tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経済・景気、気迷いの年末

2010年12月24日 21時23分20秒 | 経済
経済・景気、気迷いの年末
 リーマンショックから2年3ヶ月、世界景気は、何とか回復方向ですが、これには巨大人口をも持つアジア経済がテイクオフ期にあることが大きく寄与しているといえましょう。
 誠にご同慶の至りですが、日本にとっての問題は、実体経済のパーフォーマンスの良い日本がその中で1人長期のデフレ不況に苦しんでいるという困った現実です。

 2011年度の政府の経済見通しも発表されましたが、経済成長は実質も名目も昨年度より低く(1.1%→1.0%)、デフレ(消費者物価はゼロ%、企業物価は0.4%上昇なのにGDPデフレータはマイナス0.5%)から抜けられない予測なっており、その中で雇用だけが改善するといった奇妙なものになっています。閣議決定のあと発表される詳細は、どんなものになるのでしょうか。

 この所の経済の先行きは、為替レートの動向と企業収益の見込みを見ていれば大体見当がつくようですが。政府の為替レートの見通しは、今年度$1=¥85.6、来年度は82.4円で円高は進むことになっています。これはデフレ要因で、多分、消費者物価指数も企業物価も、政府の見通しに反して下がることになる可能性が高いように思います。

 もうひとつの企業収益の方は、主要上場企業ベースで、今年度はリーマンショックによる減益からの回復ということで50パーセント程度の増益になるようです。来年度は回復期も終わり、円高の影響が出て、増益幅は半分以下になるという予測のようですが、(証券会社の研究所等の予測)増益が維持できれば上々でしょう。

 しかも、企業業績の改善 は、アジアなどの低コストの国への進出による部分が大きくなりそうなので、従来のように、国内投資や国内での雇用・賃金の改善につながらない部分が増えてくるのが気がかりです。

 政府経済見通しでは、「雇用・所得環境の改善」という言葉が繰り返し使われていますが、新卒採用の状況、春闘の様相などを見ても、そう簡単に「改善」しそうにありません。
 例え名目GDPが1パーセント成長したとしても、雇用が0.7パーセント増え、企業所得も増えるとなると、1人当たり雇用者所得(賃金水準)の増える分が出てくるのでしょうか。

 更に心配なのは、経常収支黒字が今年度の16.4兆円を上回る17.6兆円となっている事で、相変わらずそれだけGDPを 使い残して、外国に貸すという、計算になっていることです。

 政府の希望的観測を入れても、経常黒字増加、円高、デフレを予想しているわけで、これがどう「雇用・所得環境の改善」につながるのか、国民の気迷いは続きそうな気がします。