時事通信の記事に依るとバイデン米大統領は3月1日の一般教書演説において最後に「Go get him!」(彼を捕らえろ!)と聞き取れる言葉を発したことが波紋を広げているとのことである。これは原稿には無い言葉で、演説の最後にアドリブで入れたもののようである。発言の真意は不明だが。
なお、語尾の「Him」は人によっては「Them」ではないか、とのことだが「Him」で間違いないだろう、というのが大方の見方である。この発言についてジャーナリストの長谷川幸洋氏は「Him」説を採る、とのことだ。実際に何度も聞き直して「Him」と聞き取れる事と、その他の理由は下記の通りである。
(1) アメリカのマスメディアABCやブルームバーグは「Him」で報道している。
(2) この演説の2割くらいがウクライナ問題に割かれているが、バイデン大統領が終始言っていたのは「ロシア」ではなく「プーチン」という個人名である。また、プーチン以外の個人名はウクライナ大統領のゼレンスキーは出てきたが、ロシアについては「プーチン」だけである。
(3) バイデン大統領は「ウクライナ問題はプーチン一人だけが責任を負っている」と述べている。
・・・なので、ラストの一言を「Go get Them!」にしてしまうと辻褄が合わない。やはり「Go get him!」で間違いないだろう。つまり「プーチンを捕らえろ」と言っているのである。
最大のポイントは「ロシアの軍部に対してクーデターを促している」ところである。長谷川氏はそのような見立てを取っている。
平易に言えば「この問題はプーチンが悪いのだから、それ以外の諸々は見逃すということであり、さらにロシアの人々に対して「あなた方がプーチンをやっつけろ」と言っているメッセージであろうと推測されるのである。
一般教書演説はアメリカ人に向けて行われる演説だが、今回は取り分けプーチンとロシアに向けた演説になっている。この演説を最も聞いていたのはプーチン個人であろうし、その周囲の大将たちであろう。これは長谷川氏の見立てだけでなく、CNNの解説でも同様の趣旨で伝えている。
この一言はロシアに於いてプーチン以外の周囲の大将たちはホッとしたであろう。オリガルヒ(*1)は駄目だが、ロシア軍部はこの一言を聞いて安心したことだろう。矛先はプーチン個人に向けられているのであってロシア全体ではないことが確認できたからである。
バイデン大統領はこのアドリブで付け加えた最後の一言をなぜ言ったのであろうか?
プーチンは放っておくと本当に核攻撃をやりかねない危険があるからだ。ここが最大の焦点である。プーチンは核兵器を使うかもしれない脅しをかけているが、プーチンが本気でこれを実行したらアメリカとしては止めるのが極めて困難である。クレムリンの中に入って斬首作戦をやる訳にもいかない。アルカイダのビン・ラディンの場合とは違うからである。(*2)
…となると、最後にそれを止められるのは本当の政権中枢に居る人たちだけである。彼らに依って止めるしか無いのである。それ以外に方法はない。実はそのことは既に欧米のメディアは見ており、見方は2つに分かれている。
イギリスのBBCなどはロシア人へのインタビューをしているが、ロシア人が言うには「プーチンの側近たちはイエスマンばかりだから止められない」と述べている。このような見立てがある一方で、アメリカのワシントンエグザミナーの記者が書いているのは「もしもそうなった時には彼ら(側近たち)はプーチンを打つだろう」と言っている。
仮にプーチンが「核兵器を発射しろ」と命じた場合、そこからのプロセスは国防大臣、米国で言う統合参謀本部議長、核部隊の司令官などの数十人に及ぶ決定ラインがある。そのラインのどこかで「これは駄目だ」と断じて、誰かがプーチンを打つだろう、という見立てが既に2月28日の段階で欧米のメディアは最大の焦点として論じている。
これらの動きは当然バイデン大統領側も認識しており、その流れがあったから「プーチンだけに責任がある」という指摘を演説の中で12回も繰り返して言っていて、しかも最後の最後の場面、「サンキューサンキュー」と聴衆に礼を繰り返した後に原稿にはない「Go get him!」をアドリブで叫んだのである。これを言った時のバイデン大統領はかなり興奮していたようだが、「プーチンを、あいつをやってくれさえすれば終われる」…それを強く訴求したかったのだろう。この先の展開がどうなるかは不明だが、プーチンが暴走を続けることのリスクの大きさからつい絶叫してしまったようである。
こうした状況を注視して今後の推移を見守る必要があるだろう。
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(*1)
ソ連時代の社会主義的政治・経済体制から資本主義体制に移行する過程で混乱に乗じて安価で国営企業を入手して形成された財閥である。
(*2)
プーチン大統領の精神状態がおかしくなっていると見る人は多い。ウクライナ侵攻に拘る余りにも頑なな態度や侵攻の正当性を滅茶苦茶な屁理屈の数々で説明する異常性、また以前のプーチン氏に比較して目つきや顔つきに変化が認められる事などから総合的に見て精神に何らかの異常が起きている可能性は高いと推測されている。
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なお、語尾の「Him」は人によっては「Them」ではないか、とのことだが「Him」で間違いないだろう、というのが大方の見方である。この発言についてジャーナリストの長谷川幸洋氏は「Him」説を採る、とのことだ。実際に何度も聞き直して「Him」と聞き取れる事と、その他の理由は下記の通りである。
(1) アメリカのマスメディアABCやブルームバーグは「Him」で報道している。
(2) この演説の2割くらいがウクライナ問題に割かれているが、バイデン大統領が終始言っていたのは「ロシア」ではなく「プーチン」という個人名である。また、プーチン以外の個人名はウクライナ大統領のゼレンスキーは出てきたが、ロシアについては「プーチン」だけである。
(3) バイデン大統領は「ウクライナ問題はプーチン一人だけが責任を負っている」と述べている。
・・・なので、ラストの一言を「Go get Them!」にしてしまうと辻褄が合わない。やはり「Go get him!」で間違いないだろう。つまり「プーチンを捕らえろ」と言っているのである。
最大のポイントは「ロシアの軍部に対してクーデターを促している」ところである。長谷川氏はそのような見立てを取っている。
平易に言えば「この問題はプーチンが悪いのだから、それ以外の諸々は見逃すということであり、さらにロシアの人々に対して「あなた方がプーチンをやっつけろ」と言っているメッセージであろうと推測されるのである。
一般教書演説はアメリカ人に向けて行われる演説だが、今回は取り分けプーチンとロシアに向けた演説になっている。この演説を最も聞いていたのはプーチン個人であろうし、その周囲の大将たちであろう。これは長谷川氏の見立てだけでなく、CNNの解説でも同様の趣旨で伝えている。
この一言はロシアに於いてプーチン以外の周囲の大将たちはホッとしたであろう。オリガルヒ(*1)は駄目だが、ロシア軍部はこの一言を聞いて安心したことだろう。矛先はプーチン個人に向けられているのであってロシア全体ではないことが確認できたからである。
バイデン大統領はこのアドリブで付け加えた最後の一言をなぜ言ったのであろうか?
プーチンは放っておくと本当に核攻撃をやりかねない危険があるからだ。ここが最大の焦点である。プーチンは核兵器を使うかもしれない脅しをかけているが、プーチンが本気でこれを実行したらアメリカとしては止めるのが極めて困難である。クレムリンの中に入って斬首作戦をやる訳にもいかない。アルカイダのビン・ラディンの場合とは違うからである。(*2)
…となると、最後にそれを止められるのは本当の政権中枢に居る人たちだけである。彼らに依って止めるしか無いのである。それ以外に方法はない。実はそのことは既に欧米のメディアは見ており、見方は2つに分かれている。
イギリスのBBCなどはロシア人へのインタビューをしているが、ロシア人が言うには「プーチンの側近たちはイエスマンばかりだから止められない」と述べている。このような見立てがある一方で、アメリカのワシントンエグザミナーの記者が書いているのは「もしもそうなった時には彼ら(側近たち)はプーチンを打つだろう」と言っている。
仮にプーチンが「核兵器を発射しろ」と命じた場合、そこからのプロセスは国防大臣、米国で言う統合参謀本部議長、核部隊の司令官などの数十人に及ぶ決定ラインがある。そのラインのどこかで「これは駄目だ」と断じて、誰かがプーチンを打つだろう、という見立てが既に2月28日の段階で欧米のメディアは最大の焦点として論じている。
これらの動きは当然バイデン大統領側も認識しており、その流れがあったから「プーチンだけに責任がある」という指摘を演説の中で12回も繰り返して言っていて、しかも最後の最後の場面、「サンキューサンキュー」と聴衆に礼を繰り返した後に原稿にはない「Go get him!」をアドリブで叫んだのである。これを言った時のバイデン大統領はかなり興奮していたようだが、「プーチンを、あいつをやってくれさえすれば終われる」…それを強く訴求したかったのだろう。この先の展開がどうなるかは不明だが、プーチンが暴走を続けることのリスクの大きさからつい絶叫してしまったようである。
こうした状況を注視して今後の推移を見守る必要があるだろう。
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(*1)
ソ連時代の社会主義的政治・経済体制から資本主義体制に移行する過程で混乱に乗じて安価で国営企業を入手して形成された財閥である。
(*2)
プーチン大統領の精神状態がおかしくなっていると見る人は多い。ウクライナ侵攻に拘る余りにも頑なな態度や侵攻の正当性を滅茶苦茶な屁理屈の数々で説明する異常性、また以前のプーチン氏に比較して目つきや顔つきに変化が認められる事などから総合的に見て精神に何らかの異常が起きている可能性は高いと推測されている。
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