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ロシアの戦費 ~「billion」の捉え方~

2022-03-21 12:50:00 | 国際
最近、SNSなどで「ウクライナ侵略にかかるロシアの戦費は一日あたり2.3兆円だという分析を示した上で、ロシアは国家予算が37兆円程程度なのだから、戦争が長引けばロシアは近い内に破綻して不利になるだろう」という論調を見かける。

ここにはちょっとした誤解がある。

どういうことか。

これについて数量政策学者の高橋洋一氏が解説しているので、それを基調に記していきたい。

このような場合、国家予算よりも過去の戦費を調べた方が良いのだ。その国の過去に行った戦争に於ける戦費で、かつ出来るだけ直近の戦費を調べれば相場感が自ずと判明するのである。

例えばイラク戦争だ。米軍の戦費だが、1ヶ月で40~50億ドル(=4000億円~5000億円)であった。これを一日あたりに換算すると1.3~1.6億ドルなので、百数十億円/日となる。

従って「一日で2.3兆円」という数字はあり得ないものであることがわかるだろう。


では、なぜ「2.3兆円/日」という誤解が生じたのであろうか。そのカラクリは下記の通りである。

英語の表記で「数の単位」として「billion」を使うのだが、「billion」は色々な経緯もあって使う人によって単位のスケールが少し異なっている場合があるのだ。「billion」の元々の意味は「兆」という単位であるが、その後、「10億」に変わったのである。

なので、冒頭に掲示した「2.3兆円」は訳した人が「兆」と「10億」を混同してしまった可能性があるのだ。従って「2.3兆円」を「10億」で換算すると「23億円」になり、リアルにあり得る数字になるのだ。

要は「billion」という単位について訳を間違った可能性がある、ということだ。英語の扱いの中で、「billion」には時おりそのような間違いが起こるのである。


ただ、戦争が長引いてロシアが不利になっていくのは当然である。
ロシアが戦争を開始したのは北京オリンピックが終了した時点であり、パラリンピックまでいくらか日数があるタイミングであった。ロシアの目論見ではオリンピックが終わってパラリンピックが始まるまでの間に方を付けるつもりだったのであろう。

実際に侵略を短期で終わらせた時の報道原稿の予定稿まで出てきたことでロシアの目論見は明らかになっている。だが、現実には予定通りにはいかず長引いているので完全に目算が狂ってきた、と言えよう。長引くことで不利になるのだが、それでも一日で百数十億円、1ヶ月で3000億円というレベルである。国家予算が37兆円で国防予算が5~6兆円あるロシアだ。従って、3000億円を2~3ヶ月続けても恐らくそれで潰れる事はないだろう。

国防予算が6兆円として5000億円くらいは1ヶ月でかけられるので、それで1~2ヶ月継続しても軍事予算が理由で破綻することは恐らくないものと考えられるのだ。


プーチン大統領としては当初の目論見が完全に狂ってしまったが、現在、彼の周囲にはイエスマンしかおらず、軍のトップでさえプーチン大統領と話す時には8メートルもある長いテーブルの端と端で行うほどプーチン氏個人は周囲が信じられなくなっているようだ。この有様は中国に於ける習近平主席のそれと似かよったものを感じるが、独裁者故に近似した状況を自ら作り出してしまった、ということであろう。この侵略戦争がどのような形で集結するのか判らないが、早期に穏やかな平和が訪れる事を切に希望するところである。