tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

円高を止める新機軸の経済政策-4

2011年02月09日 12時38分48秒 | 経済
円高を止める新機軸の経済政策-4
 政府が財政再建に本気で取り組むことは、従来の常識で考えれば、大変結構なことですが、国際投機資本の目から見れば、「円はますます健全な通貨になるので、何かあったら円に逃避しておけば安全」ということになり、何かあるとまた円高、$1=¥50~70になる可能性を高めます。

 そうならないために、日本が取りうる策は、「万年経常黒字の解消」しかないのではないかと「繰り返し」書いてきました
  慶州G20でも、「経常収支の対GDP比を中・長期的にゼロに近づける」ことが謳われましたが、世界で先ず日本がそれをやってのけたら如何でしょうか。

 アメリカの経常赤字解消は至難でしょう、中国の黒字解消もなかなかでしょう。ドイツはユーロ下落の中で、その気はないでしょう。
 世界に先駆け、日本がやって、G20の場でも、世界に胸を張って、あるべき国際経済関係の王道を主張するのは如何でしょうか。

 ところでそのための政策ですが、これも繰り返し述べてきていますように、主体は「家計」です。最も金を持ち、しかも有効に活用できていない 「家計」が主役になるべきでしょう。
 特に、貯蓄を持っている高齢者が主役になるべきということになるでしょうが、
「多額の貯蓄を持つ人は、思い切って収入は全部使いきろう。場合によっては貯蓄を取り崩して、 新時代の生活を先取りしよう」
というのが望ましい方向になるのではないでしょうか。

 政府はキッカケ作りのためにも、そうした動きを全面的に支援する政策を打つべきでしょう。例えば、金がないから止めようとしている「家計のエコに対する補助金、減税、エコポイント」などは、本格的な政策として考え直すべきでしょう。
 特に省エネ住宅、未来型住宅を先取りした場合に対する支援を徹底的に行うのはどうでしょうか。現在の30万円という今額はあまりに小さすぎます。

 家電でも自動車でも、1万円の補助金が10万円の支出を呼び、30万円の補助金が300万円の車の購入を促進するのです。
 ソーラー発電や燃料電池、家庭用蓄電池、省エネ型住宅建築・リフォームなどについては、家計が魅力を感じるサイズの、解り易い支援をすべきでしょう。
 LED照明も含め、一世代後の住宅は今とかなり変わったコンセプトのものになるでしょう。そうした先取りに対する支援です。
 森と同じ環境効果を持つ住宅「エクセルギーハウス」などというものも生まれています。

 将来目指す社会の方向に向かう支出を促進することは、将来のための技術開発を考える企業にとっては大きな追い風になり、技術立国日本の基盤強化にもつながります。

 こうして家計が使うべきお金の額は、十数兆円、1500兆円の個人貯蓄の1パーセント程度、本来は貯金を取り崩さなくても、今年生産したGDPを全部使いきるだけでいいのです。しかもそれで、経済成長は3パーセント高まり、円高を怖れることもなくなる、となれば、こんな結構なことはありません。経済は自立的回転を始めるでしょう。

 縮小する経済の運営は大変ですが、経済が拡大を始めれば、運営はずっと容易になります。問題は、プラザ合意以来の円高で萎縮しきった日本の家計のマインドを、通常の成長経済のマインドに戻すことなのです。それが円高を止めることにもなるでしょう。

 政府がどんな日本経済社会の姿を目指しているのか、今の状態では、財政再建以外全く見えません。財政再建は重要と国民はみんな思っています。しかし財政再建で日本は良くなるのでしょうか。財政再建→消費税増税ということで、家計はますます萎縮し、貯蓄性向を高め、経常黒字拡大、円高の危険性増大となるでしょう。これは全く逆の方向です。

 変動相場制時代の経済運営は、過去の前提条件(相場が安定しているという前提)のものとは全く違ったものでなければならないのではないでしょうか。
 次回はこの問題をまた別の面から考えて見ましょう。