tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

EVAも付加価値概念?

2009年11月13日 10時16分05秒 | 経営
EVAも付加価値概念?
 MBA上がりの人と付加価値の話をしていたら、本当の付加価値はEVAではないかという意見をいわれました。

 私はかねがね、EVAのようなものに「 付加価値」という名前をつけるから付加価値概念が混乱して困ると思っていたのですが、今様のMBAコースで習って来ると、白紙の上にEVA(Economic Value Added、経済的付加価値)とスターン・スチュアート社の登録商標のついたものを刷り込まれて、単純に信じてしまうようなことになっているのでしょうか。

 繰り返して述べることもないと思いますが、一応述べておきますと、EVAというのは税引き後の営業利益 (税引き後当期利益という説明もありますが、当期利益はすでに実際支払った資本コスト《金利》は払ってしまっていますから税引き後営業利益のほうが正しいのでしょう) から本来かかるはずである資本コスト(機会原価として)を差し引いたもの、ということになっています。

 これはどう見ても「利益 概念(の一種)」です。 
付加価値というのは、人間が資本を活用して創造した価値ですから、その配分は人間と資本に対して行われます。したがって、付加価値は、基本的には人件費と営業余剰(利益)です。
そのうちの資本に関するリターンだけを計算して、人間への配分は全く捨象してしまっているものに、Economicという形容詞をつけるにしても「付加価値」などという名称をつけて良いものでしょうか(もともと付加価値はEconomicなものですし)。

 この最も大事な「人間への配分(人件費)を全く捨象して、資本投下に対するリターンのみを計測するための概念に、「付加価値」という言葉を使った(誤用した)スターン・スチュアート社の不見識もさることながら、それをそのまま教えて良しとしているMBAのコース(少なくとも最高学府でしょうから)も困ったものだと思います。些か言い過ぎているのかもしれません。たまたまその学生が不勉強で誤解しているという可能性もあります。

 「経済的付加価値」などといわずに、せめて「税引き後正味利益」とか「税引き後実質利益」とか、英語ならば、RNPとかRNR(Real Net Profit/Return)とでもいってくれればよかったのに、と思うところです。

 経済の目的も、企業活動の目的も、人間の知識・能力を活用して「より豊かでより快適な社会を作ること」で、そのための原資が付加価値であるという付加価値の基本概念が大切であるがゆえに、付加価値という言葉の乱用が、大変気になるところですので、余計なことと思いながらも、書いてしましました。
 これも実体経済(GDP:付加価値ベース)をなおざりにしてマネーと利益中心になっている最近の風潮を反映してのことでしょうか。