tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

里山の知恵

2011年07月30日 10時38分11秒 | 社会
里山の知恵
 里山という言葉は、「村里に近い山」という意味で昔から存在したようです。戦後の武蔵野でも平地の雑木林を「山」と呼んでいました。今のように人里に近い山裾と山裾に近い人里をひっくるめて「里山」と呼ぶようになったのは、京都大学の四手井綱英氏が、質問に答えて咄嗟に山里をひっくり返して「里山」といったのが始まりといわれています。

 語源の探索は別としても、この、いわゆる里山が、豊かな自然を育む場所として広く認識されるようになったことは素晴らしいと思います。
 里山と奥山は違います。奥山は自然そのものですが、里山は人里に近く、人の手が入った、自然と人工が一体になった場所です。 

 この里山が、今注目を集めている理由は何かというと、多くの意味で、自然にも人間にも大変役立っており、大事な意味を持っていることが気付かれ始めたからのようです。
 
 具体的な例を挙げれば、訪れる人に心の安らぎや癒しを感じさせる環境と景観を生み出している、野生動物と人間の棲み分けを巧みに調整する役割をしている、洪水などの自然災害を自然自体の働きを活用して防いでいる、今世界で求められている生物多様性の宝庫としての役割を極めて効果的に果たしている、などなどです。

 北欧や中国南部にも里山に類したところはあるようです。しかし(たぶん起源を共有する)中国大陸南部や日本の里山は、単なる自然ではなく、「人間が手を入れた自然」というところに特徴があるのではないでしょうか。

 そこに里山の本質があるように私は感じています。自然は、自然のままより、それを理解した人間が手を加え、手入れをすることによって、「さらに豊かな自然」になるという事を実証しているのが里山だと考えるからです。

 人間は自然の子として生まれ、自然の中で生かされています。その人間が自然の恩恵に「有難う御座います」とお礼をする、お返しをする事で、自然をより豊かなものにするよう努力するのです。そうすれば、自然は、さらに豊かな稔りを人間にもたらしてくれます。これが里山です

 このブログの本来に照らして、これを企業に当てはめれば、経営者や従業員が協力して、自分たちの企業に、 資本や技術や人間集団としての強さを蓄積すれば、企業は、より大きな成果を生み、ステークホルダー達により大きな恩恵をもたらしてくれるのと同じです。
 経営者や従業員や株主が争って企業を収奪すれば、企業は疲弊し、倒産に至るでしょう。

 人間はこの所、エネルギー問題を典型に、自分たちの生みの親である地球を収奪したり、ゴミ捨て場にしたりして、それによって自分だけ豊かな生活をしようと狂奔して来ています。

 そして、漸くにして今、その誤りに気付き、それへの反省の心が生まれ、地球の自然の復活、生物多様性などの主張が言われ始めました。
 地球の自然を豊かにすることが、本当の意味で人間生活を豊かにする王道であることに人間社会が気付き始めたのです。

 日本人が、自然と共生しようとする長い生活の歴史の中で生み出してきた「里山の知恵」をより広く世界に知ってもらうことが、今こそ必要のようです。
 あえて繰り返しますが、地球の自然は、「人間からのお礼」を受け取れば、必ず、より大きな自然の恵みを人間にもたらして呉れるでしょう。