goo blog サービス終了のお知らせ 

tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

正常な動きを始めた毎月勤労統計

2019年04月06日 23時48分20秒 | 労働
正常な動きを始めた毎月勤労統計
 昨4月5日、世間から国会までを大騒ぎに巻き込んだ「毎月勤労統計」の平成31年1月確報と2月の速報が発表になりました。
 なぜこんなバカげた大騒ぎが起きたかの事実関係は闇の中ですが、統計の信頼性が回復すれば、「まあ」一件落着という事でしょう。

 昨年は1~3月、全産業の1人当たり「現金給与総額」の前年同月比上昇率が急に高くなりびっくりしてこのブログに書いたのが5月9日でしたが、今年の2月速報は、景気減速を反映してでしょうか、所定内給与こそマイナス0.1%(前年同月比)ですが、残業などを含む「現金給与総額」は0.8%(同)のマイナスです。
マスコミが指摘しますように物価上昇を差し引いた実質賃金ではマイナス1.1%(同)という残念な結果になっています。

 折角統計が正常に機能し始めたのですから、お祝いで少しいい数字が出てくれればいいなと思っても、そんな思いを忖度してくれるほど現実は甘くないという事でしょうか。
 
ここで「毎月勤労統計」が正常に機能し始めた、とわざわざ指摘していますのは、それなりの理由があると理解しているからで、その点についてちょっと付け加えておきたいと思います。

 昨年の1月以降の賃金が、前年に比べてどうも上がりすぎているように感じられるというのが問題の発端で、その原因は一番賃金水準の高い東京都の500人以上の1464事業所の調査について、全数調査と決められているのに、厚労省が独断でほぼ1/3の491事業所を抽出した抽出調査にしたのが平成16年でそれから平成29年まで抽出調査を続けていたのです(厚労省の説明)。これだけの事業所数があれば、抽出調査にしても、統計数理上は問題ないと認識したからでしょう。

 もちろん抽出調査の数字を1464社に復元して、1464社の調査結果としていれば問題なかったのですが、調査の結果を集計する際、500人以上の事業所は全数調査という決まりなので、491事業所を「全数」として集計してしまったとのことです(厚労省の説明)。

 その結果、残りの973事業所は「存在しない」ことになり、賃金の高い大企業の事業所の集中する東京の500人以上事業所の約1/3が統計から抜け落ちることとなり、全国、全産業の平均賃金が実態より低くなってしまっていたのです。

 つまり、平成16年から29年までの毎月勤労統計の数字は、14年間実態より低くなっていたという事で、このあたりが省内でも問題になったのでしょう。平成30年の1月から1464社に復元して出すことにしたのでしょう。結果は統計の中に最も賃金の高い973事業所が入ってきたので、平均が高まり、「え!なんで急に高くなったの」という事で、平成16年からの 統計集計上の「取扱錯誤」がバレてしまったという事なのです。

 厚労省の文書では、原データが残っている平成24年以降については復元した「再集計値」を発表していますから、一部は不完全ながら、最近の数字については正常化したと判断できるといっていいのでしょう。

 加えて厚労省は、引き続き経緯を調査し、再発防止に努めるといっていますが、何時、誰が、何処でどう間違えたかは多分永久に「不明」という事で終わるのではないでしょうか。なんとなく、そんな気がしています。

2019年春闘大手妥結へ

2019年03月14日 15時28分21秒 | 労働
2019年春闘大手妥結へ
 今年の春闘は今日が集中回答日ですが、主要企業では昨日から交渉をまとめようとの労使の努力で、交渉結果がマスコミから報道されています。

 アベノミクスが喧伝されるようになってから、政府が毎年春闘に介入し、官製春闘などと言われてきましたが、今春闘では労使ともに、賃金決定は労使の専管事項という世界の常識に回帰してきたようです。

 折しも、世界経済情勢は米中貿易摩擦などを中心に、先行き不透明な様相になり、日本でも中国経済の減速の影響、これから本格化する日米のFTA交渉の先行きなどを含めて、労使双方がともに 慎重な賃金決定に動いたようです。

 春闘というのは、一般的には労使が交渉して、賃金が何円、何%上がるかという交渉という事だけのように見えますが、この実は、年1回のこうした全国の企業に影響力を持つ労使の活動によって、日本経済のあるべき姿を見定めていく重要な行動なっているのというのが本当の姿というべきではないでしょうか。

 ご承知のように、日本経済の規模はGDPですが、これは1年かけて国民が働いて生み出した経済的価値(付加価値)で、これが雇用者報酬(賃金)と営業余剰(利益)に分配されて、政府は雇用者報酬から所得税や社会保険料を取り、営業余剰からは法人税や社会保険料を取り国家予算を組んでいるということにつきます。
 
 つまり、労使が働いて生み出した付加価値を労使間でどう配分するかが「春闘」で決まるのです」。経済の歴史を見れば、この労使の分配のしかたがその国の経済の先行きを決める基本的なものということが知られます。

 もう少し付け加えれば、労使が生み出した付加価値という「パイ」が大きくなれば労使への配分は増え、「パイ」があまり増えなければ分配もあまり増えないというのは当然で、この「パイ」の分配に失敗すると分配関係が歪んで、経済的、社会的不安定が発生するということになっていくというのがこれまでの経験なのです。

 こうして「春闘」は、日本経済の在り方の基本を形作る作業を、日本経済を担当する労使が年1回、全国的な規模で議論し決定するという大変な行事なのです。
 労使に良識があれば合理的に平穏に収まりますが、労使関係が悪ければ、ゼネラル・ストライキや暴動にまで発展することすら起きるわけです。

 戦後日本の労使関係は、そういった時を克服し、世界に冠たる安定した「日本的労使関係」を確立してきました。
 そして今、日本の労使関係は、健全で安定した社会の実現のため、格差社会化に流されがちな世界的な風潮の中で、格差社会化阻止を目指して、新たな方向を模索しているように思われます。

  日本的労使関係の特徴は、労使それぞれの事情は大事にしながらも、その先にある労使共通の目標である日本経済・社会の安定的発展を目指しているという点が明確なところにあるといってよいでしょう。(「連合白書、経団連「経労委報告」など」

 そんな視点で、今日の集中回答日から、中小企業まで決着を見る6月ごろまでの春闘の姿を見ていくことが「春闘の役割」への理解としては必要ではないでしょうか。

新入社員入社まで1か月、初任給2題 その2

2019年03月03日 22時58分26秒 | 労働
新入社員入社まで1か月、初任給2題 その2


厚労省:「賃金構造基本統計調査:所定内賃金」

前回述べましたように、初任給は、社会人、サラリーマンになって、初めて手にする給与、自分が社会の役に立っていることの証拠として受け取るものです。
 カネを払って勉強するという役割から、社会に貢献してカネをもらうという180度の大転換のスタートです。

 ところで、欧米流の賃金システムは通常、職務給ですから、日本で言えばパートと同じで、新卒でも高齢者でも同じ仕事に付けば同じ賃金です。
 では日本の初任給というのは何でしょうか。
はっきり言えば、「まだ仕事はなにも解っていないけれども、此の賃金でスタートして年々習熟に従って賃金が上がっていきます。頑張りましょう」という賃金でしょう。

 ではこれから年(勤続)と共に「賃金はどんな風に上がっていくのか」というのが標準的な賃金カーブという形で会社ごとに決まっています。会社ごとのものは、その会社の賃金規則や賃金協定になっているわけですが、日本中の会社の平均はどうなっているのかは厚労省の「賃金構造基本統計調査」でわかります。

 上の図は、同統計の最新版、平成28年版(27年6月調査)からで、ここでは典型的なものを示すという意味で、産業計、規模計(10人以上企業)男子大卒、標準労働者(新卒採用でずっと勤続している人)を取り上げています。
 初任給は大体20万円強、年々ほぼ直線的に上がって行って、50-54歳の所でピークになります。(これは所定内賃金、賞与は別)

 これは、以前、日本企業の定年は55歳が普通で、年々賃金が上がっていくというシステム(いわゆる年功賃金:年齢と功労が標準的に上がっていく)は、若い時は働きより安い賃金、高齢になると働きより高い賃金というシステムで、55歳到達時にバランスがとれるようになっていたことから来ているものです。(旧定年年利後は55歳到達時点で清算〈企業によっては60歳〉で清算したのでその後は職務・能力に見合ったものにしていくべきだろうというのが現状の考え方です)

 ちなみに20-24歳~50-54歳の30年間に賃金がどのくらい上がるかと見ますと、2.54倍になっています。
 では、その間平均的に1年で何%上がっていくかを計算しますと年3.15%という事になり、これが定期昇給という事になります。(勿論大卒男子の場合です、また70歳以上の所が高いのは、この年代の多くは役員だからでしょう)

 新卒一括採用の場合、初任給というのは、ある意味ではこうした賃金のオートマティックな上昇を前提にしたもの(将来は上がりますよ)という事になるわけです。

 初任給の前提になっている此の「賃金カーブ」は極めて日本的なもので、同一労働同一賃金の原則に立つ職務給とは全く相容れないものです。

 この日本的な賃金システムが、今後崩れて、欧米流の職務給になっていくのか、定期昇給のある日本型の賃金制度が今後も生き延びていくのか、学者にも、企業の事務者にも、賃金評論家にも、なかなか読み切れない問題のようです。

新入社員入社まで1か月、初任給2題 その1

2019年03月02日 13時40分28秒 | 労働
新入社員入社まで1か月、初任給2題 その1

(日本経団連・東京経営者協会調べ)
 アベノミクスの働き方改革では、日本も同一労働同一賃金にして、学卒一括採用など止めて、欧米流の雇用制度にしたいようですが、企業も大学も学卒一括採用は止められないようです。

 特に、企業にとって、新規学卒で良い人材(素材)を確保しようという気持ちは、「企業は人間集団」と考える日本企業の本能的な欲求でしょう。
 そうした背景で見て来ますと「学卒初任給」というのは、賃金決定の中でも特別の意味を持つはずのものです。

 図は、経団連・東京経営者協会の調査による「新規学卒者決定初任給調査」の中から、平成不況になってからの「初任給を引き上げた企業の割合」を見たものです。
 平成不況になる前は、初任給は毎年なにがしか引き上げられるのもというのは企業の常識のようなものでした。

 ところで、初任給には「定期昇給分」はないのですから、初任給上昇はまさに「べースアップ」そのもので賃金全体を押し上げる可能性が大きいわけです。

そんなわけで、バブル崩壊の1991年(平成3年)以降少し様子が変わったようです。初任給水準は1995~1998年がピークで、その後は初任給も下がる年が多くなりました。

 その辺りの状況がこの「初任給を引き上げた企業の割合」でも見られます。
 2002年、バブル崩壊後の長期不況が響いて、初任給を引き上げた企業の割合は急減し、一桁にまで下がります(引き下げた企業の動きも調査されています)。

 その後、「いざなぎ越え」(好況感なき上昇)の時期に入り、「好況感なき」と言われている中でもそれでも半数近い企業が初任給を引き上げる状況まで回復しました。

しかし、リーマンショックで2009年からは、企業の9割は初任給据え置きか引き下げという状態を続けています。リーマンショックの深刻さが知られます。

 そして2014年以降は日銀の金融緩和政策で円安になった途端、初任給引き上げ企業の割合は50%水準にを回復します。
 その後、初任給水準は小幅ですが、上昇傾向をたどるようになっています。

 1か月後、新入社員になられる皆様の初任給も、昨年の初任給より高いという企業が多いのではないかと思います。
 初任給は、社会に役に立ち始めたことの証拠です。有効に遣いましょう。

改めて統計調査の重要性の再認識を

2019年01月17日 20時26分06秒 | 労働
改めて統計調査の重要性の再認識を
 このブログでもよくグラフを出します。数字も並べることが多く、出来るだけご理解いただけるように並べているつもりですが、如何でしょうか。

 その中でも統計数字の「在り方・使い方」について書いたのは、2つで、1つは裁量労働にについて政府の出した数字が出鱈目だった時、「 統計調査の重要性の再認識を」を書きました。その時の趣旨は、ああした「業務統計」の様な不確かな物を法律制定の根拠にするのは止めるべきだという趣旨でした。

 その時は、基幹統計の様な母集団が決まっていて、統計理論によって信頼性が確保されているもの(誤差率の範囲が推定可能)なら間違いないが・・・、と言う趣旨でした。
 2つ目の今回は、その基幹統計、「毎月勤労統計」に 誤りがあったという事態が起きてしまったという事になるようです。

 昔の総理府統計局、今の総務省の担当局は、統計理論の専門家を十分に擁しているはずです。間違いなど起きるはずがないのになぜ起きたかを追ってみましたが、これは、統計理論に関わるような高度なものではなく、実は、ごく単純な関係部署間の連絡ミスか手抜きの結果だったように思われます。

以下は、これまでの報道から得られる情報を使った、多分こういう事だったのではないかというこのブログとしての推論です。(「毎月勤労統計問題は整理できなくなりました」(1/11付参照)
 
 報道によれば、東京都の500人以上に事業所は数が多いから、サンプリング調査で十分正確な数字が出るから、事業所にも手数をかけ、事務処理も大変な全数調査からサンプリングに変えてもいいと総務省は考え、統計理論によって抽出したサンプルを提示したようです。

 しかしそれを正式に認めてもらうのが大変だったからでしょうか、2015年以降「内々でやっていた」ようです。そのリストは厚労省に行き、実際に調査を行う東京都に行き、その通りに調査され、その数字が調査結果として出てきたときに、(全数調査を黙ってサンプル調査にしたものですから)どこかの段階で全数調査として報告していたのでしょう。

 本来なら、1400ある事業所のうちの500事業所だけのサンプル調査ですから、事業所数を1400社に復元して報告すべきだったのです。
 受け取った方の統計処理では、全数調査で500事業所ですから、東京都の従業者500人以上の事業所は500だという統計処理になります。結果として900の事業者が統計から落ちたのです。

 東京都の500人以上の事業所はおおむね賃金水準は高いですから、高い900事業所が抜け落ちた集計結果の平均賃金水準はその分低くなります。
 それを基準にした失業給付や労災給付が低くなるという事になり、差額をこれから支払うことになるわけです。

 官房長官は違法の疑いと言いましたが、法律に違反して、サンプル調査にしたのであれば、サンプル調査にしたのですから1400事業所に復元する手続きも法律違反でやっていれば、「毎月勤労統計」の連続性は担保され、遡って、追加給付といった事は起きなかったことでしょう。

 統計理論的には十分可能なことを、何故、正式な手続きをとらずに内々でやっていたのか。正式な手続きが大変だったからでしょうか。
 その嘘が全数調査という嘘を呼び、嘘の連鎖の結果が大変なことになったという事と思うのです。
 最高の厳密さを必要とする官庁統計に関わる部局で、こうしたことが起きるという現実をどう理解すべきでしょうか。

2019春闘:より良き労使関係・労使交渉への進化を

2019年01月13日 16時20分34秒 | 労働
2019春闘:より良き労使関係・労使交渉への進化を
 今年もいよいよ日本的労使関係の中核をなす「春闘」の時期に入ります。
 戦後の労使関係の進化が日本経済の健全性を支えてきたことを、このブログでは 折に触れて述べてきました

 戦後の混乱期から1980年代「ジャパンアズナンバーワン」と言われた45年ほどの間に、日本の労使関係は労使のwin=looseの関係からwin=win の関係に 進化してきたと考えています。

 プラザ合意後のバブルや円高に耐えて、日本経済を破綻させずに此処まで持ってこられたのは安定した労使関係があったからという要素は大きいと思います。

 プラザ合意以降の円高によって強いられた長期不況の中で、労使関係は死んだとか、春闘終焉とか言われましたが、円レートの正常化とともに復活した春闘は、改めてさらなる進化を遂げていくのではないかと期待しています。

 この5年ほどは、こうした日本労使関係の歴史を知らない(?)現政権が「官製春闘」などと揶揄されるような干渉を続けてきましたが、2019春闘は、労使交渉・賃金決定は労使の専権事項という本来の姿に戻そうとする労使の意欲が見られます。

 加えて、今後の春闘の在り方を考える中で、注目すべきはトヨタ労連のベア要求を中心に置かないという考え方です。
 昨年の春闘でのトヨタの会社側からの平均賃上げ額を明示しないという方針との関係は外部からは解りませんが、一律の賃上げ額や賃上げ率を掲げ「みんなで一緒に(おててつないで)」と言われた春闘方式を卒業しようという試みでしょうか。

 トヨタ労連の言によれば、平均何%を獲得したが、その配分は会社任せ、という事では労働組合の責任は果たせない、「格差問題への対応は不可能」という事でしょう。
 連合の主張する「サプライチェーン全体への適切な配分」という視点から言えば、労働国合として、そこまで踏み込むというのは、大変だがやらなければならにという認識でしょうか。

 労働組合の団結と元気を示そうという立場からは、3000円という金額を旗印に「頑張ろう」というアプローチもあっていいと思いますが、より肌理の細かい分配問題にも政策の重点を置くというのは、労使関係の新たな進化とも見られるものでしょう。

  人事・賃金制度を管理し、配分の問題は任せてほしいと考える企業側が、最終的の如何なる反応を示すかはまだわかりませんが、労使関係が、企業経営、それも一企業を越え企業規模も超えてグループの賃金配分にまで及ぶ可能性が出てくるとすれば、さらなる注目が必要の様な気がします。

 今後も日本経済の健全な成長を担う大きな力の1つである労働組合の動き、春闘の在り方には、今春闘の行方も含め、多様な議論が確りとなされることを期待したいと思います。

毎月勤労統計問題は整理できなくなりました

2019年01月11日 17時28分35秒 | 労働
毎月勤労統計問題は整理できなくなりました
 昨年の春に気が付いた 平成30年に入ってからの賃金上昇率の高まりの原因を統計の扱い方の中で説明しようと思って試みましたが、結果は統計理論とは別のものだという事になるようで、「整理」は不可能のようですので、統計的整理は止めます。
 
 未だ厚労省から正式な発表はありませんが、現状、報道されている中から、こんなことが原因で、誤った統計数字(統計誤差ではありません)になっていたらしいという事だけ纏めておきたいと思います。

 推論の根拠となったのは、毎勤統計のデータを使った結果、失業保険や労災保険の給付が過少になっており、厚労省してそれは過去にさかのぼって支払う。過少支給の対象は約2000万人、過少支給分の総額は15年間にわたり総額530億円に及ぶという厚労相の発言です(1人当たり2650円)。

 担当大臣が誤りを認めたのですから、「やっぱり『毎勤統計』に誤りがあったんだ」ということになり、私には大ショックでした。
 こうした基幹統計(かつての指定統計)は、回答義務が法律で定められており、国の動向を国民に知らせるものですから、統計誤差以外、誤りは無いはずのものです。

 求人倍率などの「業務統計」は、それなりの意味しかありませんが、失業率(労働力調査)、消費者物価指数(小売物価統計調査)、平均消費性向(家計調査)、更には最も基本である国勢調査などの統計が信用出来なかったら、国の舵取りは出来ません。

 「それなのに何で」という感じですが、今回の誤りの原因と言われているのは、東京都の従業員500人以上の事業所については、母集団である「事業所・企業統計調査」(基幹統計:全数調査)の事業所(1400ほどだそうです)について全数調査をすべきところ1/3強の500事業所のサンプル調査で済ませていたことによると説明されています。

 東京都は大きな事業所が多く、そこで1/3ほどの事業所しか調査がされていなかったので、大きな事業所(賃金も高い)が抜け落ち、全体平均の賃金水準が低くなったという説明に聞こえます。
 そして、その誤りが解ったので、調査した事業所の数を3倍近くに膨らませて、平均の下がるのを修正(復元と言っています)したのが平成30年1月からで、そのため昨年1月から対前年同月の賃金上昇率が(異常に)高まったという事のようなのです。
 
 統計調査を担当する者の仕事としてはそんな基礎的な誤りは有り得ない筈です。500をサンプルとして調査するとしても、500事業所は統計手法に則って選び、その数値を母集団(1400ほどの)に正確に復元して統計数値とすべきで、そうすれば、全体平均が下がるといった事態は起きず、誤差は統計誤差の範囲に収まり、プラス・マイナスの誤差が出ても、統計的にはプラスの年とマイナスの年が同じぐらい出て、15年間もずっと平均が下がるという事はあり得ません。

 そこから類推されることは、東京都には従業員500人以上の事業所は調査対象になった500事業所しか存在しない事になっていた(他の事業所はなかった事になっていた)のだろうという事です。
 その他の900事業所は存在しないことになっていたので、そしてそれらの事業所は比較的賃金水準が高い所なので、それが抜け落ちたことで、全体平均が下がるという結果になったと考えざるを得ないのです。

 何故そんなことが起きるのでしょうか。基幹統計は答えないと罰則がありますが、回答率は下がる傾向にあるようです、担当者の苦労も多いと思います。しかし全数調査すべき所ををサンプル調査にしたら(これは勿論ルール違反ですが)、母集団に復元するのは常識でしょう。
基幹統計が信用できなくなったら、教育も研究も、国会論議もまともなものにはなりません。外国も日本の言う事を信用しなくなるでしょう。
 
 未だ書くべきことはいろいろありますが、この辺でやめておきます。

毎月勤労統計問題を整理すると

2019年01月10日 17時53分43秒 | 労働
毎月勤労統計問題を整理すると
 先日、毎月勤労統計(毎勤)のサンプリングの問題について取り上げましたが、その後波紋が大きくなって、2つの問題がごっちゃにされて論じられたりしていたりするので、整理しておいた方がいいように思います。

 1つはサンプリングの手抜き(東京都、500人以上規模の事業所の全数調査がサンプリング(抽出)調査でやられていた問題で、平成5年辺りから等と報道されています。
 もう1つは、平成30年からのサンプリング(抽出の仕方)の問題で、これは、一昨年と昨年の賃金額・賃金上昇率にサンプリング誤差が出るという問題です。

 前者は、現実にどのような影響が出るかの検証は、比較するデータがありませんから、多分不可能でしょう。

 後者は、比較データが発表されていますから、検討可能です。安倍総理の希望に沿うように賃金上昇率を高く出そうとしてやったなどとの見方もあるようですが、世界に冠たる正確性を自認する日本政府統計担当者が、そんな忖度はしないと信じています。

 厚労省の発表によれば、第Ⅰ種事業所(30人以上規模)は3年毎の全サンプル入れ替えからローテーション・サンプリング(毎年1/3づつ入れ替える)への移行期にあり、平成30年からサンプルの半分に1年延長が始まった、という事です。

 そこで、統計の連続性を見るために延長した事業所(共通事業所)だけの統計もとっていて、公表された統計と比較ができるようにしているのですが、厚労省の数字によれば、共通事業所あの賃金水準の方が「きまって支給する給与(残業代含む)」で月額2600円ほど高くなっています。

 つまり新サンプルを含む公表の数字がそれだけ低いという事は新サンプルの企業の賃金はもっと低いという事になります。
 ところが、所定内給与、きまって支給する給与の対前年同月上昇率を見ますと、 このブログでも指摘しましたように、平成30年1月以降明らかに共通事業所の上昇率(厚労省の数字あり)より高いという結果になっています。

 つまり、賃金の低い新サンプルを入れた結果、賃金水準の上昇率が高くなったという結果になっていまったわけです。
 厚労省の解説を見れば解るはずと書いてきた結果が、思わしくありません。申し訳ありまあせんが、もう少し考えてみますのでお時間をいただきたいとぞんじます。

今年は「生産性向上」取り組みの第1年に

2019年01月02日 14時09分19秒 | 労働
今年は「生産性向上」取り組みの第1年に
 元日はお屠蘇を頂き、雑煮を祝って書初めをしました。
 今年はいろいろな事がありそうだという思いから「波乱万丈」と書きました。それを見ていた家内が「八十路も半ばを過ぎた人の書初めに波乱万丈はないでしょう。平穏無事でもお願いしたら」と言います。

 考えてみたら、やっぱりそうかなと思い、あらためて「平穏無事」と書いて壁にピン止めしました。
 安倍総理の年頭所感も拝見しました。課題は沢山ありますが、われわれ庶民の身の回りは、出来るだけ平穏無事でありたいと考えているのが本心です。

 ところで、内外ともに風波の高くなりそうな平成31年、いろいろな事があっても国民が何とか平穏に暮らせるためには何が必要でしょうかと考えて見ました。
 勿論いろいろな条件はありますが、このブログのメインテーマである人間と経済の関係から言いますと、やはり人間生活を支える「付加価値」をしっかり作っていくという事に絞られてきます。

 繰り返し書いていますように、付加価値が人間の豊かで快適な生活を支える源です。国家予算も、社会保障も、賃金も、研究開発も、教育も、楽しいスポーツや娯楽、日々の快適な暮らしも、すべて、日本人の創った付加価値(GDP/GNP)によって支えられているのです。

 という事は、より豊かで快適な生活を可能にするためには、より大きな付加価値を創らなければなりません。しかし付加価値を創るのは人間です。

 さて、そこで日本人の得意技が出てくることになります。それは『生産性の向上』です。
 今、日本の生産性はOECD諸国の中で下位に沈んでいると言われますが、かつては世界のトップクラスが定位置でした。

 そろそろ日本人もあの頃の元気を取り戻してもいいような雰囲気になってきたのではないでしょうか。
 現場力の低下が言われ、品質の低下や思わざる事故も起きたりしていますが、日本の自動車は、世界で最もよく走り故障が少ないことは広く認識されています。
 自動車は工業製品の代表ですが、いろいろな面で日本の「技」は世界を驚かせ認められているのではないでしょうか。

 モノづくりからサービスまで、日本独特の品質の良さに磨きをかけ、それをスマートな仕事の仕方「スマート・ワーク」で創りだしていくというのがこれからの生産性の向上でしょうか。そして、それは目標を掲げた意欲的な取り組みから生まれます。そのための心構えや技法には、5S,QC、KAIZEN、などなど、先輩の蓄積があります。

 人間の知恵は無限です。やる気になれば人間の能力は何倍にも増えるというのが行動科学の中で多く立証されています。
 要は、日本人が、また本気になって、「やってやろうじゃないか」という気になることでしょう。

 今年は元号も変わります。この機をとらえて、「改めて、本気で『生産性向上』に頑張ろう」と日本人が元気を取り戻すというのはどうでしょうか。
 日本人が本気になれば、少子高齢化対策も、財政再建も、結果はついてくると思います。

問題の毎月勤労統計:本来はサンプル調査ですが

2018年12月29日 23時51分30秒 | 労働
問題の毎月勤労統計:本来はサンプル調査ですが
 厚労省の基幹統計「毎月勤労統計調査」に調査方法に手抜きがあったことが問題になっています。

 この統計は本来サンプル調査で、国勢調査のような「センサス」(全数調査)ではありません。(毎月勤労統計調査の母集団は「事業所統計」でこれは全数調査です)
 しかし、業種別、規模別、男女別、年齢階層別、正規、非正規別といった内訳についても統計的に誤差の範囲が限定されたものにするためには内訳についてもいて一定以上のサンプル数がないと、誤差の範囲が拡大してしまって、正確な統計になりません。

 勿論サンプルの取り方が統計理論に則ったもの、例えば層別・多段のランダム・サンプリングといった方法できっちりした方法によらなければなりません。

 その中で、分類別に区分していって、例えば、卸売業で規模500人以上の事業所、女性、正規労働者などといった形ですが、細かくすればするほど、対象事業所の数が少なくなって、サンプリングをすると偏りの出る可能性が大きくなりますから、そういう場合は全数調査にするといった事にならざるを得ません。
 
 今回は統計の設計上サンプル数が少ないので、全数調査にすべきところを、手間を減らすためでしょうか、サンプル調査で間にあわせた、という事のようです。
 通常、最終サンプルの数が500以上あれば、統計的に有意などと言われますが、今回の場合はどうなのでしょうか。

 サンプリングにしたが、統計的に有意と言える範囲なのかどうかという事が、統計業務をやる人には生命線だと思います。
 
 勿論、基幹統計(かつての指定統計)に回答しないと罰則がありますから、統計的有意が担保されるわけですが、手間を省くために、真面目に答えてくれそうな会社をサンプルに入れるようなことがありますと、そういう会社はいい会社(事業所)が多いですから、例えば賃金水準が高めに出るといった偏りが起こり得ます。

  このブログでも、毎月勤労統計からみて、今年に入って賃金決定の様相が少し変わって、高めいなったと指摘しましたが、せめて、「手は抜いたが、サンプリングは統計理論に基づいていいて、この調査結果は、そんなことで出たものではないことを願っています。(ちょっと冗談が過ぎましたか・・・。)

エスカレートする官製春闘、3%から5%へ

2018年12月27日 23時15分53秒 | 労働
エスカレートする官製春闘、3%から5%へ
 今日もまたビックリするニュースが飛び込んで来ました。昨日はIWC脱退という国際関係でしたが、今日のニュースは労使関係という国内問題です。

 昨日の経団連の審議員会に来賓として出席した安倍総理が、来賓挨拶の中で今年も「賃上げをして下さい」いったというニュースです。
 しかも昨年までは3%と言っていたのを、今年は「あくまで参考だが、平成元年は5%だった」と付け加えたそうです。平成元年はバブル真っ最中でしたね。

 官製春闘と言われて6年目ですが、「官製春闘」とマスコミが書くのは(言うのは)、もともと官製春闘は「異常なもの」という意味で言っているわけです。

 異常なことを6年も続けるというという執念は凄いですが、やっぱり異常は正常に勝てませんし、一国の総理が6年も異常なことを「効果もないのに」言い続けるというのは「何かが正常でない」という事の証拠かもしれません。要注意でしょうか。

 今年変わった経団連の中西会長は、「賃上げは労使が決めるものでナンセンス」といったとかとありましたが、画像では、挨拶の後、お互い、にこやかに握手していました。
にこやかさの中身は同床異夢でしょう。

 経団連やその構成企業はそれぞれに業績や労使関係などの事情があり、労使で責任をもって決めなければならないので、責任も権限もない第三者にとやかく言われるのは迷惑といのが本音でしょう。

 安倍さんが、「賃上げ、賃上げ」とおっしゃるのは、多分賃上げすれば景気が良くなると単純に信じているのか、それとも、なるべく高い賃上げをさせて、インフレになってくれないと財政再建が出来ないからインフレ待望なのかなどと勘繰らざるを得ません。

 このブログでも指摘し続けていますが、無理な賃上げは景気の悪化と物価の上昇を招き、国民の生活に迷惑をかけ、家計は将来不安感をますます強め、財布の紐を締め、消費不振が一層の景気の悪化につながる可能性が高いでしょう。
 
 政府の仕事は、国民の将来不安を少しでも安心感に変えるような、例えば格差社会化阻止に本格的に取り組むといった、政府にしかできない政策をきちんと取る事でしょう。
 「自分のやる事やらずに他人にものを頼むな」といった所ではないでしょうか。

 いずれにしても、安倍さん(安倍政権)の「思い込みの強さ」が、国民にとって危険な要素を孕むようになってきたことが気にかかる今日この頃です。

改正入管法成立、責任は企業・自治体に

2018年12月08日 13時13分09秒 | 労働
改正入管法成立、責任は企業・自治体に
 相変わらずの数を頼んでの採決の強行ですが、昨夜のうちに改正入管法は成立しました。
 政府与党は、十分の時間をかけて、慎重に審議し、責任をもって成立させたという事ですから、責任をきちんと果たしたという事でしょう。

 特定技能1号、2号の要件と、受け入れ人数は決まったわけですから、細かいことはともあれ、大枠は設定されたという事になります。
 もともと技能労働力が不足して大変だというのは主として企業からの要望です。受け入れ業種も決まったようですから、歓迎する企業も多いと思います。

 企業は歓迎ですが、受け入れる地方自治体は大変でしょう。2号の場合は家族の帯同も可能ですから、種々のコストがかかりそうですし、何より日本で居心地よく暮らしてもらえるような社会的、文化的な環境整備も必要でしょう。

 企業について考えれば、人手不足への対応の面で大歓迎でしょうが、この人手不足がいつまで続くかについての確りした見通しがあってのこととは思われません。
 政府は企業のためと思って受け入れるわけですから、企業の責任は最も重いはずです。

 残念なことですが、技能実習制度での受け入れの中で問題のある企業がかなりあることも(大多数は感謝されるような受け入れと思いますが)明らかになりました。
 今度は明確に技能労働者としての受け入れですから、当然日本人と同じ内国民待遇でなければならず、安価な使い捨て労働力などというわけにはいきません。

 少したって、「人手不足は解消しました、どうぞお帰り下さい」では済まないことも多いでしょう。
 また、外国人が来てくれるのなら、当面、省力化努力は不要、などという事になってはならなないでしょう。
 受け入れ技能者と日本企業の真のwin=winの関係は企業の現場でしか作れません。企業は日本企業の素晴らしさを国際的にいっそう広める役割を担うのです。

 今後、政府が、企業や地方自治体の為すべき努力に対してどんな対応をしてくれるかは、現状では判然としませんが、政府はやるべきことはやったと言っているのですから、これからフォロワーとして現場で善きフォローアップをし、法改正を成功させるために、企業、地方自治体の役割は、ますます重要になるのではないでしょうか。

 新入管法を生かすも殺すも、現場の対応にかかっているという事になってくるように思われるところです。
 特に、外国人労働力受け入れを政府に要望してきた企業、業界団体、さらには経済界全体、それを組織化している経済3団体などの責任は重いでしょう。

カルロス・ゴーン氏の晩節

2018年11月24日 11時54分06秒 | 労働
カルロス・ゴーン氏の晩節
 今回明らかになったカルロス・ゴーン氏の事件については未だ捜査の途上で、明確になったものではありません。
 しかし、大筋はマスコミ報道の通りでしょうか。ゴーン氏本人の問題、フランスと日本の対応の差など、何かいろいろと考えさせられることが多いような気がします。

 我々のような普通の日本人にとっては、あれだけの評価と名声を得て、個人的には十分と思われるような報酬を得ながら、なぜ更にあそこまでカネに固執するのかといった問題、それはルノーでは起きずに日産で起きたという点、事件発覚後の日本とフランスの世論や対応の違い、などなど、良く解らないことが沢山あります。

 個人的は、「残念な事件」といった感じを持つところですが、これは日本人的な感覚という所でしょうか。
 過日も書きましたように日産自動車の業績急回復について「日産の従業員が優れていたから」といったコメントをし、「 日本人の良きフォロワーシップ」を理解しての発言と多くの日本人を感激させました。
 
 その一方で、日本企業のトップとしては破格に高い年間10億円という報酬を、自分の働きに対しては過少という認識を強く持っていたようです。
 この自らの業績と報酬のアンバランスの感覚は、やはり日本人の感覚と差があるように思えます。

 この感覚が、マネーゲーマーたちの巨額報酬に影響されたものか、生まれ育った家庭や国々の教育や文化によるものか解りませんが、日本の経営者の場合には、業績を上げた企業トップでも、それによって、従業員をはじめとするステークホルダーたちが喜び、自分に対し尊敬や感謝の念を持っていてくれるという事に、より大きな喜びを感じているのではないでしょうか。

 トップが自分の上げた業績は自分に帰属すると言うのであれば、従業員にとって、優れたトップを迎える意味はなくなります。
 日本の賃金体系は「 2倍働いて給料2割増し、3倍働いて3割増し」などといわれるように、社会的慣習として、格差社会化を抑制する文化が出来上がっているのでしょう。

 誰かがこうした日本文化の根底にあるものをゴーンさんに教え、ゴーンさんがそれを多少でも理解していれば、ここまでの違法行為は起きなかったのではないでしょうか。

 そんな文化は日本だけで外国には通用しないというご意見もあると思います。とすれば、その文化の違いはどこから来るのでしょうか。フランスではピケティが格差社会化を批判しています。

 やはりこうした日本文化は人間社会にとって良い文化なのでしょう。
 偶々わが家の床の間には「得失一時栄辱千載」という軸がかかっています。これは日本だけの文化ではないのかな、などと思っています。

 ゴーンさんも、こんな事が無ければ稀代の優れた経営者として後世に名を遺したのではいかと思うと何か残念です。

ラーメン日高屋の日本型労組結成

2018年11月21日 12時02分43秒 | 労働
ラーメン日高屋の日本型労組結成
 今日、新聞で中華料理・ラーメンの味を誇る日高屋(株式会社ハイディ日高)で、「ハイディ日高労働組合」が結成されたという記事を見ました。
 記事の内容、その名称から見ると企業別労働組合だと思いますが、すでに「UAゼンセン」に承認されて連合の傘下に入っているとのことです。

 日高屋は400の店舗を首都圏に展開していますが、従業員数は9000人で、その内3割が外国人労働者、9割近くが非正規従業員という事です。

 非正規従業員が合同労組などに加盟するというのは多ですが、こうした非正規従業員の多い企業で企業別労組が出来るというのは珍しいのではないでしょうか。
 記事によれば、企業側、労組側双方に取材しているようなので、企業側も、それなりに(あるいは歓迎して?)認めての企業内労組の設立という事でしょう。
 この労働組合の活動が今後成功していけば、日本の企業別労使関係に新しいものが生まれるような気がするところです。

 ご承知のように労働組合を企業別に組織しているのは世界でも、日本とバングラデシュぐらいでしょう。
 もともとヨーロッパでの労働組合の発祥は職能別組織で、産業別組織が出来ても、基本は「どの企業でも同じ仕事をしていれば同じ賃金」、つまり同一労働同一賃金などの権利をを確保し、その向上を狙うためのものでした。

 日本の様な企業別の労働組合では、当然企業別に賃金水準は違います。日本では非正規従業員を除いて賃金体系・水準は企業別に決まっています。
 非正規従業員のパートなどは、日本でも地域別のマーケットが出来ていて、地域別、仕事別の企業横断賃金になっています。

 ところが、 政府の決めた「同一労働同一賃金」は、企業の中の問題で、「その企業の中で同じ仕事をしていれば同じ賃金」という事です。

 今後日高屋で、従業員がやる気を出して、業績が上がれば、その分「うちは業績がいいから時給がよそより高い」という事も可能になるのでしょう。
 これを「同一労働・同一賃金」というのが日本の法律ですから、企業別労組の設立が、どんな結果をもたらすかには大変興味があります。

 そのほか、賃金以外の福利厚生、などについても、企業内の労使交渉で、日高屋独自のものが決められることになりそうです。
 日本的な技能を身につけるだけでなく、日本的な仕事の仕方、日本的な職場の在り方、(人間関係)、そして日本的労使関係、さらには日本的経営など、外国人労働者が、この面から日本文化の一面を知り、その評価をすることにつながるかもしれません。

 UAゼンセンは以前から、多様な労働組合を組織し包括するのが得意ですが、日本的労使関係に興味を持つ私は、日高屋の労使関係に興味津々です。

前回(単純労働力受入れ問題)への追記

2018年11月04日 20時55分47秒 | 労働
前回(単純労働力受入れ問題)への追記
 もともと高度人材受け入れはOKという方針は、高度人材なら、母国でも日本でも、雇用は景気に左右されることは少ないし、数もそう多くない、日本にとっても有用、移民問題も深刻になることはなかろう、などといった意識があってのことでしょう。

 単純労働力は、はそうした点で問題が多い事は、経験のある国では十分理解されているはずです。当然日本もそのはずですが、今回、急遽単純労働力も受け入れると方針変更し、移民とは切り離していると明言したりするのは、問題自体をトータルに長期的視点で考えているのではなく、今、人が採れない業種・業界があるのだから、受け入れを認めることで、喜んでもらええるというポピュリスト的発想という意見も出始めています。 
 っ
 「移民とは切り離して」といっても、現実的には問題が多いことは、アメリカ、ヨーロッパで、今日只今問題になっていることからも知られるところでしょう。

 更に奇妙なのは、欧米では、海外からの人口流入について、革新系が受け入れについてより寛容で、保守系・右翼系が強硬に反対ということになっていますが、日本の場合は、自民中心に保守系が賛同し、革新系の野党はそろって反対ということです。
 問題の認識や見方が、どうもかなり違ったものになっているような気がします。

 人手不足が大変、単に単純労働力の受け入れという小さな問題、移民問題とは切り離しています、3年たったたら見直します(アベノミクスが終わったら不況に?)、等で欧米とは違うという意見かもしれませんが、基本問題は共通でしょう。

 拙速を排して、本格論議をし、長期に安定して世界に貢献するためには、日本としてどう考えるか、国内的には、生産性向上の支援や相対的賃金水準の在り方、経営管理の在り方や経営管理者の教育訓練などなど、関連する分野を十分に検討、誤りない将来を確り見定めておく必要があるのではないでしょうか。