Altered Notes

Something New.

「ウェザーリポート」と「Weather Report」

2022-11-19 14:14:14 | 音楽
今や世界最大の民間気象情報会社として知られるようになったウェザーニューズ株式会社であるが、特に近年は24時間配信される気象情報専門のネット番組「ウェザーニュースLiVE」が人気である。お気づきと思うが、社名は「ウェザーニュー」であり、番組名は「ウェザーニュー」である。これはかつての子会社名との重複を避けた結果らしいのだが、それはさておき、この配信番組である「ウェザーニュースLiVE」は女性キャスターのアイドル的人気や細かく解説される緻密な気象情報の有用さなどが評価されて知名度は上昇する一方である。

その「ウェザーニュースLiVE」からの話題である。

昨年入社したばかりの戸北美月キャスターが番組内で「11月3日はレコードの日」であることを話した流れで、実家で父親から紹介された一枚のレコードを紹介した。それはかつてアメリカを代表するジャズグループの一つであった「ウェザーリポート」のレコード『ヘヴィー・ウェザー』である。

実際にレコードを紹介している動画はこちら。↓

『レコードを紹介する戸北キャスター』

戸北美月キャスターがわざわざこのレコードを紹介したのには勿論理由がある。
ウェザーニュースでは全国各地に居る会員から寄せられる気象報告を随時紹介しているが、その報告を「ウェザー・リポート」と呼称しているのである。

レコードの話に戻るが、戸北キャスターはウェザーリポートを「昔のジャズバンド」と紹介したのだが、これはウェザーリポートをリアルタイムに聴いていた我々世代には驚きであった。我々からすればウェザーリポートの活躍していた時代(*1)は「ついこの間」なのだ。(笑) 実際にその音楽はモダンであり続け、古びた印象は皆無だ。だが、時代は進み、いつの間にかウェザーリポートを知らない戸北キャスターのような若年層が社会で活躍する時代になっていた、ということである。(溜息)さらに、レコードプレイヤーも知らない世代であることに改めて喫驚するものであり、隔世の感を新たにするところでもある。

ウェザーリポートの音楽は進取的であり、ある意味プログレッシブで、しかも伝統的なジャズのセオリーにも反していない、非常に進歩的かつユニークなジャズグループであり、未だにこれに比肩するバンドは出現していない、というほど独特な音楽を展開していたのだ。元々このバンドの創立時のコンセプトには「アンサンブルでありながら同時に各々がソロを演奏する」という一見矛盾した二つのことを同時に昇華させる音楽を実際に形にする偉業を成し遂げたユニークなグループなのである。音楽的な面でもサウンドテクスチャーの面でも普遍性のある音楽であり、それは今の時代に生きる戸北キャスターのような若年層が聴いても新鮮であろうことは間違いないところだ。





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(*1)
ウェザーリポートが活躍した時期は1970年~1985年の15年間である。
創立時はジョー・ザヴィヌル(kbd)、ウェイン・ショーター(Sax)、ミロスラフ・ヴィトウス(b)の3人が中心になったバンドであった。草創期は集団即興が中心で時にアブストラクトな表現も含む演奏を展開していたのだが、やがてミロスラフ・ヴィトウスがジョー・ザヴィヌルとの路線対立から脱退し、ジョーとウェインの2人を中心にメンバーが組まれた時代を経て、ここで話題に上がった「Heavy Weather」という作品の時代になる。この一つ前の作品(Black Market)から参加していたジャコ・パストリアス(el-b)の演奏と音楽性が如実に反映された時代の始まりでありこのグループの一つの到達点を示す時代とも言えよう。ジャコ・パストリアスは間違いなくエレクトリック・ベースの天才であり、エレキベースの世界では「ジャコ以前」と「ジャコ以後」で、その有り様がガラッと変わってしまった程の大きな影響を与えたベーシストである。バンドが最も輝いていた時代の最良の一枚…それがこの「Heavy Weather」なのである。

余談だが、ジャコが加入して以降(1976年~)のウェザー・リポートの来日・東京公演は筆者は全て聴いている。だが、残念なことに、ウェザー・リポート初期の[来日(1971年、1973年)は逃している。サックス奏者の山口真文氏は「最初の来日の時が凄かったんだよ」と証言している。もちろん、その時代はベースがミロスラフ・ヴィトウスであり、演奏内容も後年とはかなり異なっていた。