司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

不動産登記における法人である売主の印鑑証明書が添付不要に

2018-06-03 18:33:06 | 不動産登記法その他
事業環境改善のための関係府省庁連絡会議
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/doing_business/index.html

「我が国の事業環境の改善のため、成長戦略のKPIとして、「2020年までに、世界銀行のビジネス環境ランキングにおいて日本が先進国3位に入る。」としているところ、日本の評価は芳しくない状況にある。こうした状況を踏まえ、更なる事業環境の改善のため各府省庁の関係者を結集し、継続的に取り組む体制が必要である。このため、関係府省庁が一堂に会し協議を行う場として、事業環境改善のための関係府省庁連絡会議を設けた。」

ということで,「事業環境改善に向けた取組について(事業環境改善のための関係府省庁連絡会議決定)」が公表されている。

 概ね妥当な方向であるように思えるが,驚愕の発見が・・。



「登記時の添付書類(売主の印鑑証明書)の削減」と題して,

「世界銀行報告書では、不動産登記に要する手続数等が評価対象となっており、その中に法人が売主となる場合の登記申請の添付書類として、当該法人の印鑑証明書を取得する手続が含まれている。不動産登記時に、当該法人の印鑑登録が行われている法務局以外で登記を申請するには、別途法務局で印鑑証明書の交付を受け、登記を申請する法務局に当該法人の印鑑証明書を提出する必要がある。
 これに鑑み、不動産登記手続を簡素化し、異なる法務局間での法人の印鑑証明書の添付を不要とすべく、実務における課題等を洗い出した上で、平成31(2019)年度内に情報システムの改修及び運用開始を行い、平成32(2020)年秋に公表されるランキングへの反映を目指す。」


「印鑑証明書を取得する手続」のコストを削減するために,「異なる法務局間での法人の印鑑証明書の添付を不要」にしようという動きであり,司法書士界としては,歓迎すべからざる話である。不動産取引の実態を無視した(知らないのであろう。)「何でも削減」という乱暴な論である。

「全面デジタル化」となれば,登記所内部で確認することができるように,という事情はわかるが,登記所は添付不要でよくても,司法書士にとって,印鑑証明書は取引時における重要な本人確認資料の一であり,印鑑と印鑑証明書を照合し,確認する必要があるのである。

「取得しなくてもよいように改正する」を前面に打ち出さないで欲しいものである。

「法人設立オンライン・ワンストップ」の動きは,引き続き注視する必要がある。



 とまれ,諸々,お目通しを。


(1)法人設立オンライン・ワンストップ【法務省、財務省、厚生労働省、総務省、内閣官房(IT 総合戦略室)】<法人設立>
 世界銀行報告書では、法人設立に要する手続数や所要時間等が評価対象となっている。これに鑑み、手続のオンライン化とマイナポータルを活用したワンストップサービスにより、法人設立手続を「手続数1、所要時間1日」で実施できる環境を整備することとし、以下の取組を実施する。
 ・ 平成31(2019)年中の印鑑届出の任意化を実現するための法改正に向けて取り組む。
 ・ 世界銀行の調査時期を念頭に、可能な限り早い段階の報告書で評価されることを目指し、平成21(2019)年度中に、登記後の手続をワンストップで完了できるように必要な準備を進める。
 ・ 平成32(2020)年度中に、登記手続も含め、全手続をワンストップで完了できるように必要な準備を進める。


(2)裁判手続等のIT化【法務省】<契約執行>
 世界銀行報告書では、裁判手続のIT化や時間やコスト等が評価対象となっている。これに鑑み、司法府による自律的判断を尊重しつつ、民事訴訟のオンラインでの申立て等を実現することとし、法務省は、必要な法整備の実現に向け、平成31(2019)年度中の法制審議会への諮問を視野に入れて速やかに検討・準備を進める。また、法務省は、民事訴訟のオンラインでの申し立て等の実現に向けたスケジュールについては、司法府の自律的判断を最大限尊重し、その環境整備に向けた検討・取組を踏まえた上で、平成31(2019)年度中に検討する。


(3)デジタル・ガバメントの推進
ⅰ)不動産取引関連サービスのデジタル化
① 登記時の添付書類(売主の印鑑証明書)の削減【法務省、内閣官房(IT総合戦略室)】<不動産登記>
 世界銀行報告書では、不動産登記に要する手続数等が評価対象となっており、その中に法人が売主となる場合の登記申請の添付書類として、当該法人の印鑑証明書を取得する手続が含まれている。不動産登記時に、当該法人の印鑑登録が行われている法務局以外で登記を申請するには、別途法務局で印鑑証明書の交付を受け、登記を申請する法務局に当該法人の印鑑証明書を提出する必要がある。
 これに鑑み、不動産登記手続を簡素化し、異なる法務局間での法人の印鑑証明書の添付を不要とすべく、実務における課題等を洗い出した上で、平成31(2019)年度内に情報システムの改修及び運用開始を行い、平成32(2020)年秋に公表されるランキングへの反映を目指す。

② 不動産取引における電子契約の活用に向けた環境の整備【法務省、総務省、国土交通省、内閣官房(IT総合戦略室)】<不動産登記、納税>
 世界銀行報告書では、不動産登記に要する手続数及び税・社会保険料の納付回数等が評価対象となっており、不動産取引の契約書に添付する印紙の購入(印紙税の納付)が手続数及び納税回数として計上されている。電子契約では印紙の添付が不要であり、手続数及び納税回数が削減されることを踏まえ、不動産取引における電子契約が一般的な選択肢となるように、以下の取組を行う。
 ・ 法務省及び総務省においては、電子証明書の利便性の向上に関する議論を踏まえつつ、法人及び個人の電子証明書の抜本的な普及を図る。
 ・ 国土交通省においては、法人間売買におけるITを活用した重要事項説明の実施について平成30(2018)年度中に結論を出すとともに、その検討状況を踏まえつつ、不動産取引におけるITの活用に向けた周辺環境整備を進め、不動産取引のオンライン化を推進する。


(4)資金調達の円滑化
ⅰ)動産担保に関する法的枠組み及び登記制度の整備【法務省】<信用供与>
 世界銀行報告書では、動産担保に関する法的枠組みや登記制度等が評価対象となっている。
 これに鑑み、法務省は、企業や金融機関からのニーズを踏まえて、法的枠組みや登記制度の整備について、将来的な法改正も視野に入れて検討することとし、平成30(2018)年度から実務におけるニーズ調査及び法制上の課題に関する検討を行う。
 併せて、現行の動産担保に関する制度が果たしている機能について、適切な評価がなされるよう、世界銀行のメソドロジー改善提案について、具体的に検討する。


(5)会社法改正(会社法制の見直し)【法務省】<少数投資家保護>
 世界銀行報告書においては、本年2月に法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会で取りまとめられた中間試案に記載されている事項の一部が評価対象となっている。これに鑑み、少数投資家保護の観点も重要な考慮要素として、同審議会において、会社法制の見直しを進める。
 特に、株主総会の招集通知の発送期限については、企業側のみならず、投資家側の意見も十分考慮して検討を進める。また、株主総会の参考書類等の電子提供制度が創設された場合には、電子提供措置の開始日(28日前又は21日前)が株主総会の招集通知の発送日とみなされるように、世界銀行のメソドロジー改善提案を行う。


(7)司法統計の充実・裁判手続の迅速化
ⅰ)司法統計の充実【法務省】<不動産登記、契約執行>
 世界銀行報告書では、訴訟実態に関する報告書の作成など、司法統計の充実で対応しうる項目が存在する。司法統計が充実していくことは有益であり、司法府の自律的判断及び取組を尊重する必要があることを踏まえつつ、法務省は、裁判手続等のIT化の実現に必要な制度的手当ての検討・準備を進めることにより、IT化を通じた統計事務の効率化に資する必要な措置を講ずる。

ⅱ)裁判迅速化【法務省】<不動産登記、契約執行>
 世界銀行報告書では、裁判手続に要する時間等が評価対象となっている。これに鑑み、裁判手続のIT化によって、不動産に係る紛争処理時間、訴訟提起から判決・執行までの期間の短縮の実現につながる可能性があることから、法務省としては、司法府の自律的判断及び取組を尊重する必要があることを踏まえつつ、裁判手続等のIT化の実現に必要な制度的手当ての検討・準備を進め、必要な措置を講ずる。

ⅲ)裁判手続の更なるIT化【法務省】<契約執行、破綻処理>
 世界銀行報告書では、訴訟提起から判決までの時間に加えて、執行に要する時間も評価対象となっている。また、破綻処理については、現行の世界銀行のメソドロジーではIT化は加点対象になっていないが、他の項目ではIT化が評価対象になっているものが見られるため、将来的に破綻処理手続のIT化が評価対象に追加される可能性は否定できない。
 これに鑑み、民事執行手続についても、司法府の自律的判断や取組を尊重しつつ、法務省は、民事訴訟全般のIT化の検討を踏まえ、その成果を活かした検討を進める。また、倒産手続に関しては、司法府の自律的判断や取組を尊重しつつ、法務省として、民事訴訟全般のIT化の検討結果を待たずに、現行法下でのプラクティスの在り方を基本とするIT技術の活用について検討を進める。
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