tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

始まるか?正規、非正規の賃金調整

2009年11月04日 11時20分49秒 | 労働
始まるか?正規、非正規の賃金調整
 失われた10年を何とか乗り切り、何とか改善の方向へという矢先、サブプライムの悪夢、リーマンショックで大打撃の日本経済です。
 アメリカ経済の凋落は、当然ドル安の可能性をもたらすでしょうし、それをめぐる為替戦争の中で、日本は多分巧く対処できず、更なる痛手を蒙る可能性は高いように思われます。
1%の円高は1%のコスト高です。 もともとコスト高の日本経済には大変厳しいことです。
 新政権の政策が、日本経済の活性化に巧くプラスをもたらすのかも、まだ見えてきません。

 企業は、そうした中で、自力で生き抜かねばなりません。最も大変なのは日本経済のコストの7割を占める人件費の問題です。コストの安い非正規社員の多用は次第に困難になるでしょうし、最低賃金引き上げなど賃金の底上げによる格差是正が単純に社会正義だと考える人も多いのが現実です。

 しかし、製造業であれ、非製造業であれ、正規社員だけで(正規社員の賃金水準で)利益を出せる企業は数少ないでしょう。その上、賃上げをしなくても、1%の円高になれば、国際的には、1%のコスト高 になるのです。

 こうした中で、非正規の賃金の引き上げだけでなく、労使が協力して、正規社員の賃金も総合的に考えて、本格的に人件費問題に取り組もうという例が生まれていることは極めて重要です。
 特定の企業の名を出して恐縮ですが、かつてはNTTで企業システム全体まで総合的に考える中で、正規社員の賃金構造の大改革をした例があります。最近では、広島電鉄の例が紹介されています。

 広島電鉄では、正規社員ではコスト高でやれないということで、会社が乗務員の新規採用は非正規に限るとした中で、労使が、正規・非正規を総合的に考え、全員正規にする方法を考えているのです。そして会社は、全員正規化を認め、組合は、ベテラン従業員の月数万円に及ぶ賃金引下げを認めるというのです。もちろん、移行期間は十分に取り、定年を65歳まで5年延長して生涯賃金の確保も視野という本格的な取り組みです。

 さらに特筆すべきは、労使ともに、この制度改定は、人件費コスト調整の効果だけではなく、全員正社員による社内の人間関係の融和改善、モラールの向上、安全運行への寄与などへの大きな効果を認めているということでしょう。

 製造業派遣の再禁止など論議のあるこのごろですが、こうした問題は本質的には法律で解決できる問題ではないでしょう。企業の労使、現場を最もよく知る労使が、知恵を出し合って、みんなに共通な、より良い将来を実現するように着実に努力していく問題だと思います。
 より多くの場で、労使の真剣な取り組みが期待されるところです。