tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

デフレ、金融政策の限界

2009年11月25日 11時07分23秒 | 経済
デフレ、金融政策の限界
 前回のテーマ、デフレ3悪は本当に性質のよくない困ったものですが、中でも3番目の金融不安は、金融が経済の血流といわれるだけに、経済の基本に関わる問題を引き起こします。現に引き起こしています。「流動性の罠」などと言われますが、解り難い専門用語は避けましょう。

 問題は大きく2つあるような気がしています。1つは、金融機関の収益低下、もう1つは資金の海外流出です。さらにもう1つ、投機への誘惑を加えても良いでしょうか。

 物価が下がっても、預金金利はゼロ以下には下げられませんから、貸出金利が下がると金融機関の利鞘は狭まります。その上、企業は、前回も書きましたように実質金利負担が高まりますから、いわゆるバランスシート調整(資産を圧縮して借金を返す)に必死です。当然資金需要は減ります。

 それでも資金需要がある企業というのは、デフレに関係なく伸びている企業か、業績不振で資金繰りがつかない企業でしょう。多分前者はごく少数で、ほとんどが後者という事になると、金融機関は貸し渋り、貸し剥がしで自衛ということになります。業務縮小、収益低下です。
 預金を集めても、国債で1パーセント台の運用というようなことになるわけです。そしてこの低い国債利回りとて、日本経済の成長では払えないのを無理して払っているものでしょう。

 国内で運用するとしてもそんな状態では、デフレでない資金不足で資金需要の高い海外の国での運用が考えられます。うまくいけば、金融機関の収益にはプラスになる可能性はあります。
 これは同時に相手国の経済発展に寄与しますが、日本経済にはゼロかマイナスの効果しかありません。

 実体経済をベースにした地道な資金運用で利益が見込めないと、ついつい投機的な運用に走り、キャピタルゲインを得ようとする誘惑も出てきます。キャピタルゲイン は、単にマネーのある場所が振り変わるだけで、実体経済とは関係ありません。

 金融機関がこんな状態で、手足が動かせない時、金融政策が効果を持つでしょうか。デフレの時の金融緩和が何をもたらすか、日本は「前川レポート」「新前川レポート」で推奨した内需拡大の結果の土地バブルとその崩壊 で十分経験しています。日銀が動かない(動けない)のにはきちんとした理由があると理解しています。

 日本にはお金は沢山あるのです。1400兆円を超える個人金融資産を誇る国です。デフレの原因は、お金の量や金利にあるのではなく別のところにあるのですから、打つ手も別のところにあるはずです。