tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

食糧価格とマネー資本主義  (2)金融の役割

2011年02月26日 14時25分12秒 | 経済
食糧価格とマネー資本主義  (2)金融の役割
 金融機関の役割とは何でしょうか。これは金融の歴史を見てみればわかります。
 貨幣(おカネ)というものが生まれて、モノや仕事にはそれぞれ値段がつき、物々交換は売買になり、おカネを持つことが豊かさになりました。貨幣の主要な3つの役割「価値尺度」「交換の媒介」「価値の保蔵」が確定したわけです。

 しかし人間はおカネそのもので生きているわけではありません 。衣服を着、食物を食べ、家に住むという実物の世界で生活しているのです。これが「実体経済」です。この実体経済は通常「GDP」という形で示されます。GDPが増えるのが経済成長、経済水準の向上です。

 金融は本来、この実体経済の成長発展をよりスムーズに促進するために生まれてきた機能です。特に、おカネの貸し借りに、「金利」が定着してからは(『ベニスの商人』では金利を取ることは悪いことでした)、銀行が生まれ、実体経済の発展に大きく貢献しました。
 お金が余っているが活用の仕方が解らない人のお金を集め、仕事をしたいが、おカネがない人に貸す事で、生産の増加、経済発展、生活の向上を促進したわけです。

 金融というのは本来こうした形で、実体経済の発展に貢献することこそがその役割なのです。ところが、おカネがあまりにも便利なものなので、いろいろな使い方を考える人が出てきます。

 例えば、食糧品が足りなくなるという予想の場合、生産者にお金を貸して、生産を増やし、生産者も、消費者も、金融機関もみんなwin-winの関係になるという方法もあります。 しかし、食糧品を買い占めて、値上がりを更に激しくし、高値で売って利益を上げるという方法もあります。この場合は自分はwinで、あとの人たちはloseということになります。経済成長は阻害され、社会全体としてもloseということでしょう・

 金融機関はどちらの人におカネを貸すべきなのでしょうか。当然前者でしょう。しかしここで「2種類の利得(gain)」の問題が出てきます。「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」 です。
 インカムゲインは、GDPを増やし、その分配として利得を得るものです。一方、キャピタルゲインは、値段の変動で稼ぐ、単に他人の持っている経済価値を自分の所に振替えるというものです。

 この、自分のところに「経済価値を振替移転させる」というのが、マネー資本主義の基本原理です。実体経済はどうでもいいのです。実体経済のことなど考えていたら、売買のチャンスを逃して、資金提供者から背任の罪に問われかねません。実体経済とは全く別基準の世界なのです。

 そして今、このマネー資本主義が、実体経済を混乱させ、世界経済の安定成長を阻害しています。今回の食料価格、原油価格の高騰で、国際投機資金の流れが注目される理由です。