですが、ごく一般的に言えば、その間最低10年ほどでしょうか。つまりこの間は年々能力は高まり、高度な仕事がこなせるように成長するのです。

 年功賃金はもともと経営者がパターナリズムの立場から、生活費の応じた賃金ということで、考えたなどといわれますが、「年」と「功」の2文字の組み合わせのように、功、つまり習熟曲線にも見合っているのです。日本には昔から「亀の甲より年の功」などという諺もあります。但し「功」の部分には個人差があり、小幅でも当然査定部分もあり得ます。

 仕事にもよりますが、平均的に言えば、入社10年から15年ぐらいは、習熟曲線に見合った昇給があって当然ということであれば、この間、年功賃金は納得性があるでしょう。   もちろん習熟曲線と同様、賃金カーブも上に凸、段々上昇幅は小さくなります。

 産別労組などから「35歳賃金」というポイント要求もありますが、望ましいのは35歳、つまり年功賃金が合理性を持つ限界、同時に所帯形成期の近辺で、一家の生活を賄える(種々の形の共働きを考慮して)水準まで賃金が到達していることでしょう。

 さてその後はどうなるのでしょうか。定型化していえば、3つぐらいのグループに分かれるのでしょう。
① その時点の仕事を継続して熟練工・ベテラン社員になる
② 部下指導やマネジメントの能力を身に着け、監督職→管理職→経営陣入りと成長していく
③ 専門職として、社内レベル、産業レベル、国レベル、世界レベルと進化する

 このレベルになると、年功色は次第に薄れ、能力給、仕事給、成果給といった要素が増えて来るのが自然でしょう。

 年功給の欠点としては、こうした段階になっても、自動的に昇給するといった意識が残った場合に発生する「功」に見合わない賃金(賃金コスト)の上昇です。
 かつて、高度成長期、若年層中心、インフレ高進期には可能だった賃金コスト吸収策も、低成長、マイナス成長、高齢化、デフレといった時期には為す術もなくなります。企業にとって致命傷になりかねません。

 これからはサラリーマンのそれぞれのライフステージに合わせて多様な賃金制度を「ハイブリッド型」に適切に組み合わせていく必要があるのでしょう。