tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2011年は雇用を大事にする年

2010年12月28日 21時42分27秒 | 労働
2011年は雇用を大事にする年
 菅総理は「1に雇用、2に雇用、3に雇用」といわれました。何処の国でも一国のリーダーは雇用に最も気を使うようです。それは必然でもあるし、また大変結構なことでもあります。

 しかし、昔から定義されていますように、雇用は経済の従属変数です。経済活動が停滞したままでは、雇用は通常は回復しません。今の日本の場合、経済が縮小している中で、雇用を増やそうというのですからこれは大変です、おそらく何か特別の政策が必要でしょう。

 雇用不振が凝縮されているのが、新卒の就職氷河期の問題でしょう。学校教育という社会人への準備段階を終えて、いざ社会人への旅立ちというときに躓くことが、本人にはもちろん、社会全体にとっても深刻な問題を生じることは、失われた10年 の経験から明らかです。

 ところで、日本人の生産した国民所得(GDP-減価償却)を構成するのは「雇用者報酬」「営業余剰「財産所得」の3つです。
・ 雇用者報酬=賃金や福利厚生費、社会保険料などの人件費の総額、
・ 営業余剰=法人企業、個人企業の挙げた利益の合計
・ 財産所得=預金利子、地代・家賃、株式配当など
 日本経済では7割強が雇用者報酬です。 この雇用者報酬を、働く人みんなで分け合っているわけです。

 ですが、この所、国民所得も増えませんから雇用者報酬も増えません。国民所得で見ると1997年が最大で414兆円、昨2009年は358兆円で、約14パーセント縮んでいます。そして
・ 雇用者報酬は279兆円から251兆円で、約11パーセントの減少
・ 営業余剰は72兆円から58兆円で、約19パーセントの減少 となっています。

 2010年、政府は1.1パーセントの名目経済成長を見込んで(実績見込み)おり、2011年は1.0パーセントの見込みです。
 雇用には賃金支払いが必要です。減ってしまってなかなか増えない雇用者報酬をみんなで分けて雇用を確保するという事は、具体的にはどういう事でしょうか。
 雇用を増やそうと思えば賃金は増やせない、賃金を上げようと思えば、雇用は増えない、というのが現実なのです。雇用増はその分の賃金抑制を意味します。

 正直に言えば、「1に雇用、2に雇用、3に雇用」というのは「1に賃金抑制、2に賃金抑制、3に賃金抑制」ということになります。でなければ、「1に経済成長、2に経済成長、3に経済成長」でしょう。もちろん望ましいのは後者です。
 僅か名目1%の経済成長を見込む政府です、どんな雇用政策を持っているのでしょうか。