Altered Notes

Something New.

ジャズに於ける良いアドリブとは

2024-06-08 20:52:00 | 音楽
YouTubeで「統計の専門家・サトマイ」として知られる佐藤舞さんが最近の動画で「世間に受ける為に必要なファクター」「コンテンツ制作で意識していること」について話している。それによると「視聴者から見た時の[親近性]と[新規性]が「7:3の比率」になるようにすることが大切だとしている。サトマイさんは自分が勝手に生み出した法則性として「親近性7:新規性3の法則」と述べている。

『親近性」とは視聴者が「知っている」「馴染みがある」「日常にある」「世間の関心がある」「既知のもの」であり、「新規性」というのは「意外性」「新しさ」独自の切り口や専門性」「未知」である。これが7:3くらいの割合でバランスしているコンテンツが「受ける」とサトマイさんは指摘している。

・・・ということなのだが、実はこれに酷似した法則が、音楽、それもジャズの中にあり、それこそ昭和40年代に出版されたジャズ初心者向けのアメリカの書籍にも記されている。

それはアドリブ(即興演奏)の組み立て方の法則である。

どういうことか。

サトマイさんが言う「親近性」とは演奏を聞く客側が既に知っている曲であったり旋律や和音・リズム等の音楽上のファクターである。アドリブの中に自分がよく知っている旋律が出てきたりするとオーディエンスは嬉しくなるものである。だが、アドリブ内容がそればかり(既知のものばかり)だと逆に退屈してくる。だから逆にそこに「新しいもの」「オーディエンス側が知らない独自性のあるもの」をファクターとして盛り込むとオーディエンスは感性を刺激されて「お?」と前のめりになるものだ。もちろんこの新規性が多くなり過ぎてもオーディエンスは置いてきぼり感覚になってしまうであろう。バランスが重要だ。

ジャズの即興演奏に於ける「親近性」のあるファクターと「新規性」のファクターはサトマイさんは7:3と言う。だが、上記の書籍「ジャズ・アドリブ入門」(音楽之友社)に於いて、詳細は省くが、イエール大学の音楽理論講師兼ピアニストのリッチモンド・ブラウン氏は「聴衆がだいたい50%ぐらい予測できるようにすべきだ」と述べている。「7:3」と「5:5」は厳密なものではなく、ケースバイケース、つまりその時の音楽の流れよって比率は適宜変えて良いと思う。どちらも「有り」だ。

アドリブ演奏にあたってこれを意識した方が良いのはジャズ演奏初心者だ。ベテランにとっては「釈迦に説法」な話だろう。

バランスと言っても場合によっては5:5だったり、音楽の流れによっては新規性の方が多くなる場面も有り得ようが、基本的な考え方として、概ねサトマイさんが指摘する通りの割合だと考えて間違いないだろうし、サトマイさんが提唱している概念や方向性は間違っていないと断言できる。

繰り返すが、ある程度名前も顔も売れているジャズ音楽家なら肌感覚としてこの比率は自然と身についているものと考えて間違いないと言えよう。






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