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tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

生産性3原則:人間と経済の原点に帰れば

2018年10月23日 12時26分35秒 | 労働
生産性3原則:人間と経済の原点に帰れば
 前回、2019春闘に向けての「連合の基本構想」は「日本経済の現状を憂う」姿勢が表れていると書きました。
 特に強調されているのは、長期不況を通じて、日本社会の格差社会化が進んできて、景気が回復してきたのにもかかわらずその是正への動きが見えないという所でしょう。

 連合は、その辺りもきちんと見ていて、格差社会化が消費需要を停滞させ、景気回復の足を引っ張っているのだから、「クラシノソコアゲ」、「格差是正」を実現することが消費拡大、経済成長の促進につながると見ています。

 そうした視点で基本的に大事と考えているのが「生産性3原則」です。連合は何時も生真面目に「生産性3原則」を基本においていますが、これは大変大事なことだと思います。
 1955年、日本生産性本部が出来た時、「労・使・学者」の三者で合意した古いものですが、上の表題の載せましたように、人間と経済の原点にかえれば、その本質はこれしかないのです。

 という事で、温故知新の意味も込めて、これを取り上げてみました。
<生産性3原則>
① 雇用の維持・拡大 ②労使の協力と協議 ③成果の公正配分
ただこれだけのものですが、人間と経済の関係の基本はみんなここに入っています。

 「雇用の維持・拡大」は経済活動の社会的な面での目標です。経済的な面の目標は富の生産ですが、社会的な面では失業は政治家にとっても大敵、ケインズの一般理論のタイトルもまず「雇用」です。(注:雇用、利子および賃金の一般理論)
 余計なことですが、その点安倍さんは今、求人倍率が高いので安心です。
 
 「労使の協力と協議」は、企業というものは人間が「社会を豊かで快適なものにするために」人間が考え出したシステムで、組織の効率性を考えて、労働者と使用者に分かれて分担していますが、これはあくまで「付加価値生産」の効率性のための役割分担ですから、労使は対等で、互いに協力し、話し合って(協議)、良好なコミュニケーションを維持することが大事(効率的な企業活動=永続的な高生産性の実現のために)という労使の関係を指しています。

 「成果の公正配分」は、人間が考えて社会を豊かで快適なものにするために作った企業ですから、その活動の成果(付加価値)を公正に配分しようという理念です。ですから、「公正」の概念は、社会をより良くするものでなくてはなりません。資本の強欲や、社会を不安定にする格差社会化などは望ましいものではないでしょう。
 公正の概念は、社会の文化によって、どこでも同じではないかもしれません。そこは労使の協議の問題でしょう。

 戦後、労・使・学者が「3人よれば文殊の知恵」まとめたこの3原則は戦後日本の高度成長を支えました。今、停滞する日本経済の実態は、この3原則が無視され来ている結果ではないかと反省してみると、2019春闘の中で、何か見えて来るかもしれません。

連合、日本経済の現状を憂う2019春闘構想発表

2018年10月22日 15時51分27秒 | 労働
連合、日本経済の現状を憂う2019春闘構想発表
 先週10月18日、連合は来春闘に向けての基本構想を発表しました。
 2013年の日銀の新政策による異常な円高是正以来、終焉したと言われた春闘が復活、次第にその形を明確にしてきました。
 今年はその形が一段と明確になったように感じられます。

 春闘と言えば、賃上げ闘争で、労働組合が掲げるのは「賃上げ」だというのが一般的ですが、日本の連合の考え方は些か違うのです。
 「政労使」というのは国の運営に関わる3大主体ですが、多くの国では、「政府」が国全体を考え、「使用者」は企業の利益を考え、「労働組合」は賃金の引き上げを考えるというのが常識的な理解ですが、日本の場合はそういう段階を卒業し、「政労使」で日本の経済社会をいかなる形に作り上げるかを「春闘」で論じようという、「年に一度の全国的学習集会」に発展してきていました。

 これは第一次オイルショックの失敗を経験した結果、日本の「政労使」が到達した新たな次元でした。
 その後オランダが政労使のワッセナー合意などを実現し、こうした新次元の「政労使関係」が更に発展するかと思われましたが、なかなかそうはいきません。

 日本ではその後「 プラザ合意」による急激な円高があり、平成という長期不況の時代に突入し、見通しを誤った政府は為す術を知らず、労使は、この円高不況のもとでのサバイバルで手一杯、前向きの議論などをする余裕はなく「春闘は終わった」と言われたのです。

 2013年以降の円高解消で、ようやく「日本経済・社会の将来」について労使の話し合いもできる環境になって来年で6年目でしょうか、連合の意識は、長期不況で歪みにゆがんだ産業社会の状況を、立て直し、健全な経済成長路線の実現と安定した快適な社会の実現を目指しているように思われます。

 この間労使にとって迷惑だったのが、環境整備をすべき政府が本来自分の役割でない「 賃上げ奨励」に走ったことでしょう。
 昨年の今頃、連合は2018春闘の基本構想を出し、その中で賃上げ2%以上を打ち出しました。ところが後から政府が3%賃上げを言い出し、大迷惑だったでしょう。

 政府はインフレにしたかったのでしょうが(2%インフレターゲット)連合は、日本経済の現状を考えれば、経済成長(正確には日本経済の生産性向上)に見合う賃上げは2%程度と踏んでいたのでしょう。これは客観的に見ても 経済整合性のある数字です。

 賃上げは経済成長の成果の配分です。先に賃上げをしてしまいますと、経済はインフレ傾向になり、引き締め→不況の可能性が出てきます。
 連合の2%以上という表現はその辺りを確り読んで、持続的な安定成長を視野に入れた発言でしょう。これは経済運営の責任持つ立場からの発言です。

 今年は、昨年の様な事にならないよう、賃上げの%は今の段階では掲げていません。その代わり、日本社会の格差社会化の阻止を重要な力点としています。
 以前から述べている、「サプライチェーン全体への付加価値の均等な配分」の徹底です。表現は「取引の適正化」です。

 これは言い換えれば、生産性を上げたところに適正に付加価値が配分されるという考え方でしょう。生産性を上げたが納入先から値引き要求があり、生産性向上分の付加価値は納入先に移転してしまったということが無いようにしたいという事でしょう。
 これこそ政府が「下請取引適正化法」などできちんとやるべき問題です。

 日本の政府も経営者も、未だ長期不況の悪夢から醒めきっていないところもあるようですが、極めてまともな論陣を張る連合の様な労組組織を持ったことを、日本の政府も使用者(経営者)も感謝すべきかもしれません。
 春闘についてはまた折に触れ取り上げたいと思っています。

労働力不足:外国人頼みでいいのか

2018年10月13日 21時43分01秒 | 労働
労働力不足:外国人頼みでいいのか
 政府は人手不足の緩和のために、外国人労働力の導入を進めようとしているようです。産業界の中にも賛成の所は多いようです。

 日本はこれまで外国人の出入国には、国際的に見てもかなり厳格で、マスコミや識者、評論家の中には、日本の国際化の遅れを指摘する人は少なくありません。
 特に最近は、少子高齢化の進行、景気回復に伴う労働力不足の深刻化といった国内事情、外からは安全性や住みやすさ、賃金水準、技能習得などから日本行きを望む外国人の増加など、いくつもの要因が重なって、外国人の受け入れに積極的な意見が多くなっています。

 国際的にも、トランプさんのメキシコ国境の壁建設ではありませんが、外国人の流入阻止といった意見はどちらかというと評判が悪いというが現状ではないでしょうか。

 確かに人類皆兄弟で、好きな国で暮らせるというのは理想かもしれませんが、そうした理想論とは別に、外国人の流入に対する深刻な本音も見えるのが、今日のヨーロッパの移民・難民の受け入れに反対する国民意識です。

 一体この問題はどう考えたらいいのでしょうか。大変難しい問題ですが、矢張り本当はこう考えるべきではないかといった、地球市民に共通した考え方があってもいいのではないかと考えてしまいます。

 この問題には文化的側面と経済的側面の両方があるように思います。
 アメリカを例に取れば、戦後、世界人類社会の理想を掲げて民主政治を柱に、経済は自由主義市場経済を謳い、国際的ガバナンスを目指す国連、傘下にユネスコをはじめとする多くの国際機関、経済ではブレトンウッズ体制、世銀、IMF、GATTなどの活動に全面的にイニシアチブをとった時代から、今、アメリカ・ファースト、国際機関嫌い、多国間協定より二国間交渉といった内向き姿勢への大きな変化の背後に、アメリカの積極的な移民政策が関係あったのかなかったのか、検討してみる必要もあるのではないでしょうか。

 文化的側面から見れば、国としての文化のレベルを上げることは至上命題でしょうし、経済的に見れば、健全経済を維持して経済成長を目指すことは必須でしょう。
 こうした国として目指す目標と、労働力や移民の受け入れという問題が、いかなる場合に成功体験となり、いかなる場合に失敗に陥るのか、地球人類社会の総体としての発展のために十分な検討が必要のように思われます。

 人間が職に就き、技能を身に着け、それによって生活を支えるというプロセスには長い時間を要します。国際協力から考えれば、受け入れ国の短期的な事情で簡単に決められる問題ではなさそうです。
 例えばドイツでも、成功と失敗の経験を持っていますし、日本でもすでに、そうした経験はしているはずです。

 現在の日本での、人手不足だから外国人労働力をという発想は解りますが、それは裏返せが、不況になったらご帰国をお願いしますという事にほかなりません。こうした労働力の国際移動は受け入れ国の都合次第でいいのでしょうか。
 
 願わくば、相手国と日本、来日労働者と日本企業とがwin=winの関係になるにはいかなる条件が必要か、十分な検討が必要で、拙速は将来に禍根を残すようにも感じます。
 統計では日本の労働生産性はOECD加盟企業の中でも随分低いようです。生産性を上げることで労働力不足を解消する余地は大きいという事にもなるでしょう。
 
 日本としては、出来れば、自国の事情優先ではなく、相手国への経済協力、貢献を重視した政策を長期的視点で確りと考え、長い目で見て相手国からも、受け入れ労働者からも喜ばれるような政策を考えてほしいと思う所です。
 政府は人手不足の緩和のために、外国人労働力の導入を進めようとしているようです。産業界の中にも賛成の所は多いようです。

 日本はこれまで外国人の出入国には、国際的に見てもかなり厳格で、マスコミや識者、評論家の中には、日本の国際化の遅れを指摘する人は少なくありません。
 特に最近は、少子高齢化の進行、景気回復に伴う労働力不足の深刻化といった国内事情、外からは安全性や住みやすさ、賃金水準、技能習得などから日本行きを望む外国人の増加など、いくつもの要因が重なって、外国人の受け入れに積極的な意見が多くなっています。

 国際的にも、トランプさんのメキシコ国境の壁建設ではありませんが、外国人の流入阻止といった意見はどちらかというと評判が悪いというが現状ではないでしょうか。

 確かに人類皆兄弟で、好きな国で暮らせるというのは理想かもしれませんが、そうした理想論とは別に、外国人の流入に対する深刻な本音も見えるのが、今日のヨーロッパの移民・難民の受け入れに反対する国民意識です。

 一体この問題はどう考えたらいいのでしょうか。大変難しい問題ですが、矢張り本当はこう考えるべきではないかといった、地球市民に共通した考え方があってもいいのではないかと考えてしまいます。

 この問題には文化的側面と経済的側面の両方があるように思います。
 アメリカを例に取れば、戦後、世界人類社会の理想を掲げて民主政治を柱に、経済は自由主義市場経済を謳い、国際的ガバナンスを目指す国連、傘下にユネスコをはじめとする多くの国際機関、経済ではブレトンウッズ体制、世銀、IMF、GATTなどの活動に全面的にイニシアチブをとった時代から、今、アメリカ・ファースト、国際機関嫌い、多国間協定より二国間交渉といった内向き姿勢への大きな変化の背後に、アメリカの積極的な移民政策が関係あったのかなかったのか、検討してみる必要もあるのではないでしょうか。

 文化的側面から見れば、国としての文化のレベルを上げることは至上命題でしょうし、経済的に見れば、健全経済を維持して経済成長を目指すことは必須でしょう。
 こうした国として目指す目標と、労働力や移民の受け入れという問題が、いかなる場合に成功体験となり、いかなる場合に失敗に陥るのか、地球人類社会の総体としての発展のために十分な検討が必要のように思われます。

 人間が職に就き、技能を身に着け、それによって生活を支えるというプロセスには長い時間を要します。国際協力から考えれば、受け入れ国の短期的な事情で簡単に決められる問題ではなさそうです。
 例えばドイツでも、成功と失敗の経験を持っていますし、日本でもすでに、そうした経験はしているはずです。

 現在の日本での、人手不足だから外国人労働力をという発想は解りますが、それは裏返せが、不況になったらご帰国をお願いしますという事にほかなりません。こうした労働力の国際移動は受け入れ国の都合次第でいいのでしょうか。
 
 願わくば、相手国と日本、来日労働者と日本企業とがwin=winの関係になるにはいかなる条件が必要か、十分な検討が必要で、拙速は将来に禍根を残すようにも感じます。
 統計では日本の労働生産性はOECD加盟企業の中でも随分低いようです。生産性を上げることで労働力不足を解消する余地は大きいという事にもなるでしょう。
 
 日本としては、出来れば、自国の事情優先ではなく、相手国への経済協力、貢献を重視した政策を長期的視点で確りと考え、長い目で見て相手国からも、受け入れ労働者からも喜ばれるような政策を考えてほしいと思う所です。

「毎月勤労統計」のご利用には当分ご注意を!

2018年09月29日 11時30分56秒 | 労働
「毎月勤労統計」のご利用には当分ご注意を!
 この春5月9日のこのブログで「賃金上昇率の動きに変化?」を書きました。
 今年に入って賃金上昇率がハッキリと高くなっているという事を「毎月勤労統計」のデータをグラフにして説明したものです。

 私自身、この統計には 多少不安で、一時的なものかもしれないので、今後さらに見ていかないとと本当の所は解らないと書いていますが、今朝、新聞記事の中で、「毎月勤労統計」のサンプルの取り方が変わったので、過去との比較が正確に出来ないのではという解説記事があり、私の疑問は取り敢えず氷解しました。

 疑問氷解はいいのですが、賃金、労働時間その他我が国の「勤労」に関わる分野の統計としては基幹中の基幹統計である、いわゆる「毎月勤労統計」の今回の改定の結果の数字にはは些か疑問を感じているところです。

 統計には、一定の期間を定め、サンプルの再設計は当然必要ですが、今回の改定でサンプルのつなぎ方が大きく変わっていました。

 サンプルを取る母集団を「経済センサス(旧事業所統計調査)」から「事業所母集団データベース」にしたとのことですが、この違い(改善点)の説明は十分ではないように感じます。多分精度を高めるとかアップデートが適切になるという事でしょうか。

 もう1つはサンプルの入れ替え方法です。これまで一定期間同じサンプル事業所で調査し、一定期間後、サンプルの総入れ替えをし、その際発生する誤差については新旧サンプルの並行調査期間(1年?)を設けてリンク指数を作成して補足という形だったと記憶しますが、今年からはサンプルを毎年3分の1ずつ入れ替えるというローテーション方式にしたそうです。(入れ替えについての誤差については簡易な補助資料があるようです)
 
 いずれも合理的な改定という事で、行われたのでしょうが、結果、出てきた統計数値は前述のように、何か違和感を感じるものです。
 新聞の解説では、サンプルに大企業傘下の事業所が多く含まれるようになった、などとありましたが、新旧接続時点での、利用者への配慮はどうだったのでしょうか。

 日本の統計の精度は世界に冠たるものと私は信じていますが、 GDPの増加の多くの部分がGDPの定義の変更によるもの(それを断らずに安倍総理が成長率の説明に利用)だったり、裁量労働では 業務統計を正式なサンプル設計による統計の様に使ってみたりすることもあったので、何か統計の使い方も含めていい加減になっているように感じて残念です。
 正確な統計を作り、正確な使い方をしましょう。

生産性の低さと労働力不足

2018年08月14日 15時25分05秒 | 労働
生産性の低さと労働力不足
 日本生産性本部の資料によれば、日本の生産性はOECD加盟国36カ国の内で21位だそうです。
 就業者1人当たりのGDPがアメリカの3分の2程度だという計算もありまして、それをそのまま解釈すれば、日本人がアメリカ並みの生産性を上げれば、今の就業人口は3分の2で足り、後は失業という事になります。

 何か日本の生産性はまだまだ低く、先進国として胸を張れないような気もしてくるような数字です。
 日本製品の品質の良さ、サービスきめ細かさ、などなど考えてみますと、どうもこういう数字を鵜呑みにして良いのかという感じもしますが、それはそれとして、最近の人手不足感は些か異常めいた感じもします。

 安倍さんは、有効求人倍率が未曽有の高さだと自讃しますが、この種の統計は業務統計で、統計としての信用は高くありません。人手不足のときは、本当に欲しい人数だけ職安に届けるか、少し水増ししておくかなど、思惑もあるようです。
 
 外国人労働者をもっと入れ易くといった動きもあるようですが、技能実習制度なども、本来、日本の都合よりも、外国の希望にこたえるためのものと考えるのが筋でしょう。
 同時に、もう一つ考えなければならないのは、従業員1人当たりの生産性を上げて少ない人数で済ませるように考えることです。

 ブラック企業などという言葉が一般的になるほど「従業員が嫌がるような仕事のさせ方」の企業が多いようでは、生産性など上がるはずはありません。
 人事管理、人間関係論、行動科学など、人間と仕事の問題は歴史的にも最重要な研究の分野ですが、最近の企業ではこうした問題よりも、先ず頭数をそろえることの方が大事と思われているようです。

 もともと仕事の現場でいかに効率を上げるという問題は日本企業の得意技でしたが、それには、部下に仕事をさせる上司が「人を動かす」要諦を理解していなければなりません。
 それにはOJT、Off-JTを組み合わせた従業員の教育訓練が必須で、特に管理監督職の訓練は「鍵」です。

 しかし統計で見ますと、 企業の教育訓練費は絞りに絞られ、最近の収益向上の中でも減っているようです。

 多くの企業が、頭数だけに狂奔しているといった状況が、統計上も見えているような気がします。



 この図で見ますとリーマンショックを境に、実質経済成長率と就業者の関係が変わってきているように見えます。経済成長率(青)が就業者増加率を上回った分が生産性向上です。リーマンショック後は青線と赤線が交錯しています。

 忙しければ人を増やせばいい(それも非正規で)という思考方法が、垣間見えるようなグラフです。
 従業員に良い仕事の仕方を教え、ひいては自己啓発につなげるよう育成し、それを後輩や部下が伝承し、効率良く楽しんで仕事をするような職場を作り上げるというのが日本企業の伝統だったような気がするのですが。日本企業も変わってしまったのでしょうか。
 改めて、統計からはいろいろな事が見えてくるような気がします。

安倍さんの公約「賃上げで減税」はどうなっているのか

2018年07月19日 13時07分38秒 | 労働
安倍さんの公約「賃上げで減税」はどうなっているのか
 本来は労使に任せて、政府が介入すべきでない賃上げに、過剰な介入を続けている安倍さんですが、2018春闘ではとうとう「3%以上賃上げをした企業には減税する」という世界にも類例を見ない迷案を考えました。

 結果的に安倍さんの思惑は全く外れたようで、賃上げ率は、経団連調査(大企業中心)で2.54%(昨年2.34%)連合調査で、2.07%(昨年1.98%:調査対象企業異動あり)という事で、確かに前年より高まりましたが、昨年度が未曽有の好況だった事を考えれば、安倍迷案の効果ではなく、経済状況によるものと考えるのが自然でしょう。

 このブログでも、3%賃上げという数字は「いかにして計算すれば合理的か」という問題は 実は大変ですよ」と書いたつもりですが、昨年末の是正改革大綱廼閣議決定を見ますと、
「平均給与等支給額からから比較平均給与等支給額を控除した金額の比較平均給与等支給額に対する割合が3%以上であること」と書いてあるだけです。

これでは「昨年の給与支給額(残業代・ボーナス等含む)の従業員(非正規含む)1人当たりに比べて、今年のそれが3%以上増えたら」減税の対象になるという事です(日雇い関連は除く)。

 法律ですから、こんなところになるのは自然かもしれませんが、これでほんとうに安倍さんの言う3%以上賃上げをした企業に「ご褒美」という事になるのでしょうか。
 これはでは給与の計算は全て1人当たりですから労働時間は関係ありません。

 この制度は「生産性向上のための税制」と銘打っていますが、生産性向上で残業時間が短縮され、残業代が減ったので、その分すべてを賃上げに回した、賃上げは3%以上になったが、残業代が減ったので、平均給与支給額は上がらなかったといった場合はどうでしょうか。

この場合は、生産性向上分は、従業員の労働時間短縮に配分され、賃上げに配分されていません。賃金は上がっていませんが、生産性向上が目的なら、まさに評価されるべき状況です。しかし法人税減税という恩典はないでしょう。
 
 そのほか企業内の雇用の新陳代謝(高齢者退職、新人採用)や、パートの労働時間を延長したら給与の支給が増えたとか、いろいろ問題になるケースはあるでしょう。
 こういう事を「法律」でやろうとすれば、問題が全くないようにすることは不可能でしょう。
 矢張り基本は労使に任せ、それぞれの労使が状況に応じた納得した交渉結果が、進むべき方向に動くように、政府は「大きな経済政策」を考えるのがいいのでしょう。
 
 すでに条件が使いにくいとか、厳しすぎる、手間暇がかかりすぎるといといった苦情は種々あるようです。
 政府が実態を知らずに余計なことをやると、不公平が拡大するだけのような気がします。

「一専多能従業員」の育成:日本的経営の得意技

2018年07月06日 11時30分29秒 | 労働
「一専多能従業員」の育成:日本的経営の得意技
 最近あまり聞かれなくなりましたが、かつて日本経済の進展が世界から注目され、いわゆる日本的経営も欧米からアジアまで広く関心を持たれていた頃、この言葉が仕事の現場でよく使われていました。

 意味するところは、まさに読んで字の如しで「1つの専門領域を持っていて、その外にその専門領域を中心に多様な技能を持っている多能工」という事です。

 多能工というのは単能工に対置される言葉で、複数の仕事をこなせる能力を持つ熟練工という事です。
 欧米では、先ず仕事があって、その仕事の出来る人を採用するというのが一般的ですから、単能工が普通で、多能工はあまりいないという事のようでした。

 日本では、職長クラスの人は部下の仕事はすべてこなせ、偶々部下がいないと、「お前の仕事、やっといたぞ」などというのが当たり前などと言われました。
 日本企業と海外企業との接触が多くなり、欧米企業も多能工の有用性を認識し、multi-skilled worker が注目され、アジア新興国などではQC活動や5Sなどと一緒に日本式の多能工育成が流行していた時期もありました。

 前工程から後工程まで、多くの仕事の中身を知っていれば、どうすれば仕事がより効率的に流れるかアイデアも出やすいでしょう。
 事務部門でも、同じようなことはあります。労組の専従が異動で人事部に来て、労使の対立調整がより合理的になった、などいう話もありました。

 多能工を養成するためには人事異動が必要です。これは職務給のもとではうまく出来ません。異動のたびに賃金が変わったのでは(馴れない仕事に行ったら賃金が下がったりして)巧く行きません。

 日本の人事制度は、昔から社内ローテーションと言われますように、異動が盛んで、多能の人材を育て、その中での得意分野が「一専」となって「一専多能」の人間を育てて来ていたのです。
 「多能」の裾野が広いほど「一専」の能力も高まり重要な仕事に配置されて(昇進して)行くのです。

 政府は「同一労働同一賃金」を推進しようと言っていますが、これは見かけの労働が中心の話で、「一専多能」の多能の部分(これは日常業務では潜在していることも多いでしょう)をどう評価するかなど、欧米流の制度では測れない、幅も深さも違うといった問題をはらんでいます。 
 厚労省の「ガイドライン」の作り方が難しくなるわけですね。

働き方改革の行方:法案は通ったが:2

2018年07月01日 10時39分08秒 | 労働
働き方改革の行方:法案は通ったが:2
 前回は「働き方改革」で日本経済の生産性が上がるかという点を取り上げましたが、どうもそうはならないようです。

 国民経済生産性が上がるには「経済成長」が必要です。今のアベノミクスでは、順調な経済成長は難しいでしょう。消費が伸びないからです。経済が伸びないで生産性が上がると雇用削減か時短かワークシェアリングで実質所得の低下になります。

本当は、消費拡大策を取り、経済成長を実現する中で、生産性を上げるべきでしょうが、アベノミクスにはそれがありません。

 逆に働き方を改革すれば経済が成長すると考えているのが「働き方改革」ですが、それは政策が逆で無理ですよと言わざるを得ません。

 「働き方改革」の基本理念は、 繰り返していますように企業と従業員の関係を人間中心の日本型ではなく、職務中心の欧米型にしようという事です。
 職務給や成果主義を取り入れ、正社員と非正規社員を同じ待遇にしようという事ですから、これは現実には、非正規を正規並にするのではなく、雇用スタイルを欧米型にして、日本型正規社員をなくすという方向なのです。

 雇用を流動的にし、何時でも誰でも適職を選べるようにしようと言い、兼業や副業も推進すれば、それが「働きやすい環境」だと言っているのです。

 日本人の好む雇用のシステムは、選択の自由ではなく、雇用の安定と企業内の豊かな人間関係です。これは日本的正社員制度でないとうまく行きません。新卒一括採用が、学生側からも、企業側からも、当然のこととされているのを見れば、それは明らかです。

 就職協定などというものが、こんなに問題になることは欧米ではあり得ません。そして若年層失業率は欧米では大抵平均の2倍と高いのです。
 
 これまでも書いてきていますが、いくら法律を作っても、現実の日本の産業社会では、法律の趣旨は換骨奪胎されて、日本型に改変されたものがだけが機能していくのでしょう。
 基本的には、戦後からあった 「職務給」導入の動きが、結局日本型職能資格給になっているというのが好例です。

 労働時間に関しては、最初は長時間労働をなくすという触れ込みでしたが、裁量労働は取り下げましたが、「高プロ」には固執し、さらに上記のように 兼業・副業の奨励など、本音は労働時間短縮ではなくて、もっと働けという事のようです。

 問題の「高度プロフェッショナル」については、恐らく普及はしないでしょう。社員でありながら、特技を生かして自分の裁量で働くという、社内請負型、社内契約社員型を支援しようという活動は、今迄もありましたが、結局は殆ど受け入れられていません。

 「高プロ」は本人の選択でという事ですから、会社が強制すれば別ですが(それではパワハラ、不当労働行為の恐れが出てきます)、現実の企業の場では普及はしないでしょう。
 結局ごく少数の例外的な人のために、膨大な時間とコストをかけ、成果の無い法律を無理して作ったという事になるのではないでしょうか。

 しかし、法律を作ったのですから、行政の方が何もしないわけにはいかないでしょう。日本の雇用システムには馴染まない邪魔な規制や行政指導が行われる可能性はあります。

 その点では誰もが「自分の望む働き方を確り考えなければならなくなる」という副次効果はありうるでしょう。これは良いことだと思います。
 一言添えれば、働き方・雇用問題で、今本当に必要なことは、不本意非正規を早急になくすという事でしょう。これは法律では出来ません。

働き方改革の行方:法案は通ったが

2018年06月30日 10時35分03秒 | 労働
働き方改革の行方:法案は通ったが
 昨日、6月29日、政府が最重要法案と称する「働き方改革法案」が成立することになるようですが、それで日本人の働き方はどうなるのでしょうか。
 これまでも書いてきましたが、法律制度が変わっても、働き方といったものは、社会文化的背景の中で出来上がっているものですから、ほとんど変わらないと思っています。

 安倍内閣は、OECD主要国の中でも常に低位と言われる日本の生産性をこの法律で上げられると思っているのでしょう。だから最重要法案なのでしょうが、残念ながら、その目的は果たせそうにありません。

 根本的な理由は、この法案が「欧米における企業と従業員の関係」を日本に持ち込もうとしていることにあります。ところが、欧米と日本の「企業と従業員の関係」は基本が違うのです。
 欧米では企業の収益と自分の給料が関係あると思っているのは極く少数の幹部だけでしょう。しかし日本ではほとんどの従業員が(時にはパート・アルバイトに至るまで)企業の収益が上がれば自分の給料に関係があると思っているのです。

 これは日本の企業が基本的に人間集団で、従業員は「自分たちが企業を作っている」と考えているからでしょう。
 欧米の従業員は「企業を作っているのは株主とその委任を受けている経営幹部」で「我々は企業に時間を売ってその対価として賃金を得ている」、「賃率は仕事によって決まっている(職務給)」と考えています。

 ですから欧米の従業員は仕事には客観的で、もっと良い仕事があれば、何時でも変わります。
 日本の場合は、末端の従業員まで、「うちの会社」等と言い、自分と企業を一体化しています。だから勤勉によく働き、長時間労働も厭わず、「過労死」などいう言葉も生まれるのでしょう。

 日本でもパートやアルバイトは欧米の従業員と同じ雇用形態ですが、正社員と同じように、会社にコミットすることも少なくないようです。

 それなのに、なぜ生産性が低いのでしょうか。これは多くの研究、多くの解説がありますが、一つ重要な点を挙げておきたいと思います。
 この生産性本部の調査は、1970年代からやっているのですが、OECD加盟国の中で、日本はずっと20位前後で、最高が19位です。

 「ジャパンアズナンバーワン」などと言われたころは、さぞかし高かったと思うかもしれませんが、やっぱり20位か日21位(2016年は20位)です。
 しかし日本の製品は品質が良く安いという事で世界で評判ですし、近年急増する外国人旅行者は、買い物の便利さ、行き届いた親切さなどに感銘を受けています。

 こうしたことは、社会の在り方や文化の在り方の違いによるもので、生産性といった、経済効率の数字だけで測ると違和感のある数字になるのかもしれません。
 働き方改革では、この問題解決は恐らく不可能でしょう。

 今回はさしあたって生産性の問題について論じましたが、人間の生き方と働き方といった問題についても論じていきたいと思います。

「スマート・ワーク」を流行らせよう

2018年06月25日 13時41分17秒 | 労働
「スマート・ワーク」を流行らせよう
 国会の会期延長が決まって、与党は最重要法案という事で、「働き方改革」と「カジノ」を何とか通したという事のようです。

 こんなものが最重要法案になるのが、竜頭蛇尾となったアベノミクスを象徴するのかもしれませんが、カジノは論外として、「働きかた改革」についても、高度プロフェッショナルへの固執、副業・兼業を推進する方針など、当初掲げた長時間労働是正は何処へ行ったのかというような状態になってきました。

 もともと「働き方」などというものは極めて個人的なものですから、法律で決めるとすれば、賃金で言う「最低賃金」と同じように、1日の最長労働時間ぐらいでいいのです。後は働く本人あるいは労使の交渉に任せれば、立法の手間もコストも大幅減です。

 そういう意味で「本当の働き方改革」は、働く人それぞれの心の中に織り込まれなければ生きてこないものなのでしょう。

 このブログでも既に「働きかた改革」法案に関連して、「 スマート・ワーク」を提唱しました。政府与党の掲げる「働きかた改革」が何か訳のわからないモノになってしまった現在、改めて、個人ベースの「働きかた改革」について真剣に考えなければならない思うところです。

 最近、マスコミその他、いろいろな場で「スマート・ワーク」という言葉が流行り始めています。私もこの言葉は大好きで、心の中では、この言葉が流行れば、それこそ本当の「働き方改革」に繋がるのではないかと考えているところです。

 電力関連では、多様な電源から供給される電力を最も効率的に、多様な消費者に供給する配・送電網をスマート・グリッドというようですが、いろいろな仕事を最も効率的にこなすのが「スマート・ワーク」でしょう。

 工場でも事務所でも、超ベテランの動きには無駄がありません。仕事場も卓上も綺麗に方付いていて、忙しそうな顔をしていませんが、仕事はどんどんすすんでいく・・。そんなイメージでしょうか。

 多分、頭の中もきちんと整理されていて、仕事の順序、段取りなどは瞬時に判断し、意思決定しているのでしょう。
 5SやQCの7つ道具などは頭の中の引き出しに整理されていて、体を動かすときは無意識に動線管理をしているのでしょう。

 管理職であれば、仕事に対する組織・人間の最適な組み合わせが即座に判断でき、無駄な時間を使わないために生じる余裕が、部下を育てる言動や職場の和を保つジョークなどを生むでしょう。

 そうした理想のスマート・ワークの基盤は「時間に対する意識」だと考えられます。仕事を命じる者、仕事を実行する者の時間管理の意識のベクトルが揃えば、組織としてのスマート・ワークにつながるでしょう。
 
 時間に追われるのは「ダサい」仕事の仕方でしょう。時間をスマートの管理できるだけの時間管理の技を身に着け、それによって逆に時間の余裕を生むというのが「スマート・ワーク」でしょう。

ダサい仕事の仕方は止めて、我が職場は「スマート・ワーク」の職場といった具合に「スマート・ワーク」ということばを、5SやQC のように、職場の合言葉にするのはどうでしょうか。

「残業代削減分」をどう配分するか

2018年06月08日 10時24分23秒 | 労働
「残業代削減分」をどう配分するか
 この問題については、以前にも 一度取り上げましたが、最近具体的な企業の事例なども出てきたようなので、また少し考えて見たいと思います。

 前回も触れましたが、残業が減って、企業業績に変わりがければ、総体的に見れば、残業の減った分は生産性が上がったという事になるでしょう。

 このブログでも、賃金上昇の基本的な基準は「生産性の向上」と書いてきていますが、これに労働時間の問題も加えれば、「生産性の向上は労働時間の短縮と賃金の上昇に配分可能」という事になります。働く者のサイドからすれば、「配分すべき」という事でしょう。
 例えば、生産性が5%上がったら、労働時間短縮2%分、賃金上昇に3%分といった形です。

ところで、厚労省の毎月勤労統計を見ますと昨年度、一般従業員(パートを除く)の総労働時間は前年度比0.0%所定外労働時間は1.3%増(所定時間が短縮されて所定外が増えた)でしたが、今年に入って所定外労働時間は1月-1.3%、2月-1.4%、3月-0.7%、4月(速報)-1.3%(いずれの前年比)で、残業は減って来ています。

 こうした傾向が年間にわたって続いた場合、この削減分を従業員にどう配分するかという事になるのは当然でしょう。

 年間総労働時間で年間の付加価値を除した値「時間当たり付加価値生産性」が3%上がって、総実労働時間が1.3%短縮したとすれば、3%のうち1.3%は労働時間短縮の効果という事になります。

 さてこれをどう配分するかという事ですが、理論的には時間当たり換算の賃金を3%引き上げれば、生産性向上の成果は労使均等に分配されたことになります。
 しかし現実の世界では、そのために会社は多額の新鋭設備を導入したとか、パート従業員が増えたとか、解り易く残業代だけの収支計算にすべきだとか、年2回のボーナスに反映したほうが即効性がるとか、いろいろな見方があるでしょう。

 現実の問題としては、配分の原資をどう特定するか、どういう形で配分するか、などは、各社各様の事情があるでしょう。
 これは、それぞれの企業で、労使交渉、労使協議会などで、お互いに納得できるような形で考えていくのが一番いいようです。

 労使がきちんとやらないと、また政府が口を出したり、余計な法律を作ったりという事になるかもしれませんので・・・。

高度プロフェッショナル制度の本質

2018年05月31日 10時56分21秒 | 労働
高度プロフェッショナル制度の本質
働き方改革法案は今日採決されることになるようです。
この法案の意図する2つの主要点は、「長時間労働の是正」と「同一労働・同一賃金」という事だったと考えていますが、「同一労働・同一賃金」のほうは正社員には適用しないという事で、パートと正社員の均衡といった良く解らないものになりました。

「長時間労働の是正」は残業の上限規制など、生真面目で勤勉な日本人が、働き過ぎにならないようにという事を目指すのかと思っていましたが、裁量労働や高度プロフェッショナル制度など抜け道を作る事で、本来の趣旨が良く解らなくなっていました。

 裁量労働の方は根拠にしたデータが余りに杜撰という事で取り下げになりましたが、「高度プロフェッショナル制度」は残っていて、長時間労働が無制限に認められると野党は反対という事でしょう。

 ILO(国際労働機関)条約の第1号が「週40時間制」であることからも知られますように、労働時間を適切な長さにするという事は、歴史的にも働く者の悲願でしょう。

 高度プロフェッショナル制度というのは、その意味ではその枠を外すという事です。それが許されるとすれば、それは「労働」ではない働き方や仕事の仕方という事になるのでしょう。
 つまり労働基準法などで考えている労働というのは、自分の意思ではなく、他人の意向(指揮・命令)によって働き、その対価を受け取るという行動についてのものです。

 他人の掣肘を受けず、自分の意思で働くのは、労働基準法の労働ではないでしょう。
 高度プロフェッショナルという方たちは、企業に所属はしているが、働くのは経営者や管理者の意向に(あまり)左右されずに、自分が思うように働くという立場の人たちを想定するという事になります。

 現行の労働基準法では「管理者はそういう(自分の意思で働く)人達だ」という事になっているのでしょう。
(管理者の過労問題は周知のことですが、ここでは論じません)
 その意味では、高度プロフェッショナル制度の適用の要件に「年収」を用いるという事はどうも趣旨が違うようです。

 高度プロフェッショナルとして労働時間の枠を外す要件は「自分で自分の仕事を決められるかどうか」という事でしょう。
 これは企業の社員でありながら、実質的には個人で仕事を請け負う「企業内個人請負」でなければならないという事ではないでしょうか。
  法案では、この制度の選択は自由という事のようですが、基本的に「集団主義、チームワーク重視」の日本企業の中で、法律まで作ってこうした制度を作る必要があるのかは今でも疑問です。( 日本的な対応策は今までもあるのです)

法律になれば、企業としては、その適用者になる選択はあくまで本人の自由意志といったことの徹底、さらには、こうした自由度の高い働き方を選択する際の従業員自身の目的意識、意識改革など、運用を誤らないためのいろいろな条件が現場では必要でしょう。
 
 与党は他方では副業、兼業などの二重就業を奨励するような考え方もあるようで、働き方改革というのは一体何を目指しているのかどうにも良く解りません。

副業、兼業、二重就業、現実は多様です

2018年05月26日 10時51分25秒 | 労働
副業、兼業、二重就業、現実は多様です
 「働き方改革」は、長時間労働阻止が主要な目的かと思っていましたが、安倍首相は副業や兼業の普及は極めて重要だと言っているようです。それを忖度してか、厚労省が用意する「モデル就業規則」もこれからは従来の副業禁止規定などは止めて、副業、兼業を原則容認に変えていくようです。

 サラリーマンが副業をやるかどうかについて、政府が方針を出すということになるわけですが、そんなことを税金まで使って 政府がやる必要があるのかと大変おかしな感じがしました。
 
 副業・兼業をやるかやらないかは、まず本人の意思です。兼業農家もそうですが、政府が世話を焼くことではなさそうです。
 趣味を副業にしている人も大勢います。書道や生け花、算盤の先生、私もサラリーマンの傍ら、翻訳をしたり関連する原稿を書いたりしていたこともあります。

 どこの企業も、勤め先に迷惑を掛けなければ、副業を制限するようなんことはしません。こうした副業は自己判断の世界です。
 ただ、問題があるすれば、これは従来から企業は真剣ですが、社内の技術やノーハウの流出の可能性がある場合です。これは当然に規制されるべき問題でしょう。緩められたら大変です。

 この問題については、高度技術を持つ企業は、従来から適切に対応してきています。企業の死命を制する問題ですから当然です。
 政府が副業は良いですよと言っても、この問題は、全く関係ない分野でしょう。

 さらに別の問題があります。これは副業というより二重就業といったほうがいいでしょう。今の仕事では給料が足りないから、夜などに別の会社で働くというケースです。
 本人にすれば、生活出来るか出来ないかという深刻な問題ですから、あえて、長時間労働も辞さずの二重就業です。

 会社で残業させてくれれば、25%の割増賃金ですが、残業はダメだというから、安い時給で慣れない仕事、自分の健康をすり減らしてというのが本人の感覚でしょう。

 安倍さんの言う、「副業や兼業の普及は極めて重要だ、」というのはどういう意味なのでしょうか 収入が増える、新しい技能の習得になるなどの説明もあるようですが、現実はもっともっと複雑で、一概に「副業や兼業」と括れるようなものではないでしょう。

 政府が決めるのではなく、それぞれの企業、個々の労働者の選択を尊重して、余計は世話を焼かずに働く現場に任せるのが最も合理的な選択だと思うのですが。

「働き方改革」が要請するもの

2018年05月23日 21時14分58秒 | 労働
「働き方改革」が要請するもの
昨日は、書く気力を失ってしまって失礼致しました。
 偶々と言っては良くないかもしれませんが、アメフト問題での渦中の学生が、自分の思う所をすべて正直に話すのを見て、その生真面目さに、改めてこれが本来の人間の姿だとつくづく感じ、私自身もめげてはいられないと気を取り直すことが出来ました。

 今日は、「働き方改革」法案を衆院の委員会で採決する予定だったようですが、これまでも書いてきた、働き方改革法案の問題点を前提に、「働く現場」にもたらされる影響、必要になると思われる事柄などを考えて見たいと思います。

 働き方改革で政府の構想は、大きく2つの点に関わります。1つは、長時間労働をなくそうという側面、もう1つは、職場での均等待遇の実現の側面でしょう。
 しかし長時間労働を無くそうという側面には2つの全く違った視点が混在しています。その1つは高度プロフェッショナル制度(かつては裁量労働も)、もう1つは副業の奨励です。
 
 均等待遇については正規と非正規労働者の均等待遇という事のようですが、これは、恐らく実効性の無いものになりそうで、成立しても無駄なものになりそうな気がします。

 改革を謳う政府の考え方のベースにあるのはどうも「自由な働き方を選択できるのが一番いい」という事のようです。
 おそらく欧米流の、「職務中心・個人ベース」への舶来崇拝があって、「人間中心・集団主義」という日本の文化は遅れた非合理的なものという先入観を持つ人たちの発想に引きずられたものなのでしょう。

 キリスト教を中心にした西洋文化圏の働き方意識と、日本の共存と共生、人間集団の凝集力を生み出す働き方の違いがほとんど見落とされているのが今の働き方改革でしょう。

 多分、日本社会、日本企業は、法律の趣旨を換骨奪胎して、日本らしい形に咀嚼変容して対応するという事になるのではないかと思いますが、法律が出来てしまえば多少は都合が悪くても強制されることもあるでしょう。

 今、与野党間で一番問題になっている高度プロフッショナル制度などが典型的ですが、多くの日本人は、たとえ高度の職業能力を持っていても、「1匹オオカミ」的な人は少ないでしょう。
 野党や連合などが心配していますように、一旦決まると適用範囲が広がる可能性もありましょう、上司の管理に仕方や、職場の人間集団の雰囲気によっては、真面目で責任感の強い日本人です、組織のためなら(今の官庁に典型的に見られますね)と考え、無理な忖度も長時間労働もしてしまう恐れは無きにしも非ずです。

 これからの本当の働き方改革は、それぞれの個人が、集団に埋没しない個人の自立力を持ちながら、日本の伝統文化に根差す集団の凝集力を発揮するような「精鋭の集団」、最近の言葉で言えば、「スマート・ワークが出来る人たちの人間集団」を創っていくことでしょう。

 そこで最も重要になるのは経営管理者の能力でしょう。しかし、ここ30年の長期不況の中で、残念ながら経営管理者の教育はかなり手抜きされてきたようです。
 恐らくその分、労働組合の活動に頼らなければならないことが多くなるように思います。労組も、長期不況の中でその活動は沈滞してきましたが、「高プロは組合員ではない」などといわずに、高プロからパートまで、幅広い分野での、より良い働き方実現への活動の積極化が期待されるようになるのではないでしょうか。

賃金上昇率の動きに変化?

2018年05月09日 14時25分37秒 | 労働
賃金上昇率の動きに変化?




 前回、この3月の勤労者所帯で可処分所得は増えたのに消費支出は減って、結果的に平均消費性向が下がっているという結果を見ましたが、今回は、可処分所得の元になる賃金の動きを見てみました。

 というのは、今日、厚生労働省から「毎月勤労統計」の3月速報が発表になったからです。
 上のグラフは調査産業計の一般労働者(パートは別集計です)についてのものですが、この1年間、つまり昨年4月から今年の3月までの賃金指数(毎月勤労統計では賃金実額を1人当たりに直して、時系列比較がやり易いように賃金指数を発表しています)で対前年同月の上昇率(%)をグラフにしたものです。

 ご承知のように、「現金給与総額」は所定内給与と残業代とボーナス等の合計、所定内給与はいわば月例給という事です。

 ご覧いただきますと解りますように、昨年12月までは対前年上昇率は、どちらも1%未満という水準で、昨年7月にちょっと異常なマイナスがありますが、あまり変化はありません。

 しかしよく見ると現金給与総額の方は年末にかけて少し上がっていて、今年1月に入りますと現金給与総額も、所定内給与も、1%に載せて来ています。

 これが傾向的なものか、一時的なものかは、まだ確言は出来ないという事でしょうが、4月からは春闘の賃上げの影響が出てくるでしょうし、春闘賃上げ率は昨年を上回るようですから、4月から6月辺りにかけて、春闘の結果がこの指数に反映されてくると、賃金指数の上がり方に、何らかの上向きの変化がみられるようになるのかもしれません。

 予断は禁物ですが、今後も毎月勤労統計の賃金指数の動きには関心を持って見ていくことが必要なようです。