2月1日にミャンマーで軍事クーデターが発生してから軍に依る民間人への暴力がエスカレートしている。ミャンマーと日本は深いつながりがあり、看過できない問題である。
このクーデターについて、最近、下記の報道があった。
国連は16日、ミャンマーで発生したクーデター以降、デモ弾圧に依る死者の急増や被拘束者への拷問に加え、数百人が治安当局に連行され行方不明になっているとして軍事政権を強く非難した。国連人権高等弁務官事務所のシャムダサニ報道官は記者団に対し、公式に把握している2/1以降の死者の数は149人だが、実際はそれよりも遥かに多いのは確実だと語った。またシャムダサニ氏は不法に拘束された人のうち数百人が行方不明になっていて、軍当局も拘束の事実を認めておらず、これらのケースは国家機関人の自由を奪う強制失踪に当たる、と述べている。一方、中国政府は欧米と異なりミャンマー国軍に依る2月1日のクーデターをまったく非難していない。(AFP通信)
ミャンマーでの国軍が引き起こしたクーデターについて、当ブログでは2月8日に下記の記事を掲載した。
ミャンマー「軍事クーデター」:その真実・真相 [2月8日時点の見解]
しかし、この後になってかなり情勢に変化があって状況が非常に悪化してきている。この件についてジャーナリストの有本香氏とイスラム思想研究者の飯山陽氏に依る解説があるので紹介したい。
日本にとっても深いつながりがあるミャンマーだが、その日本がどうも対応を誤っている可能性がある。
クーデター発生以降、日本政府は「日本政府はミャンマー国軍と独自のパイプがある」と言っている。独自のパイプとはミャンマーに駐在している丸山一郎氏(2018年から駐ミャンマー特命全権大使)を指しているようである。
ミャンマーはフェイスブック大国であり、様々な情報をフェイスブックに挙げるのが通例となっている。日本もそれに習ってフェイスブック上に日本大使館の公式ページを開設している。このフェイスブックの3月8日の投稿を見て見ると
「3月8日、ネピドーで丸山大使がワナ・マウン・ルイン外相に申し入れを行いました」
として、そこで
「日本は重大な懸念を有していると伝えた」
となっている。
これに対してミャンマーの国民が怒っているのだ。もの凄い数のコメントが付いているのだが、それはミャンマー国民からのものであり、ほとんど全部が抗議のコメントなのだ。その内容はワナ・マウン・ルイン氏を「外相」と呼んでいることについての抗議だ。「なんでこの人を”外相”と呼んでいるのか?」という抗議である。ルイン氏はクーデターを起こした軍が勝手に外相に任命しただけの人物であり、ミャンマーの一般国民は外相とは認識していないのである。であるにも関わらず、丸山大使はわざわざネピドーまで参じてルイン氏に会いに行ったのであり、しかも「外相」と呼んでいる。「それはどういうことなんだ?」と怒っているのだ。一般的なミャンマー国民は日本に好印象を持っている。ところが”パイプがある”と得意げな日本大使のこうした動きを見てがっかりしているのである。日本は軍の味方なのか?、と。
ミャンマーでは軍がファンドを持っており、多くの企業が軍の下にぶらさがっているような形になっている。現在、ミャンマー人はデモをするだけでなく、軍に関連した企業の商品を買わなくなっている。不買運動である。それを買ってしまうと「軍にお金が流れてそのお金で自分達が殺されるから」である。その象徴的な商品がビールだ。ミャンマー製のアンダマンビールである。これはミャンマーブルワリーというミャンマー国内で大きなシェアを持つビール会社であるが、この会社は軍と日本のキリンビールの合弁企業だ。クーデター発生後にキリンビールは”流石にこのままではまずい”と思ったのだろう。「軍との合弁を解消します」と発表したが、それはまだ具体的な進展はしていないようである。ミャンマー国内ではこのビールにも不買運動が起きていて既に販売店から撤去されている。こうした例に見られるようにクーデターに依る騒動下で日本企業のイメージがどんどん下がってきているのが実情だ。
日本としては、このまま軍が実権を握っていくことになったとしても「軍と仲良くやっておけば、このまま投資や企業活動がうまくいくだろう」という推測をしており、それで軍に対して強いことを言わないで、いつもの「懸念」表明でお茶を濁しているのである。
日本がいくら軍と仲良くしたところで、ミャンマーの一般国民は軍を非常に嫌っている。その軍に媚びへつらっている日本に対しても徐々に好感度が下がってきているのである。この後、軍が力で民衆をねじ伏せたとしても、その後で日本の企業活動がミャンマーでつつがなく展開できるのだろうか? そうした疑問は当然出てくるだろう。もしかしたら日本は状況や筋を読み違えているのではないか、とも思われるのである。
冒頭に記したように、2月8日時点の状況ではここまで軍が酷くなるとは予想できなかったのが実際のところである。2月8日の時点ではミャンマー軍はもう少し良心的な対応をすると思われたのだ。最初の段階で軍は「スーチー政権が憲法に違反している」と主張していた。つまり妥当性のある理屈を立ててきていたのである。「憲法違反という状況を座視できない」という主張である。だから軍が政権を奪った、と。
民主化と言うが、実際にはスーチーさんの党派が政権を握る前から軍事政権の時点で民政移管がされていたのだ。現在、ミャンマーは民主主義の体制にあるのだが、ミャンマーの民主主義というのはスーチー政権に
なっていきなり変わったわけではなく、その前から徐々に民政移管が進められていたのである。なので軍も”民主主義国の軍”という形に変容してきていると思われていたのだが、どうも昨今の「平気で(丸腰の)自国民を殺傷する」という凶悪な状況を見る限り、やはり軍は先祖返りしているのでは?と考えざるを得ないところがあるのだ。
前述の丸山一郎大使は長くミャンマーに関わっている人物で、ミャンマーについては日本の外務省の中でも折り紙付きということである。スーチーさんが軟禁されてた時代からスーチーさん側ともパイプがあるし当時の軍政側ともパイプがあるという人であり、井本勝幸氏も信頼をおいている人物である。井本氏は少数民族側の立場で活動した人である。
そうした丸山氏だが、総じて「ミャンマーのエキスパート」と呼べる人物である。だが、少し誤って外交的に「両方に粉かけて、二股かけておけばいい」的な勘違いをしている可能性も無くはない…という現状の見立てである。
たしかに「軍が勝手に外務大臣に据えた人」を「外相と呼ぶ」事はミャンマー国民からの大きな非難を受けている。例えばこっそり会って会談するならともかく、今の時点で「このようなことをわざわざアナウンスして」、これ何の意味があったんですか?ということだ。そういう空気が全く読めていないのは事実である。ミャンマーとの人的パイプは確かに持っているのだろうし、ミャンマーに長期に渡って深く関わっているのも事実ではあるが、こんな事を今アナウンスしたら人心がどう動くかが読めてなかった、というのは結構痛いことではある。
逆にミャンマーの国民一般は「民主化」ということに既に意識が高くなっている。つまり「しっかりと民主化されてきている」ということなのである。民主主義の中で自分達がきちんと意志を持って声を上げて、そして軍や政府の圧政やお仕着せに対して、それを跳ね除けていくような、そういう空気が既に醸成されている、ということなのだ。そうしたミャンマー国内の根本的な変化というものを丸山氏は読めていなかった…のかもしれない。
現在、日本企業がどんどんミャンマーに進出している。中にはテインセイン時代(以前の軍政権時代)の閣僚の組織と合弁ビジネスをやってる会社もある。それはつまり軍の有力者と組まないとミャンマーではビジネスができない、ということがある意味で常識になっているのだ。その意識が非常に強いので、丸山大使は軍側ともある程度関係を作っておかなければいけない…どっちにころんでもいいように、と保険をかけるようなことをやってしまったが故に墓穴を掘ってしまった・・・という事なのかもしれない。
背後の中国の存在がありながらも日本やアメリカの企業がここ数年で大挙してミャンマーに入っていったので、逆に軍は中国との距離が空いた、ということもある。その距離が再び近づいていく形になるのも嫌な話であるし、国連が非難したところであまり関係ないのである。
国連と言えば、中国やロシアを中心とした極悪国家グループが「国連憲章を守る会」のようなグループを作って国連を自分達の思い通りに動かそうと画策している。ぶっちゃけた話、「国連憲章を守るべき」なのは中国やロシア達だろうが!という実情であるにも関わらず、である。(蔑笑)人権を踏みにじって平然としている彼らが「国連憲章を守ろう運動」をやるというのだ。ナンセンスでありお笑い意外の何者でもない。そもそも国連憲章を読んだことがあるのだろうか?。
国連がミャンマー非難決議をしたのだが、実はその中味を見ると「ミャンマー軍を非難する文言は一つも入っていない」事がわかる。
なぜか。
ロシアや中国といった凶悪な国々が「ミャンマー軍への非難」を入れることに反対したからである。お分かりだろうか。国連というのは今やそういう邪悪な国々によって牛耳られた組織に変貌してしまっている、ということなのだ。ここは我々もしっかりと認識しておく必要があるだろう。
このクーデターについて、最近、下記の報道があった。
国連は16日、ミャンマーで発生したクーデター以降、デモ弾圧に依る死者の急増や被拘束者への拷問に加え、数百人が治安当局に連行され行方不明になっているとして軍事政権を強く非難した。国連人権高等弁務官事務所のシャムダサニ報道官は記者団に対し、公式に把握している2/1以降の死者の数は149人だが、実際はそれよりも遥かに多いのは確実だと語った。またシャムダサニ氏は不法に拘束された人のうち数百人が行方不明になっていて、軍当局も拘束の事実を認めておらず、これらのケースは国家機関人の自由を奪う強制失踪に当たる、と述べている。一方、中国政府は欧米と異なりミャンマー国軍に依る2月1日のクーデターをまったく非難していない。(AFP通信)
ミャンマーでの国軍が引き起こしたクーデターについて、当ブログでは2月8日に下記の記事を掲載した。
ミャンマー「軍事クーデター」:その真実・真相 [2月8日時点の見解]
しかし、この後になってかなり情勢に変化があって状況が非常に悪化してきている。この件についてジャーナリストの有本香氏とイスラム思想研究者の飯山陽氏に依る解説があるので紹介したい。
日本にとっても深いつながりがあるミャンマーだが、その日本がどうも対応を誤っている可能性がある。
クーデター発生以降、日本政府は「日本政府はミャンマー国軍と独自のパイプがある」と言っている。独自のパイプとはミャンマーに駐在している丸山一郎氏(2018年から駐ミャンマー特命全権大使)を指しているようである。
ミャンマーはフェイスブック大国であり、様々な情報をフェイスブックに挙げるのが通例となっている。日本もそれに習ってフェイスブック上に日本大使館の公式ページを開設している。このフェイスブックの3月8日の投稿を見て見ると
「3月8日、ネピドーで丸山大使がワナ・マウン・ルイン外相に申し入れを行いました」
として、そこで
「日本は重大な懸念を有していると伝えた」
となっている。
これに対してミャンマーの国民が怒っているのだ。もの凄い数のコメントが付いているのだが、それはミャンマー国民からのものであり、ほとんど全部が抗議のコメントなのだ。その内容はワナ・マウン・ルイン氏を「外相」と呼んでいることについての抗議だ。「なんでこの人を”外相”と呼んでいるのか?」という抗議である。ルイン氏はクーデターを起こした軍が勝手に外相に任命しただけの人物であり、ミャンマーの一般国民は外相とは認識していないのである。であるにも関わらず、丸山大使はわざわざネピドーまで参じてルイン氏に会いに行ったのであり、しかも「外相」と呼んでいる。「それはどういうことなんだ?」と怒っているのだ。一般的なミャンマー国民は日本に好印象を持っている。ところが”パイプがある”と得意げな日本大使のこうした動きを見てがっかりしているのである。日本は軍の味方なのか?、と。
ミャンマーでは軍がファンドを持っており、多くの企業が軍の下にぶらさがっているような形になっている。現在、ミャンマー人はデモをするだけでなく、軍に関連した企業の商品を買わなくなっている。不買運動である。それを買ってしまうと「軍にお金が流れてそのお金で自分達が殺されるから」である。その象徴的な商品がビールだ。ミャンマー製のアンダマンビールである。これはミャンマーブルワリーというミャンマー国内で大きなシェアを持つビール会社であるが、この会社は軍と日本のキリンビールの合弁企業だ。クーデター発生後にキリンビールは”流石にこのままではまずい”と思ったのだろう。「軍との合弁を解消します」と発表したが、それはまだ具体的な進展はしていないようである。ミャンマー国内ではこのビールにも不買運動が起きていて既に販売店から撤去されている。こうした例に見られるようにクーデターに依る騒動下で日本企業のイメージがどんどん下がってきているのが実情だ。
日本としては、このまま軍が実権を握っていくことになったとしても「軍と仲良くやっておけば、このまま投資や企業活動がうまくいくだろう」という推測をしており、それで軍に対して強いことを言わないで、いつもの「懸念」表明でお茶を濁しているのである。
日本がいくら軍と仲良くしたところで、ミャンマーの一般国民は軍を非常に嫌っている。その軍に媚びへつらっている日本に対しても徐々に好感度が下がってきているのである。この後、軍が力で民衆をねじ伏せたとしても、その後で日本の企業活動がミャンマーでつつがなく展開できるのだろうか? そうした疑問は当然出てくるだろう。もしかしたら日本は状況や筋を読み違えているのではないか、とも思われるのである。
冒頭に記したように、2月8日時点の状況ではここまで軍が酷くなるとは予想できなかったのが実際のところである。2月8日の時点ではミャンマー軍はもう少し良心的な対応をすると思われたのだ。最初の段階で軍は「スーチー政権が憲法に違反している」と主張していた。つまり妥当性のある理屈を立ててきていたのである。「憲法違反という状況を座視できない」という主張である。だから軍が政権を奪った、と。
民主化と言うが、実際にはスーチーさんの党派が政権を握る前から軍事政権の時点で民政移管がされていたのだ。現在、ミャンマーは民主主義の体制にあるのだが、ミャンマーの民主主義というのはスーチー政権に
なっていきなり変わったわけではなく、その前から徐々に民政移管が進められていたのである。なので軍も”民主主義国の軍”という形に変容してきていると思われていたのだが、どうも昨今の「平気で(丸腰の)自国民を殺傷する」という凶悪な状況を見る限り、やはり軍は先祖返りしているのでは?と考えざるを得ないところがあるのだ。
前述の丸山一郎大使は長くミャンマーに関わっている人物で、ミャンマーについては日本の外務省の中でも折り紙付きということである。スーチーさんが軟禁されてた時代からスーチーさん側ともパイプがあるし当時の軍政側ともパイプがあるという人であり、井本勝幸氏も信頼をおいている人物である。井本氏は少数民族側の立場で活動した人である。
そうした丸山氏だが、総じて「ミャンマーのエキスパート」と呼べる人物である。だが、少し誤って外交的に「両方に粉かけて、二股かけておけばいい」的な勘違いをしている可能性も無くはない…という現状の見立てである。
たしかに「軍が勝手に外務大臣に据えた人」を「外相と呼ぶ」事はミャンマー国民からの大きな非難を受けている。例えばこっそり会って会談するならともかく、今の時点で「このようなことをわざわざアナウンスして」、これ何の意味があったんですか?ということだ。そういう空気が全く読めていないのは事実である。ミャンマーとの人的パイプは確かに持っているのだろうし、ミャンマーに長期に渡って深く関わっているのも事実ではあるが、こんな事を今アナウンスしたら人心がどう動くかが読めてなかった、というのは結構痛いことではある。
逆にミャンマーの国民一般は「民主化」ということに既に意識が高くなっている。つまり「しっかりと民主化されてきている」ということなのである。民主主義の中で自分達がきちんと意志を持って声を上げて、そして軍や政府の圧政やお仕着せに対して、それを跳ね除けていくような、そういう空気が既に醸成されている、ということなのだ。そうしたミャンマー国内の根本的な変化というものを丸山氏は読めていなかった…のかもしれない。
現在、日本企業がどんどんミャンマーに進出している。中にはテインセイン時代(以前の軍政権時代)の閣僚の組織と合弁ビジネスをやってる会社もある。それはつまり軍の有力者と組まないとミャンマーではビジネスができない、ということがある意味で常識になっているのだ。その意識が非常に強いので、丸山大使は軍側ともある程度関係を作っておかなければいけない…どっちにころんでもいいように、と保険をかけるようなことをやってしまったが故に墓穴を掘ってしまった・・・という事なのかもしれない。
背後の中国の存在がありながらも日本やアメリカの企業がここ数年で大挙してミャンマーに入っていったので、逆に軍は中国との距離が空いた、ということもある。その距離が再び近づいていく形になるのも嫌な話であるし、国連が非難したところであまり関係ないのである。
国連と言えば、中国やロシアを中心とした極悪国家グループが「国連憲章を守る会」のようなグループを作って国連を自分達の思い通りに動かそうと画策している。ぶっちゃけた話、「国連憲章を守るべき」なのは中国やロシア達だろうが!という実情であるにも関わらず、である。(蔑笑)人権を踏みにじって平然としている彼らが「国連憲章を守ろう運動」をやるというのだ。ナンセンスでありお笑い意外の何者でもない。そもそも国連憲章を読んだことがあるのだろうか?。
国連がミャンマー非難決議をしたのだが、実はその中味を見ると「ミャンマー軍を非難する文言は一つも入っていない」事がわかる。
なぜか。
ロシアや中国といった凶悪な国々が「ミャンマー軍への非難」を入れることに反対したからである。お分かりだろうか。国連というのは今やそういう邪悪な国々によって牛耳られた組織に変貌してしまっている、ということなのだ。ここは我々もしっかりと認識しておく必要があるだろう。